そして時は流れ令和8回目のCP+、各メーカーはこれを契機にカメラグランプリに向けて鎬(しのぎ)を削る・・・な〜んてことは、ギョ〜カイの関係者を除いて実はあんまり無かったりすると思うのですが、ここはひとつ落ち着いた眼差しで各メーカーのハレの場を、『トヨ魂 番外編』として豊田慶記氏とともに振り返ってみたいと思います(編集部・モリタ)。
SIGMAと並ぶ、使う覚悟を持った "信者" が集う没入感あるコシナブース
「満足に狙ったところにAF出来るモンなら、やってみやがれ!」という挑発的なオブジェなどは実にコシナらしく思えましたね。しかもレンズ的に優しさが欠片もないモチーフで、収差の感じとかが見えちゃうスパルタンな内容・・・。
「コシナは相変わらずイカれてるな」と、そのハードボイルドっぷりに安堵の気持ちを覚える不思議空間でした。
他のブースのお祭り感とは少し違って、皆さんが淡々と楽しんで自己完結していく姿は毎度の如く異質。
一見さんお断り的な、ビギナーにとっては少し敷居が高く感じられるかもしれないけれど、“少し背伸びする感もあって良いのかも?”みたいなことを勝手に思っていました。
没入感がある、と捉えても良いよね。コシナレンズも、没入感や対話感があるので、製品の世界観がよく表現されたブースになっています。
「手前右下のフィルターリングに注目!」とトヨタくんが言うもんだから、「なんでぇ?」とだれた質問をしたら、すかさず「APO-SKOPARとか周辺の文字色を白抜きにせずにグレーにして着せ替えにしたり出来るのです」(キリッ!)と言われてしまい、どうリアクションして良いか困っりました(モリタ)。
また、タッチ&トライでは現行品だけでなく発売前のSEPTON 40mmや参考出品のAPO-SKOPAR 75mmなどにも触れられるという太っ腹な姿勢もコシナならでは、でしょう。
参考出品のAPO-SKOPAR 75mm(左)やAPO-LANTHAR 90mm F4も触れられるました。
昨年、ミラーレス用にリニューアルされた"Otus ML 1.4/50"と"Otus ML 1.4/85に続いて、今年はZEISS Otusの35mm F1.4のミラーレス機用3マウントを発売。コレで一眼レフから乗り換えても良いかも?と言うプロの方も多いかも。詳しいレビューはこちらまで。
「AFがぁぁぁ〜!」全盛の時代にあって、「MFですが、ナニか?」を貫くコシナ
ところで、MFレンズというと「効率」よりも「道楽」方面の印象が強いかもしれません。というのもAFがものすごく高性能になったことで、MFする頻度と必要性が薄れていることで、そこに非効率さを覚えるかもしれないから。
それに、各社「AFスゴイ!」のアピールしかしないからね。キヤノンのフォーカスアシスト機能やソニーの拡大機能などとても良く出来ているけれど、積極的には宣伝してないもんね。
だからこそ、コシナのオブジェのように、“シーンによってはMFの方が明らかに迅速かつ効率的に狙いどおりにフォーカスできるんだ!”という現実が、たしかに存在することを体験できる場は貴重なのです。集客効果としてはよく分からないけれども、好きですよ。
あと、公式YouTubeで皆さんご存知のS氏はもちろん、我が愛しのCOLOR-SKOPAR 50mmF2.2の設計担当M氏(SEPTON 40mmも担当)などが跋扈していました。
成長&進化の著しい「中華レンズ」
中華メーカー全般の躍進も、今まで以上に著しく感じられたのが今年のCP+でした。
特に感心したのはAFレンズの数々。軽く触れてみた感じでは、どのレンズも高いレベルにあり、特に単焦点レンズに限った話をすれば「日本のメーカーに追い着いた」と言っても過言ではないところまで来た気がしました。
これは特定のブランドに限った話ではなくて、全体的に。
以前は「コレ、本当にこの開放F値のスペックが出ているの?」と感じられるレンズもあったところから、わずか数年でAFを搭載し、「追い着いたかも・・・」という脅威を感じさせてくる技術力と大陸の本気は圧巻のひとこと。
日本メーカーの方が明確に強いところってどの辺りなのか、光学設計者じゃなきゃ分からないレベルなんじゃないかなぁ・・・。
やはり製品化と世代交代がトンデモないサイクルで回っていて、既存製品の気になるところがドンドン対策されている様子は羨ましくもあります。
・・・という感じで、どこも「レベル高けーぞ」という感想でした。
個人的にはどこかひとつ挙げるとすれば、Viltroxの完成度。特に制御系の洗練度合いは素晴らしく、例えば去年まではAFが怪しかったり、ボディがホカホカになったり、
その気になればいろいろと怪しい挙動をパカスカ出せたけれども、少なくとも今回、会場で触れた限りでは日本メーカーと遜色ない挙動で、お世辞抜きで大変に感心しました。素晴らしい開発力。このエナジーとスピードが日本のメーカーにも・・・と思わずにはいられません。
が、筆者の記憶が間違いでなければ、どのメーカーさんもマウントのライセンスを取得していない(Lアライアンス参加とかは別ね)ので、どれだけ素晴らしい性能であろうとも、通信を行わないMFレンズを除いてAFレンズに関してはワタシのポリシーの都合で大手を振ってオススメすることはありません。
他社のシステムにタダ乗りしてるだけだからね。
こういう遊びは隠れてやるのが嗜みだと思っていますよ。もちろん、自分でメリット・デメリットを調べて、納得した上で買うのは良いと思います。
自らの持てる魅力を上手くアピールしたOM SYSTEM
目玉となる新製品はありませんが、体験ゾーンと写真作品の展示、技術展示も漏れなくあり、実際にブースを訪れてみると想像以上に楽しめました。
もっとも印象的だったのは、どんなシーンでOMが輝くか?を真剣に考えてあるブースの構成だったこと。簡単に言えばOMの強みである、タフネスとコンパクトをとても分かりやすく展示していました。
それは「カメラは持ち歩いてこそ」「写真はカメラを持っていないと撮れない」という、OMの始祖とも言えるOM-1を開発した故・米谷美久氏のシンプルで力強いメッセージが芯にあると感じさせてくれるもので、グリーンの植栽や手ブレ補正の技術展示、サイズ感のアピールなども「OMならどんなシーンでも使える」ことを分かりやすく展示してあるように思えました。
シグマのように思想をデザインし、ブランドの特徴を表現する広告塔のような製品と、具体的で独自性のあるスペックのレンズラインナップという波状攻撃のような手法でインパクトを与えるというのも良いものですが、こういったシンプルで力強いメッセージが持つ威力にも感心させられました。
目玉が不在という点で、パナソニック(LUMIX)と同じスタートラインに在ったと思いますが、「だからどうした!?」というOMの逞しさにアッパレ!です。
リアルな話をすれば、撮影性能や画質性能で比較すれば、確かに他社機に劣る部分があることは事実です。
が、それは性能差が出るように比べているという側面もあり、“日常領域ではそこまでの差を感じることは少ないぞ”というのが、これまでほぼ全てのレンズ交換式デジタルカメラをテストしてきた筆者の経験としてあります。
「日常」にフォーカスした場合、もちろんいろんな日常があるとは思いますが、日々の生活の中で扱うことを考えると、サイズ感とタフネス性は大事だと思います。
SNSやスペックの優劣に惑わされることなく、身の丈にあった機材選びにももっと注目されて良いのでは?とOMブースを見ていて思いました。
オリンパス時代には「フルサイズと比べて・・・」というメッセージが多くて疲れましたが、OMシステムになって良い具合に脱力し、ビジョンが定まったように感じられます。
レーシングカーの展示に続いて、今年はデロリアン!〜タムロン
3月末の発売に先んじて35-100mm F/2.8 Di III VXDを体験できただけでなく、ブース中央にデロリアン(出展:『バック・トゥ・ザ・フューチャー』)という映画ファンには堪らないお神輿があって、CP+のお祭り感をより際立たせていたように感じたタムロン。
こういったアイコンがあることはとても大事だと思いました。映画でもレンズは使われますし、ちゃんと関係性があるものです。そういった気付きや学びがあることも、ブースの厚みを増してくれますし、企業に対する興味に貢献してくれるのではないでしょうか?
・・・と思った一方で、デロリアンに惹かれるのって、ひょっとしてアラフォー以上なんじゃね?と、ワクワクした感情を素直に喜べない気持ちも。
ともあれ、来年どんな展示になるのか今から楽しみです。シグマを差し置いてF14とかF/A18とかの展示をしたらアツいね!(←映画『トップガン マーヴェリック_の撮影にシグマレンズが選ばれています)
アクセサリーブランドで光ったのは・・・
アクセサリー類、特に三脚に限った話をすると、頭ひとつ抜けてLeofotoが良かったです。展示方法が洗練(オシャレの意)されているとは思わなかったけれども、見やすさは抜群で、どんどん触れて体験して欲しいという熱を感じられました。
ゲッカメでお馴染みの我らが風景写真家・山本純一さんもLeofotoブースで三脚のプレゼン。水準器付きのLS-324CEX LSレンジャーシリーズをアピールしていました。その詳しい模様はこちらまで。
CP+2026 レオフォトジャパンブース セミナー 写真家 山本 純一
www.youtube.com特に参考出品のAZ-205Cという5段のトラベル三脚のシッカリ感には感銘を受け欲しくなりました。
一方で、名門スリックやヴィデンダム(ジッツオとかマンフロットとか)には、停滞感を覚えました。
その理由として、いくつかの製品に触れて操作感や振動の減衰、エレベーターまわりの剛性感をチェックしたのですが、良くも悪くもコレまで通りです。
もちろん、それで困るシーンはほぼありませんので、問題はありません。さらにユーザー的に三脚にどのくらいコストを掛けるか?というラインの問題もありますので、こういった“停滞”が必ずしも悪いことではないと考えていますが、それでもインパクトのある製品の参入があると、どうしても比べて見てしまいます。
それが “保守(必要十分)”ではなく “停滞”と感じられてしまいます。特にハイクラスは値段がそれほど変わりませんので、残酷だけれど余計にネガティブに見えてしまいます。
繰り返しになりますが、“良いものは変える必要がない”と思われていたところに、全く別のアプローチで大きな進化が認められると、必要十分という現実に依らず、怠慢に見えてしまうのは仕方のないことかもしれません。
情報の多い昨今では、もはやその製品を選ぶ理由に「名門」という称号がブランドの求心力とはなりません。高品質で新製品がスピーディに出てくるところが選ばれるのは自然な流れでしょう。
Leofoto登場時には、名門ブランドの下請けによる下剋上を、どこか節操がないと思う節が、筆者の心に全くないワケではありませんでした。
でもそれが、今や技術力で本家を越え、頼もしいとすら思って購入しようとしているワケですから、筆者の心は身勝手なものです。
CP+2026 まとめ~トヨタ的に過去イチに●●●だったCP+
長くなりましたが、最後に。
個人的には過去一番面白かったCP+でした。
技術や製品だけじゃなく、メーカー側の提案や特色にワクワさせてもらえたことが理由です。
カメラの性能がある意味で飽和し、カメラ以外にも写真を撮る手段がある昨今、画質や性能以外の方向にも模索の手を広げなければ写真業界の発展はないと考えています。
だからこそ「写真って楽しい!」と気付ける取り組みや工夫はいくらあっても良いものです。
なかでも最も印象的だったのは、実はソニーでした。
キヤノンのアナログコンセプトは申し分なく衝撃的で、会期が終わった今でも熱が冷めていないのだけれど、それでもソニーを推したいと思います。
その理由として、やはりα7 Ⅴの基板展示が挙げられます。地味に見えるけれども、あれだけの高性能をこのサイズのチップに詰め込んだ凄さと、回路設計効率化の最先端を見せつけられたようでもありました。
あれがソニーのベーシックになると思うと、他社さんは頭を抱えつつ、ワンチップ化による省エネなどの効率化を、これまでよりもギアを上げて進めなければ存在感を失ってしまう・・・くらいの威力が、あの展示に秘められていたように思います。
キヤノンの撮影体験という工夫を軸にした提案力と、ソニーの技術の暴力という正反対の手法の対比、そしてほぼ同じ最大規模のブース面積でキヤノンとソニーが会場の両端に位置していたことも、フリが利いていましたね。(豊田慶記)