なんという、圧力。なんという、絶妙の距離感。
それは、決して押しつけがましいものではなく、観る者にズシン!と迫る心地よい圧力。
そして、風景や被写体に向き合う真摯な眼差しは、観る者に写し取られたシーンに溶け込むような錯覚をもたらす---。

「写真の力」、「モノクロームプリントの魅力」を強く感じさせる作品群

5月24日から銀座ニコンサロンで始まった写真家・百々俊二氏の写真展「日本海」を観て、しみじみ写真の力を感じた。
8×10の大型カメラと氏の手焼き(全紙)によるモノクロームプリントというのも、その圧力の大きな要素ではある。
しかし、作品の放つ圧力は、何より1947年生まれの写真の大家である氏が、2010年から三脚を構え、日本海沿岸を北は稚内、利尻島から佐渡島を経て南は山口県の萩まで、約4年をかけて撮り歩いた軌跡によるものだ。

厳冬の北国の雪景色。海水浴で海にたゆたう20歳前後の女子たち。佐渡の街並みに佇む6歳の女の子、黙々と棚田の畝を整える老人..,これはまさに現代のフィールドワーク、いや、フォークロア(民俗学)だ。
切り取られるシーンは、“昭和”の名残を思わせる風景ではあるものの、そこに写り込む人々やクルマ、風俗などは現代のもの。
決して、サビたトタンや路地といった風景に郷愁を感じるだけのものではない。変わらない風景の中で生きる、今の人々の日常を記録しようという強固な意志を感じる。

氏は言う。
「『楽土紀伊半島』(1996)を一部とし、『大坂』(2011)を二部、そして三部は『日本海』を撮ると決めていた。8×10の大型カメラ、モノクロームの表現方法を選択した理由は、三脚を据え、カメラを真ん中に被写体と相対し、どうしても見たい撮りたい対象を選び、持続的に成立させたい関係を求めるためだ」
すでにこの『日本海』は2014年の夏に写真集として上梓されているが、今、改めて作品展として公開されることの意味を、是非、実際にプリントを観て感じ取って欲しい…。そう強く思った写真展である。
●銀座ニコンサロン〜6月6日(火)まで
●大阪ニコンサロン7月13日(木)~7月19日(水)まで
http://www.nikon-image.com/activity/exhibition/index.html
http://www.dodoshunji.com/MainPage.html

銀座でのオープニングでは、ニコンサロンの選考委員である飯沢耕太郎氏とのトークショーが催された。大坂では7/13の初日に、同じくニコンサロンの選考委員である北島敬三氏とのトークショーが予定されている。

画像: http://www.nikon-image.com/activity/salon/schedule/

http://www.nikon-image.com/activity/salon/schedule/


This article is a sponsored article by
''.