X-TransCMOSセンサーを搭載しつつも、ファインダーレスとすることでコンパクトにまとめた「X-M」シリーズの最新型が11年ぶりに復活した。名称は先代“X-M1”から4階級特進の“X-M5”。センサーとエンジンはX-S20と同じ26MPのX-TransCMOS 4と、最新のX-Processor 5となり、静止画の撮影性能的には同等とのこと。

フジフイルム X-M5 主な仕様

●APS-Cサイズ X-Trans CMOS
●約2610万画素
●ISO160~12800(※拡張ISO80~51200)
●約30コマ/秒(電子シャッター 1.25×クロップ時)・約8コマ/秒(メカニカル)
●3.0型 バリアングル 約104万ドット
●SDXC(UHS-I)
●約111.9×66.6×38.0mm・約307g(バッテリー・メモリーカード含まず)

EVFレス&バリアングル。動画寄りであることは間違いなしだけどね。

バッテリーはX-T50やX100VI、旧製品ではあるがX-E4などと共通のNP-W126Sを採用する。ちなみに、手持ちのNP-W126(X-Pro2などで使用)でも「撮影可能枚数が少なくなる」との忠告は表示されるものの、普通に動作することを確認。

X-T50と同じく、ボディ左肩にフィルムシミュレーションダイヤルを搭載したこともポイントのひとつ。それでいて右肩にモードダイヤルを持つ仕様はX-S20と同等で、Vlogモードのポジションがあるのも同じだ。Vlogモードには9:16ショート動画モードというSNS向けの縦位置動画をカメラは横位置のまま縦動画での録画(解像度はフルHDに固定/1080x1920)ができる設定が追加されたことが新しい。

これはとても面白い試みだと思うけれど「縦動画スマホで良くね?」という気持ちもある。とは言え、横位置のまま縦動画が録れるモードを実装してきたことに対しては称賛したい気持ちがあるし、今後の動画鑑賞環境を占う上でも興味深いと思う。
スチル派としては、背面モニタはバリアングルなので、EVFを持たないX-E4だと思って本機を使いたいユーザーは少しだけ注意が必要かも知れないし、バリアングル歓迎! という場合には朗報だろう。

環境に配慮した外箱だそうですが…

機材が届いてまずビックリしたのが、化粧箱が「資源と環境に対する配慮に溢れる仕様」となったこと。アスタリフト(フジの化粧品ブランドね)を購入すると立派な化粧箱で届くと思いますが、販売する数量的にもアスタリフトを環境対応した方が良いんじゃないですかね? それともアスタリフトも新製品については素っ気ない化粧箱で環境対応するのかな。だって資源は大切だよね?

という暗くて重いイジワルな気持ちが芽生えました。
もちろんね、化粧箱の有無がリセールに影響しない昨今ということもありますし重要度は下がっているのかも知れませんけれども。趣味のモノだからこそ、購入時のワクワクを大事にして欲しかったと思います、私はね。

お花をトラッキングさせて構図を色々振ってみたけど、AFは安定していました。その一方でAEはもうちょっと頑張ってほしい。被写体近辺に反射率の低い物体があると引っ張られちゃう。構図変化にも少し敏感だから、ちょっとフレーミングを変えると露出がガラッと変わるシーンがあるってのは、まぁXシリーズの悪いクセだと思います。
■XF35mmF1.4R 絞り優先AE(F2.8 1/400秒) マイナス0.7露出補正 ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:リアラエース

お小言はこのくらいで、想像以上にコンパクトだし、デザインもトヨタ基準ではかなり好感触。写真で見るより実物の方が印象が良かったこともあって「コシナレンズとの相性が良さそうだぞ…」という予感がビンビン。

アレコレと弄くり回していると、ちいサイズが災いしてか、手のデカい筆者(手袋のサイズはLL~3L)にとってはFSダイヤルとモードダイヤルが少し操作しにくい感じがありました。
その一方で前後の電子ダイヤルの操作感はかなり良くニンマリ。前ダイヤルはプッシュ操作対応というのも、Xシリーズユーザーとしては嬉しいポイント。気に入ればX-Pro2代わりに買っても良いかな? と、ワリとマジで思いました。

ナンテこと無いシーンだと思うでしょ? これ、実はフジのAFが苦手なシーンです。実際に4ショットして1コマがボケボケ。「日中にLCDで撮ってるとピンボケが分かり難くて…」みたいな文句言う方、このカメラのお客様じゃないんだよなって思いながら撮ってました。このシーン、ULTRON27mmでも撮ろうとしてましたが、ピントがサッパリ見えなくて諦めました。「MFがやり難くて」みたいな文句言うヤカラも、このカメラのお客様じゃなさそうだなって気持ちが強くなった瞬間です。
■XF35mmF1.4R 絞り優先AE(F5.6 1/200秒) プラス1.0露出補正 ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ACROS

質感での一番ビックリしたのは、バッテリ蓋を開けた時の質感が素晴らしく良いこと。
X-S20やX-T50の質感をお世辞でしか褒めたいと思わなかったけど、X-M5については「なかなか頑張ってるぞ」と言いたい。

逆に少し残念だったのは、メディアがUHS-I対応であること。26MPセンサーだし、撮ることに関しては用途的にもUHS-Iで十分なのでしょう。だけれどもPCへの転送速度にはソコソコの差が出てくるので、撮影枚数の多い筆者としては何とかしてUHS-Ⅱの採用を頑張って欲しかったと思った部分であります。まぁコスト的に仕方なかったのかな。

グリップも控えめながら手に馴染んでよろしゅうございます。

お買い上げする気マンマンで実写するぞ、ということでXF35mmF1.4と組み合わせてスナップに繰り出しました。
レリーズ感がX-E4に似ているような? という感があるけれど、どうだろう??
ともあれ、IBIS機特有の制震性重視のサイレントな感触ではなく、どこか心地良さがあります。アッチも好きだけど、やっぱコッチも良いよねって感じ。

AFの感じとかは筆者が普段使っているX-T5と比べても違和感はありませんので、小さく軽いって部分が引き立ちます。コンパクトだけどサクサク撮れるカメラって抜群に楽しいね。

ISO感度が高めなのは、手ブレにビビって速めのシャッター速度で撮りたかったからです。1/500秒でもブレる時はブレるし、俯瞰はブレ易い(当社比)から、自分の使い方としてはIBISやOISは欲しいね。描写はいつものフジです。
■XF35mmF1.4R 絞り優先AE(F2.8 1/500秒) マイナス1.3露出補正 ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:エテルナブリーチバイパス

手の大きな筆者であってもグリップ感というか、手のひらに収まる感じは悪くなく、控えめなグリップもシッカリと手に馴染んで良い感じ。上述の通り、操作感や質感もフジなのに悪くないので、スナップ時の楽しさは加速していきます。

IBIS非搭載であることについては、気を使うという点ではその通りですが、X-Pro2もIBIS非搭載なのでそこまで気にならないってのが正直な感想。いつもより速めのシャッター速度で撮れば、ブレて膝から崩れ落ちるような事は無いと思います。もちろんX-T5みたいにIBIS搭載してたほうが楽だけどね。

最終試験として、Voigtlander ULTRON27mmF2とドッキングさせてスナップをしてみると…。

これが撮ってて期待したよりは面白くない。晴天日中だとやはりLCDのみではMFがやり難くて「チッ」と思うことが多いってのが理由です。その舌打ちしたくなる感情に油を注ぐのが、ちょうど良い位置にあるMIC端子。

コイツがね、一瞬ファインダーに見えちゃうのよ。頭ではEVFレス仕様だと分かっていても、それっぽいモノがあるとファインダーを覗くことに慣れた40代のオジサンは条件反射的にファインダーを覗こうという処理が全身を駆け巡ります。

自分がアンポンタンなのが良くないだけなのだけれども、自分が本機のお客様ではないのでは? という感情が沸き起こります。あと、筆者の眼には本機のLCDの表示輝度を+5にしてもX-T5の+2くらいの見え具合? という感じがしました。

規則的な対象にビシッと構図を合わせて撮りたい時にも、手ブレ補正はある方が楽ですね。手ブレ補正ってAFの安定化にも利くからね。レリーズ感はX-E4っぽさのある感触が小気味よくて楽しい。「なんか良いね」って感じがしました。
■XF35mmF1.4R 絞り優先AE(F2.8 1/600秒) ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:リアラエース

明るさに関しては、ファームが製品版ではないからかも知れませんが、個人的に無視できなかった部分。COLOR-SKOPAR18mmだったら、もう少しピントはズボラでも実使用上で問題ないことが多くなるので、こうした不満が目立ち難かったかも知れません。それかもう少し焦点距離の長いNOKTON35mmF1.2とかね。

ちなみにEVFを持たないミラーレス機にはパナのS9がありますが、アチラの方がMFはやりやすいように感じました。IBISの有無を抜きにしてもS9のほうがMFの快適性は上じゃないかな。
ということで、VoigtlanderではなくXF27mmみたいなAFで薄いレンズと組み合わせるのが良さそうです。

X-EシリーズやX-Pro系の後継機としては役不足かな…。

アンチ・バリアングルを掲げる過激派を自称していましたが、すっかりバリアンに慣れてしまって…過去の自分は黒歴史になりつつあります。チルトタイプだと確かに嬉しいけど、それでも3軸以上の可動じゃないと縦位置撮影シンドいからね。
■XF35mmF1.4R 絞り優先AE(F2.8 1/340秒) マイナス0.7露出補正 ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:テルナブリーチバイパス

総じて凄く良さそうなのだけれども、自分の使い方とは違うかな? という感想です。動画向けに結構頑張っている感じはしますし、タイムコード同期設定がATOMOS AirGlu BTに対応しているなど、フィックスで録画する用のコンパクトなカメラが欲しい人にとってはかなりお手頃にシステム参加させられる画質の良い機種が手に入るので、かなり魅力的だと思いました。

フィルムシミュレーションがあるからLogで記録しなくても十分使える、といった声を実際に聞いたことがある身としては、X-M5の真のお客様が見えたような気がします。

結論としては、X-E4やX-Proシリーズの代替としては役不足というか、方向性が違うぞ、です。佇まいが良いから期待しちゃったけど、X-M5が開拓しようとしている方向やユーザー層が垣間見えて製品作りって面白いなと。

エテルナブリーチだと思ったでしょ? 正解はリアラエースです。コントラスト上げて、彩度は下げて。NRを最低にすると良い感じでした。このシーン、全然AFが来なかったからMFで激しく連写しています。「お前にEVFさえ装備されていれば!」って思いながらね。撮ってる時にも思いましたが、α7C Ⅱって存在は本当にイレギュラーなのよ。あのサイズに特盛で機能がぶち込まれてるでしょ? もはやバグとしか思えないレベルで。ソニーの開発には未来人が居るんじゃねーかな…。
■XF35mmF1.4R 絞り優先AE(F2.8 1/340秒) マイナス0.7露出補正 ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:テルナブリーチバイパス