※撮影共通データ ■ライカ SL3-S WB:オート
大門美奈氏プロフィール
横浜出身、茅ヶ崎在住。作家活動のほかアパレルブランド等とのコラボレーション、カメラメーカー・ショップ主催の講座・イベント等の講師、雑誌・WEBマガジンなどへの寄稿等、精力的に活動。個展・グループ展多数開催。
シグマ 35mm F1.4 DG Ⅱ | Art 主な仕様
●焦点距離:35mm
●最短撮影距離:0.28m
●最大撮影倍率:1:5.4
●レンズ構成:12群15枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ73.0×94.0mm・530g(ライカX)
●付属品:フード・ケース
35mm F1.4 DG Ⅱ | Art。特に注目したいのはここ!
1.小型軽量化
前モデル(φ109.5mm/645g)から新型(φ94.0mm/530g)へ、全長約14%短縮・重量約20%削減(いずれもLマウント)。第二世代(DG DN | Art)ではフランジバック対応のため初代より実は長くなっていたが、今回のモデルでは径はより小さく、長さは初代並みに。大幅なダイエットの成功は、それだけで非常にめでたい。
2.高い光学性能
SLDガラス2枚の採用により、フリンジを抑制。前モデルでわずかに見られたボケの色づきも解消。またフローティングフォーカスの採用により、最短撮影距離付近での周辺性能も大きく改善。 最短撮影距離も30cmから28cmに短縮され、より近接撮影が可能となった。広角35mmで2cmの差は非常に大きい。
3.新コーティングAAC(Advanced Amorphous Coating)とDual HLA(フォーカスモーター)
従来のSMCに加えてAACを採用。逆光・強い光源下でのフレア・ゴーストが大幅に抑制されたとのこと。また、フォーカスレンズ群の重量が前モデルの約6倍になっているにもかかわらず、Dual HLAがそれをパワフルに駆動させることで高速・高精度AFを実現。これまでも特段不便は感じていなかったものの、写り込みや動きものへの反応がより 素早く正確になった印象。
以下、作例と共にシグマがアナウンスする「歴代最高の光学性能」を誇る35mmを検証して行こう。
朝方、中之島の川沿いに咲いていた桜を開放F1.4で撮影。軸上色収差の補正効果が発揮されており、フリンジの「フの字」も見られない。至近性能向上の効果が存分に発揮されており、これだけ混み合った背景ながらすっきりとした印象なのは、本レンズの完成度の高さを感じさせる。
■絞りF1.4 1/8000秒 ISO100
カフェ内の照明により複数の玉ボケが出現。ガラス瓶の逆光に近い条件でこれだけ玉ボケが素直に出ているのは、AACコーティングによる効果も大きいのだろう。「清潔感がある」といえばいいのだろうか、そんな言葉が思い浮かぶような描写である。
■絞りF2.2 1/60秒 ISO125
右画像は拡大したもの。Dual HLAの瞬発力により、とっさのスナップにも迷いがない。拡大してみると黒いレザージャケットの質感描写が秀逸で、素材特有の光沢感と細かなシワの立体感までしっかりと再現。髪の一本一本までフリンジの滲みが見当たらないのは見事。前後のボケもなだらかで自然な描写なのも好ましい。
■絞りF2.5 1/800秒 ISO100
シグマが見せてくれたのは、ひとつの到達点?
いわゆるアメ村と呼ばれているあたりをスナップ。古着屋の店先で撮影した一枚だが、中央のスウェットのプリント柄の細部まで精緻に描写しており、男性の着ているスウェットと同じ黒でありながら質感の描き分けも楽勝、といった印象を受ける。
■絞りF2.5 1/160秒 ISO100
やや絞ってF2.8で撮影。レンズの性能の高さはこうした建築物のテクスチャーの描写からも見てとれる。特に左上の金属の網目の細かいパターンが画面の隅でもしっかり解像しており、ここでも周辺描写の安定感が確認できる。
■絞りF2.8 1/800秒 ISO100
いわゆる「地域ネコ」だろうか。黒つぶれしやすい被写体でありながら、傾きかけた日差しのなかでも猫の毛並みをしっかりと捉えている。絞り開放でこれだけ「線が細く」描けるということは、光学設計の完成度がそれだけ高いということの証明ではないか。スナップにおいて開放のまま迷わずシャッターを切れるという安心感があるのだ。
■絞りF1.4 1/2000秒 ISO100
35mmという焦点距離への答えを、シグマは一段と研ぎ澄ませてきた。人と街の間に立ち、どちらにも寄りすぎない、ある種の孤独を感じさせる距離でもある35mm。
その万能であることの難しさを誰より知っているからこそ、このレンズの完成度は静かに、しかし確実に響いてくる。小型軽量化、色収差の抑制、AFの進化、どれをとっても「改善」という言葉では物足りないほどの水準に仕上がっている。少なくとも今、シグマの35mmはひとつの到達点に立っているのではないだろうか。
21時すぎの人工光での撮影で、ISO160という感度を維持できているのはF1.4という明るさのおかげ。スカジャン特有のサテン生地の光沢感が白トビせずに階調豊か、かつキャラクターの刺繍の立体感が際立っており、暖簾との素材感の対比がよく表現されている。
■絞りF1.4 1/60秒 ISO160