Webカメラマンから、久しぶりにお声がけをいただきました。読者のみなさま、ご無沙汰をしております。今回のネタは「NIKKOR Z DX 16-50mm f/2.8 VR」でございます。実は2025年から、筆者は熱烈なニコンZ50Ⅱ(&Z5Ⅱも!)ユーザーになりました。返り咲きというか狂い咲きというか。そのことが編集部に知れ、今回ご依頼いただいたようです。たいへんありがたいことです。

※撮影共通データ:■ニコンZ50Ⅱ WB:オート

赤城耕一
東京都三鷹市生まれ、高齢初心者。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。戦前のライカから最新デジタルカメラまで、あれこれ食べ散らかしている。ただし、特定のメーカーのカメラだけでは満足できない浮気性ゆえ、機材の評価に忖度はない(はず)。2024年から日本作例写真家協会会長を拝命、不遇な機材レビューワー写真家の待遇改善と社会的地位の向上を目指している。

NIKKOR Z DX 16-50mm f/2.8 VR 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算24-75mm相当
●最短撮影距離:0.25m
●最大撮影倍率:0.24倍
●レンズ構成:11群12枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ約74.5×88mm・約330g
●付属品:フード

大口径ゆえに、DXのアドバンテージが生きてくるのですよ。

大型のフードを装着すると全体が締まる感じがします。まさかここまでZ50Ⅱと相性が良いとは思わず。携行にも負担になりません。

ではまず、具体的に仕様をみてみましょう。ZマウントのDXシリーズレンズでは初めてのF2.8通し。しかもズーム域全域でF2.8固定ですね。すばらしいです。それでいて重さは330gというのは奇跡とも思える軽量さですが、すなわちこれはDX(APS-C)フォーマットである特性を最大限に光学設計に生かしたからでしょう。

防塵・防滴は当然のこと、立派なレンズフードが同梱されています。デザインはなかなか綺麗なスタイリングです。Z50Ⅱとの相性はとてもよいですね。驚いたことにVR(手ブレ補正)は5段分とのことであります。

ここで、本レンズを語る上で、まずは今回使用したニコンZ50Ⅱくんについて少し触れておかねばなりません。

個人的にZ50Ⅱで気に入らないところって、操作系とか、スペックとかではほとんどありません。
トシ食って気を遣われたのか、厳しい条件下での撮影仕事が依頼されることが少なくなったこともあり、多機能や高スペックなカメラは必要としなくなりました。

フードを外すとこんな感じ。作例にもあるけど、本レンズは逆光に強いのでとにかく収納性を重視するならフードなしで撮影するものありですね。

とはいえ、元来カメラ浮気性でもあるので、これまでマイクロフォーサーズから中判までさまざまなフォーマットのカメラと食べ散らかしてきました。それでも、機材評価の8割はスペックではなくて、デザインの美学を重視、かつ小型軽量であるか否かで決めています。Z50Ⅱは小さく軽く、筆者にとっては文句のない性能ということであります。

使い心地としてはZ50Ⅱは間違いなくヘリテージデザインとやらのZfcよりも優れていると思いますけどね。グリップの握りやすさも本レンズとの相性は完璧です。Zfcとの愛瀬はひと月しかもたなったもんなぁ(遠い目)。

でもって、やれ、ありがたやVR=手ブレ補正!!! 

けっこうな逆光条件ですが、案山子の顔もそれなりの描写をしています。逆光での性能低下は小さいですね。カメラとレンズが協力して広い階調再現をもたらしています。
■プログラムAE(F13 1/640秒) プラス0.3露出補正 ISO400 ※16mm時 

ただね、気に入っているZ50Ⅱくんなんですが、ひとつだけ残念なのはVR(手ブレ補正)がボディに内蔵されていないことであります。

ここで、話をNIKKOR Z DX 16-50mm f/2.8 VRに戻します。
最初に本レンズが届いて、うちのZ50Ⅱに装着したとき、なーんだ、フツーの大口径標準ズームレンズじゃん。と思ったのですが、レンズ前面の刻印に「VR」表記を見つけたとき、おお! と思いました。というのも、Z50ⅡくんのVRナシのウィークポイントをカバーしてくれる可能性が出てきたからです。

つまり、本レンズはF2.8の大口径ということもあり、室内や夜間での手持ちによるアベイラブルライト撮影で手ブレの心配がない画像を得られることで、大きな安心感がもたらされることになります。

太陽をススキで少し覆い、撮影してみます。レンズには厳しい条件ですが、シャープネスは損なわれませんね。
■プログラムAE(F8 1/1600秒)プラス0.3露出補正 ISO100 ※16mm時 

AFはステッピングモーターゆえの静粛で素早い駆動、スッとフォーカスが合焦します。動画で気になる画角の変化、いわゆるフォーカスブリージングにも配慮されています。鏡筒のコントロールリングは「AF/MFの切り替え」「絞り」「露出補正」「ISO感度」など機能を割りあてることができますから、積極活用したいところです。

筆者はA(絞優先AE)モードの使用頻度が高いので、今回はリングに絞りを割り当てみましたが、なかなか便利に使うことができました。とくに動画撮影にはお好みの機能を割り当てたほうが使いやすそうです。

もうFX > DXみたいな考え方はヤメませんかぇ?

あらかじめ少しアンダーめの露出になることを見越して撮影しています。建物の壁のハイライトのディテールの描写に期待しましたが、予想どおり、狙いどおりの描写です。
■プログラムAE(F8 1/3200秒) マイナス0.3露出補正 ISO400 ※20mm時

ニコン一眼レフ時代のFマウントのDXニッコールは、FX(35mmフルサイズ)ニッコールと比べると、ランクが少し下に見られてしまう印象がありましたが、本レンズはそんなことはありません。鏡筒のビルドクオリティとかズームリングのトルクの感触も秀逸です。

描写についても、焦点距離域とか設定F値による描写性を語るのはヤボな感じ、余裕さえ感じますね。青学のエース=黒田朝日さんみたいです。ボディ内の画像処理も画質を後押ししているのでしょう。周辺光量などはもう少し低下したほうが個人的には好きなのですが、画質的には間違いがありません。それでいて、いわゆるカリカリな描写にはならないところが特徴です。

16mm時の最短撮影距離、絞り開放設定で撮影。さすがの16mmでも被写界深度は浅く感じます。わずかに線の太い描写になりますが、絞り込むと解消されます。強いパースペクティブを生かした面白いマクロ効果を得ることができますが、撮影距離が0.15mだとワーキングディスタンスが短く、ライティングがしづらくなります。
■絞り優先AE( F2.8 1/20秒) ISO100 ※16mm時

ワイド端16mm側での撮影最短距離は0.15m、テレ端50mmでも0.25mです。50mmでは撮影倍率は0.24倍になりますので、簡易的なマクロ機能としても十分に使うことができます。16mmでのマクロ撮影はワーキングディスタンスが極端に短いため、ライティングがしづらいのが難点です。

街中のオブジェ。頼んでいないのにZ50Ⅱくんは目に合焦し、そこはすばらしくシャープな描写です。絞り開放ですとこのボケの大きさですが、スナップでは十分でしょう。
■絞り優先AE( F2.8 1/1250秒) マイナス0.7露出補正 ISO100 ※50mm時

個人的に「画像に透明感がある」という印象を強く持ちました。DX、FXというフォーマットの違いによる画質差やそれに伴うヒエラルキーは大きな意味をなしていないように思えます。したがって、実焦点距離の被写界深度特性を生かすことを念頭におき、フォーマットの使い分けを考えたほうがいいかもしれません。

たとえばワイド端では被写界深度が極端な深さを生かすパンフォーカス専用の「24mm」 という考え方をしてみるとか、テレ端では、適度な浅さの被写界深度が期待できるので、ボケ味を生かした撮影や穏やかなパースペクティブを生かす中望遠「75mm」 と考えた方が本レンズのポテンシャルを利用した表現に応用することができそうです。

個人的にもこれは「Z50Ⅱくんのためにぜひ用意してあげたい標準ズームレンズ」だと思った次第です。以上。

カレー専門店のランチの豆カレーを撮影しました。アベイラブルライトで、そのまま色の補正はなし。VR(手ブレ補正)はよく機能しています。
■絞り優先AE( F4 1/50秒) マイナス0.7露出補正 ISO400 ※50mm時