作例と解説は月カメ編集部OGの写真家、水咲奈々さんです。
カメラ初心者さん、フィルム時代から撮り続けているけど基礎はちょっぴり不安な方、プチ・スランプにはまってしまった方、もっと自由に写真を撮れるようになるために、写真表現のボキャブラリーを増やしましょう!
Lesson 2.ビビッド病になってない?
写真を始めて少し経つと陥る人が多いのが「ビビッド病」です。写すものすべてをとにかくはっきり、くっきり、鮮やかに描写したくなり、見た目よりも派手な色合いを好むようになります。
結果、被写体によっては彩度が上がり過ぎてグラデーションがつぶれたり、コントラストが高すぎて白トビ、黒つぶれの多い不自然な写真に仕上がってしまいます。また、何を撮っても同じような仕上がりにしかならないというデメリットもあります。
せっかくいろいろな表現ができるレンズ交換式のカメラを持ったのなら、写真の仕上がりもかっこいいイメージから優しいイメージまで、幅広く楽しみましょう。
画づくり設定も繊細に
カメラメーカーによって名称は違いますが、自分の思い描くイメージに合った画づくり設定を使用することで、写真の鮮やかさやコントラストの高低、明るさなどを簡単に変えることができます。
ニコンは「ピクチャーコントロール」、キヤノンは「ピクチャースタイル」、パナソニックは「フォトスタイル」、富士フイルムは「フィルムシミュレーション」、リコーは「カスタムイメージ」、オリンパスは「ピクチャーモード」、ソニーは「クリエイティブスタイル」と呼ばれるものです。今回はニコンの「ピクチャーコントロール」で使用される名称を例に話を進めます。
通常、初期設定にも使用されているのは、被写体の輪郭の強さやコントラスト、明るさや彩度のバランスが良く、見た目に近いメリハリのある画づくりで、どんなシーンでも使いやすい「スタンダード」という画づくり設定です。カメラを買ったばかりでメニューに何があるか把握できていないときは、多くの方がこの設定で撮っていると思います。
カメラに慣れて、絞りやシャッタースピードについて少しわかってきた頃に気が付くのが、この画づくり設定の項目です。ワンタッチで写真のイメージを変えられる楽しさに目覚めると、まず使ってみたくなるのが全体のイメージをがらっと鮮やかに変えられる「ビビッド」という画づくり設定でしょう
「ビビッド」を使用することで、写真の中に写るものすべてが見た目よりもはっきりとした色合いで、くっきりとした輪郭で描かれるので‘写真を撮ってる感’がより増して、色々な被写体をこの「ビビッド」で撮影したくなったりします。
ちょっと待って! その被写体、本当に「ビビッド」でいいの?
たとえば写真が暗いと感じて露出補正を使用して明るくしようとするとき、いきなり+3.0EVなんて一気に明るくしませんよね? ちょうど良い明るさになるように+0.3EV、+0.7EV、+1.0EV…と、微調整をしますよね。画づくり設定も「スタンダード」からいきなり「ビビッド」に一気に派手にせず、繊細な微調節をしましょう。そこでオススメなのが「風景」です。
画づくり設定の「風景」はなにも風景を撮るときだけに使うモードではありません。「スタンダード」よりも輪郭が強調されて特に空や海に多い青色や、葉の緑色、花の赤色やピンク色などが、色濃く鮮やかに描かれるモードです。自然風景はもちろん、動物の毛の質感や水中生物の体の鮮やかさを増してくれるので、「ビビッド」では不自然にカラフルになり過ぎてしまった被写体も、「風景」では自然な鮮やかさで描いてくれます。
これを読んで少しでも症状に心当たりがある方、ビビッド写真を量産していると自負のある方は、「スタンダード」の色合いで物足りないと思ったらいきなり「ビビッド」を使う前に「風景」モードを試して、ビビッド病から脱出してくださいね。
ビビッド病を治す3つのポイント!
1.派手にしたい心がうずいたら、まずは「風景」モードで。それでも物足りなかったら「ビビッド」にして段階を踏もう。
2.質感の柔らかいもの(羽や布、人の肌など)は「ビビッド」が似合わない場合が多いので要注意。
3.質感が硬いものや光を反射するもの(金属、車、街角など)は「ビビッド」が似合いやすいのでオススメだが、ビビッド病の方はそれでも「風景」モードの段階を踏もう。撮り比べることが大事!
撮影・解説は写真家・水咲奈々さん
公式サイト http://misakinana.com
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