作例と解説は写真家の水咲奈々です。
カメラ初心者さん、フィルム時代から撮り続けているけど基礎はちょっぴり不安な方、プチ・スランプにはまってしまった方、もっと自由に写真を撮れるようになるために、写真表現のボキャブラリーを増やしましょう!
最終回 最新機種でマニュアルフォーカスのススメ
デジタルカメラが進化して、カメラ任せのオートフォーカスで瞬時に被写体にピントを合わせられるこの時代に、あえてオススメするのが最新のカメラボディとマニュアルフォーカス(以下MF)での撮影です。
なんでそんな面倒臭いことをわざわざするのかとか、それなら古いカメラボディでもいいんじゃないかと思われるかも知れませんが、新しいカメラほどファインダーや液晶が綺麗で見やすくなっているので、自分の目が頼りのMFでのピント合わせが古いカメラを使うよりも断然容易になります。
また、自動ではなく手動でピント調節を行うことで、ピントが合っているときにファインダー内や背面液晶でどういう見え方をするかを真剣に見るようになるので、オートフォーカス(以下AF)で撮影するときにもピントの山を掴みやすくなりますし、ピント位置の確認をする癖をつけることで、AFでの撮影でもシビアにピントを追い込めるようになります。ピントの合っていないボケ写真を量産してしまってはつまらないですからね。
そしてもうひとつ。ピントリングを回してピントを合わせる作業は神経も使いますが、指先ひとつで覗いている世界のムードを変えることができるので、ハマると楽しくて仕方なくなるのです!
撮影のコツとしては、近距離の被写体の場合はピントリングだけでしっかりピントを合わせようとすると、数ミリの操作でピントの位置ががらっと変わってしまって合わせにくいときがありますので、指先での操作のあとに、カメラ自体を自分の体ごと少し前後にずらして、自分の思うジャストピントと、少し前目のピントと、少し後ろ目のピントというように「自分の体でピント位置ブラケティング」をして、複数枚撮影することをオススメします。
遠距離の被写体の場合は、拡大表示をしてピントを合わせたい被写体がくっきりしているかを確認してから撮影するとピントの精度が上がります。
使用するレンズはお持ちのAFレンズをMFに切り替えて使ってもいいし、中古カメラ屋でAFの使えないオールドレンズを格安で手に入れてもいいでしょう。レンズベビーのような遊べるMFレンズも沢山出ています。ぜひ、自分の目と指先で四角い世界を自在に作り上げるワクワク感を体験してください!
花火
花火は打ちあがったところをAFで合わせてもいいのですが、MFで光の筋が好みの細さになるピントの位置に調節しても楽しいです。絞りは絞ったほうが光の筋が細く沢山出ます。この写真ではF13にしています。最近は夏だけではなく冬も打ちあがることが多いので、ぜひ三脚とスローシャッターを使ってMF撮影に挑戦してみてください。同じような設定でイルミネーション撮影もオススメです。
ポートレート
レンズベビー・シリーズは新設計のMFレンズでとても人気の高いレンズです。完全MFなので最初は戸惑うかも知れませんが、ポートレートで使用するととてもムードある仕上がりになります。人の顔はコントラストが高いので意外とピントが合わせやすいですよ。この写真ではレンズベビー特有のボケのふんわり感で遊んで、撮影中の女優を隠し撮り風にしてみました。
旅フォト
旅先のゆっくりとした時間にMFで撮影をしていると、時間を自由に使えているような、ちょっぴり贅沢な気分にもなれます。風景など広めの被写体でどこにピントを合わせたらいいかわかりにくい場合は、カメラに一番近い目立つ被写体にピントを合わせると安定した構図になります。
最後に…。
2018年の連載としてスタートした「生徒諸君!~写真の基礎と応用の逆転劇~」は今回が最終回となります。この連載は、写真を撮るための基礎は大切だけど、それだけに縛られて好きな物を好きなように撮れなくなってしまわないようにという筆者の願いを込めたものでもありました。ぜひこれからも、自由な発想で個性あふれる素敵な写真を撮り続けてください!またどこかでお会いしましょう!
水咲奈々 -Nana Misaki-
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