写真の新たな媒体、SNS(ソーシャルネットワークサービス)。この新連載では写真家・中野幸英さんが、SNS から生まれた新たな文法 = リテラシーを実際に投稿者と会って検証・共有していきます。
今回は風花さん(24歳・モデル)をご紹介します。
この記事は月刊カメラマン誌2018年2月号に掲載されたものです。

SNSの作法

「SNS では自分の報告が多いです」と彼女は明快に言う。実際、彼女のfacebook では告知が多く、Instagram ではその後の報告が多い。モデルさんの多くがInstagram を駆使してフォロワーを増やすという使い方をしている中で、この捉え方はちょっと意外だった。他のモデルさんと比べれば写真の腕も良く、多く国の文化を経験していて、自分を演出する方法も洗練されているだろうと思うからだ。

それでも彼女の報告は他のモデルさんと写ったり、撮影の現場だったり、ショーに出ていたりと華やかなものが多い。ただ「友達自慢」や、「飯テロ」と呼ばれる食事を見せる行為を慎んでいる、という。「外国での変わった果物とか、チャイニーズフードとか、子どもの頃からLivly などのSNS で日本の友達に写真で連絡をとっていました」ここまで話を聴いて、ふと、彼女はSNS でも写真でも現実的な関係を重視してきたことに思い当たった。

きっと引っ越しの多かった彼女にとって、SNS はとても重要な連絡手段として使われていて、そこでは演出ではなく親しい人向けの作法が必要とされるのだろう。かたやモデルとして仕事の中で演技をこなし、自分の作品では友人を演出させて楽しんでいる。その複雑だけど明快なチャンネルの使い分けに驚く。  

写真もSNS も、コミュニケーションの中で明快な使い分けがあり、きっとバイリンガルのように、デジタルとフィルムやそれぞれのSNS も、彼女なら特徴を使い分けて楽しめるのだろうと思った。

写真でのサイクル

これまでは恥ずかしさもあり、なかなかモデルをしていると言い切れなかったのだという。それでも段々と現場に呼ばれて撮影をこなし、また人の繋がりを増やしていく中に手ごたえがあることが表情からも伝わってくる。

「成人式や結婚式だけでなく、友達を撮る時はメイクをして、綺麗になった友人と一日一緒にいることがとても楽しい」と噛みしめるように話す。それは自分のモデルとしての楽しみを共有しているようにも聴こえる。

「展示がいいのは一緒に居る時間が作れること、自分の写真を見たくて来てくれる人と出来れば一緒にいたい」

今は学校を卒業し主体的な活動を始めている最中だ。この展示のタイトルは「〜Verirrtes kinder 〜迷子展」。小学校6 年生でアメリカに渡った彼女は同級生と話せず、当初は絵で会話をしていたという。迷子とも言える海外生活の中で繋がる楽しみを見いだし、その発展形がコミュニケーションツールとしての写真の楽しみへまた繋がっている。現実かネットかではなく、繋がれるかどうかで考えれば、カフェでの展示もSNS の一つに違いない。

彼女は3 月からイスラエルに1 年間住む予定だという。その柔軟さには感服するし、現地からの報告も楽しみだ。

写真・文 中野幸英さん

画像: 写真家。作品制作、コマーシャル撮影をはじめ、展示や講師、プロジェクトでのメディア担当まで多岐に活動。

写真家。作品制作、コマーシャル撮影をはじめ、展示や講師、プロジェクトでのメディア担当まで多岐に活動。

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