撮影共通データ■M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 Ⅲ/同 ED 17mm F1.8/同 ED 40-150mm F4.0-5.6 R プログラムAE WB:オート
赤城耕一
東京都三鷹市生まれ、高齢初心者。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。戦前のライカから最新デジタルカメラまで、あれこれ食べ散らかしている。ただし、特定のメーカーのカメラだけでは満足できない浮気性ゆえ、機材の評価に忖度はない(はず)。2024年から日本作例写真家協会会長を拝命、不遇な機材レビューワー写真家の待遇改善と社会的地位の向上を目指している。著作「フィルムカメラ放蕩記」(平凡社)「アカギカメラ -偏愛だっていいじゃない-」(インプレス)など多数。
OMデジタルソリューションズ OM SYSTEM PEN 主な仕様
●フォーマット:4/3型 Live MOS センサー
●有効画素数:約2037万画素
●ファインダー:OLED 約236万ドット
●シャッター速度:1/4000~60秒(メカ) 1/32000秒~60秒(電子)
●連写最高速:約5コマ/秒(メカ) 約8コマ/秒(電子)
●ISO感度:200~25600(拡張64/100)
●背面液晶:3.0型 約104万ドット チルトアングル タッチパネル
●記録媒体;SDXCシングル
■大きさ・重さ:125.8×74.5×43.3㎜・約344g(本体のみ)
「ディスコンから再評価」が、いわゆるPENあるある?
スマホ並みに気づいたものを拾ってゆける楽しさがある。
■絞りF10 1/500秒) ISO400
本機の元祖となる「オリンパス PEN-F」はあまり商売にはならなかったそうで、想定よりも早くディスコンになったとのこと。とはいえ、ヘリテージデザインが一部のマニアの間にはかなりウケたのは確かだ。そのウケた中には当然筆者も含まれている。
そして例のごとくPEN-Fはディスコンになってから中古市場で人気を博して、現在も高値で取引されている。筆者も大人気なく「後継機はどうなっているのだ」と、騒いだほうだが、騒いでいるうちにOLYMPUSからはカメラ事業が切り離されたのだった。
PEN-Fの販売が振るわなかった理由は、正直わからない。筆者はフィルム時代のハーフサイズ一眼レフのPENとスクリューマウント時代のライカのデザインの融合みたいな独自性に感激したのだけれど…。本来の真面目なユーザーは、そこまでの見た目のこだわりがなかったのかもしれない。
筆者の大好きな鉄塔だけど、碍子の質感も出ていて、優秀な画質だ。
■絞りF13 1/640秒 ISO400
あるいは「防塵防滴ではない」という実用的な問題がネイチャー派が多いといわれるオリンパスユーザーたちが評価しなかったからなのか。はたまたその価格設定だったのか。
さらによくわからないのは、本機のベース機ともいえる“PEN E-PL7”がかなり人気があったことである。これはデザインの良さもあるけれど、それこそ価格設定に大きい意味があったのかもしれない。
スタイリングへの「小言」が止まりませんー。
カメラ上部も品があってよいのだが、背面のボタン、ダイヤル類の質感はいまひとつである。お値段を考えると仕方ないのか…。
バリアングルのLCDは好みが分かれるのだけれど、筆者はもう慣れてしまった。どこにでも入っていけるようなカメラの大きさゆえに、役立つことも多いのではないか。
今回のPENもまたフラットタイプのデザインで、往時のフィルム時代のPEN一眼レフに寄せてきた感じがする。
軍艦部がフラットというだけでも「おお、PEN復活か」という印象が強いが、これもまた年寄りだけなのかもしれない。若い人はそんな昔の話は気にしないからである。
謙虚だと感じるのは、「OM SYSTEM」表記が小さいこと。軍艦部でも前面でもそうだ。
これには好感が持てる。ブランドは重要だ。「PEN」の文字が目立って感じるのはいいことである。適度な空きスペースも品がよい。今回の試用モデルはシルバーだったが、外装はプラスチック製とは思えないほど品のある仕上げで感心した。
メインスイッチ部分。静止画と動画の切り替えが電源と同じレバーだと、視認しないで動かすと間違えてしまうことがある。ここは少し気になるところ。
本機は防塵防滴で、意外なことにPENシリーズでは初という。
デザインの結論からすれば、筆者はかつての“PEN-F”や“E-PL7”に寄せてきたという印象より、科学写真撮影用としてファインダーを省いた“ライカMD”などの特殊カメラを想起してしまう。それだけデザインと質感が良いのである。
ダイヤル類はPEN-Fと異なり、数が少なくシンプルで好感が持てる。ただ、背面のボタンなどはプラスチック感が強く、押下感なども少々お安く感じるのは残念だが、お値段からすれば我慢すべきなのだろう。
EVF、よくぞ残してくれたもんだ!
ボディ左側上の意図的な空きの面積が新鮮に感じる。OM SYSTEMのロゴが謙虚な大きさであることも成功しているようだ。ボディカバーはエンジニアリングプラスチックだが、仕上げは素晴らしい。
“PEN-F”から“PEN E-P7”、“OM-3”へと引き継がれた「プロファイルコントロールスイッチ」がボディ前にある。
このスイッチはノーマルの撮影とカラー/モノクロプロファイルコントロールを瞬時に切り替えることが可能で、撮影者好みの調整で個性的な画像を得ることもできる…ではあるが、カメラ内蔵のLCDやEVFの画像でそれらの効果を完全に見極めよというのは難しいのではないか?
モノクロモードで。少しだけ粒子を載せてみた。階調再現性も優秀で、中間のトーンも美しい。
■絞りF9 1/800秒 ISO400
「そんな固いことを言うな」といわれれば話はそれでおしまいだが、RAW+JPEG設定で撮影し、もし後になって気に入らなければカメラ内RAW現像やPCで気が済むまで調整を行うことができるのだ。
時間を経れば人間の気持ちも変わる。将来の心変わりに備えて、RAWファイルを残す=余裕を残しておいたほうがよいと思うが、どうだろうか?
17mmレンズの至近距離。単体レンズならではのボケの自然さも魅力。
■絞りF2.5 1/2000秒 ISO200
個人的に評価したいのは小型のボディなのにEVFが搭載されていることである。約236万ドットのOLEDで特別に優れたファインダーではないが、日中晴天下の撮影での視認性の良さ、長焦点レンズ使用時の安定したフレーミング、撮影画像の確認に役立つだろう。
もちろんF値やシャッタースピードの確認も容易だから、各種設定を自分で行いたいユーザーにもうれしい。筆者はEVFと背面LCDを撮影状況と気分により使い分けるので、本当にファインダー内蔵はありがたく感じる。
筆者の「関心の薄い」機能を羅列しよう。
狙いは池の水面のリフレクションだが、シャドー部の描写も優秀で感心してしまった。
■絞りF7.1 1/400秒 ISO400
AF方式は“PEN-F”のコントラストAFから像面位相差AFへ進化。被写体認識も人物・動物(犬・猫)が可能である。また被写体追従性能が大幅に向上したとされる。実際、縦線と横線の両方を捉える121点オールクロス像面位相差AFを使用してみると、なかなか素早い動作でありカメラ任せのAFでも優秀であった。
もっとも本機の性格上、極端に動きの速い被写体やスポーツ撮影などで万能的な被写体捕捉は難しいだろうが、通常のスナップ、ポートレート、動物の撮影程度ならば不満のない性能だろう。
森山大道さんの写真「光と影」を思い出して、ラフモノクローム設定。結果、似ても似つかないものになった。
■絞りF9 1/640秒 ISO400
撮像素子には、有効約2,037万画素の4/3型 Live MOS センサーを採用。画像処理エンジン「TruePic IX」との組み合わせにより、高解像な描写力と優れた階調表現力を実現する。ボディ内5軸手ブレ補正機構は中央最大5.5段、周辺最大4.5段の補正効果と相変わらず信頼できる。
コマ速度は 静音連写H(電子シャッター): 最高約30コマ/秒、メカニカルシャッター: 約8コマ/秒、電子プロキャプチャー連写(シャッター全押し前から最大12コマさかのぼって記録可能)で 最高約30コマ/秒と十分だ。メカシャッター時のシャッター音、動作感触ともになかなか心地よいものがあるのが嬉しい。
CP(コンピューテーショナルフォトグラフィー)ボタンを押し、コントロールダイヤルで「三脚ハイレゾショット」「手持ちハイレゾショット」「ライブ ND 撮影(ND2~16)」「深度合成撮影」「HDR 撮影(HDR1,2)」「多重露出」の撮影機能を切り替えも可能。
と、冷徹に解説したのは、筆者はいずれの機能にも関心が薄いから。とはいえ現場での撮影時にひらめいた設定を表現に応用したい、という人には便利に使えるはずだ。
ただ、アドバンストアマチュアさんには申し上げておきたいけれど、フォーサーズ規格のレンズは特性的に焦点距離が短く被写界深度が深いので、まずはこの特性をアタマに入れて撮影に挑んだ方が、より応用範囲が広がりそうだ。
多種多彩な「仕上がり設定」は、逆に混乱を招きませんかね?
スマホのようにいかに気軽に撮影できるかが本機を使うキモともいえるわけだ。
■絞りF3.2 1/60秒 ISO400
カラーとモノクロのプロファイルコントロールも装備し、前者は、重厚感のある色調の「Film Rich Color」、彩度が高い「Film Vivid」、軟らかい色調の「 Soft Tone」、標準「Standard (Natural)」の4種類のプリセットから好みの色を選択し「彩度」「ハイライト&シャドウ」「シェーディング効果」「シャープネス」「コントラスト」を用いて、個性的な写真を制作できる。
後者のモノクロプロファイルコントロールでは粒状効果の「Film B&W」、赤外効果の「Film IR」、低コントラストの「Film Low Contrast」、標準「Standard (Monotone)」の4種類のプリセットから選択可能だ。
さらに16種類の「アートフィルター」も健在なので、にエフェクトや色再現、モノクロの階調再現などの組み合わせは無限と言ってよい。
とはいえ、これらを撮影現場で適宜に選択せよということになれば悩むのは必須。とくにビギナーさんは混乱するはず。背面のボタンやダイヤル類がボディサイズに合わせて小さくなったためか、設定がやりづらいこともあるけど、撮影前にあらかじめその効果をある程度見極めておいたほうが素早く設定できるし、仕上がりが心配な場合は、これもRAW+JPEG設定での撮影しておくことをおすすめしたい。
また、あまりに「フィルム」調という項目が強調されすぎると、コンプレックスがあるようにも筆者は感じてしまうのだが…。
高感度に弱いマイクロフォーサーズと言われるが、極端なクロップや大伸ばしをしなければ破綻のない画質である。
■絞りF2 1/60秒 ISO3200
本機にはキットレンズとして「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 Ⅲ」が用意され、さらに「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4.0-5.6 R」(35mm判換算80-300mm)を加えたダブルレンズキットもある。
いずれも描写性は優秀だけれど、廉価だけあってビルドクオリティに欠け、正直、見た目はあまり高級感に欠けて撮影していて面白いレンズではない。すばらしく便利で優秀な性能であるのは間違いないが…。
ここの読者諸氏はアドバンストアマチュアが多いと思うので、ここはぜひともPENには広角系の単焦点レンズを組み合わせて、街中では体ごと動いて撮影してゆくような撮影方法をおすすめしたい。ボディの大きさや立ち位置を考えればそのほうがよい仕事をしてくれそうだ。
短期間の試用だったが、価格面においても、機能面おいても満足できる仕上がりだ。どこにでも一緒に持ち歩くことができる大きさと重量なので、コンパクトカメラと同じ感覚で使うことができる。従来からのPENシリーズユーザーにも購入して損はないカメラに仕上がっているといえよう。