キヤノンからAPS-C用のRFマウント用ワイドズームレンズ「RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM」が発売された。フルサイズ換算で16-29mm相当画角をカバーするレンズとなり、名称からも分かる通り、手ブレ補正機構をレンズ側に持っているのでEOS R10やR50などボディ内手ブレ補正機構を持たない機種との相性も良いはず。

キヤノン RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算16-29mm相当
●最短撮影距離:AF時:0.14m (10mm~18mm時)/MF時:0.086m(10mm時)
●最大撮影倍率:AF時:0.23倍(18mm時)/MF時:0.5倍(10mm時)
●レンズ構成:10群12枚
●最小絞り:F32
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:49mm
●大きさ・重さ:φ69×44.9mm・約150g
●付属品:-

カメラバック内での存在感は皆無…。描写に関しては5万円というレンズ価格を忘れます!

18mm時。早朝のひとコマ。絞り込んであることもあって非常に気持ち良い描写。が、カメラ任せでの出た目はF16・1/100秒だったので、慌ててシフト操作して絞りをF10にしました。ちょっと絞り過ぎなんじゃねーの?
※撮影共通データ:キヤノン EOS R10 ピクチャースタイル:オート/モノクロ WB:オート 
■プログラムAE(F10 1/250秒) マイナス0.3露出補正 ISO200

手ブレ補正の効果は、レンズ単体で約4.0段。ボディ内手ブレ補正機構を持つEOS R7などとの組み合わせでは、協調制御によって最大6.0段の補正効果が得られるとのこと。
レンズ鏡筒は沈胴タイプとなり、沈胴時には約44.9mmと驚きのサイズ感。プラマウントであることも効いているようで、重さは約150gしかなく、バッグ内での存在感はほぼない。

フードが別売り(タイトル画像は、別売レンズフード EW-53Bを装着)である点は写真好きとしては眉を顰めたくなるけれど、販売価格に影響があるのも事実。その甲斐もあってか(?)公式オンラインショップでは税込5万5千円。さらに会員限定10%オフクーポン対象商品ということで、実質5万円ピッタリ。この努力は認めざる得ないだろう。

機材を受け取ったその日に撮りました。ワイド端で0.7段絞りこんだ状態。「あれ? 想像よりもずっと写るぞ」と驚きました。このサイズのレンズとは思えないくらいシャープだね。
■絞り優先AE(F5.6 1/500秒) ISO200

繰り返しになるが、とにかく軽い。今回、EOS R10と組み合わせたが総重量は600g未満。約376gしかないR50(ホワイトボディ)との組み合わせであれば約530gという脅威の軽さ。

高級感こそないけれど、操作感はスムースで安っぽさはない。沈胴操作についても節度がありつつ軽めのタッチで、肩肘張らないレンズのキャラクターを上手く表現できているように感じられた。
AFは静粛かつ不満のない速度で動作し、ISの駆動音についても全く気にならなかった。

14mm時。至近側でもかなりシャープ。同社のRF-S18-55mmだと至近時に周辺部がポヤポヤしたから、このレンズもそっち系の設計かな? と予想していた事をここに白状しておきます。性能的に我慢するところがなく、本当に5万なのか? という疑念が生じています。
■絞り優先AE(F5.6 1/60秒) ISO250

エントリー向けのレンズなのであまり厳しく評価するつもりはなかったのだけれども、期待よりもかなり上のレベルにあり感心した。色収差はほぼなくフリンジも基本的に発生しない。シャープでコントラストも高く、気持ちの良い描写が楽しめる。歪曲もほぼなく、全体的に非常に上手く補正されている。

写りの印象が良いので、5万円というレンズ価格を忘れてしまいそうだ。
強いて言えば逆光耐性が気になるシーンもあるにはあったが、些事だろう。

さすがに絞り過ぎでは? ファームアップでの改善を希望します。

12mm時。しばらくプログラムAEで撮ってましたが、F10・1/60秒を指し示したので性格の不一致を理由にAvモードに変えました。歪曲は全くと言って良いほどなくて、むしろ若干反って糸巻きに見えるくらい。どのズーム位置でも良く写るねぇ…。
■絞り優先AE(F7.1 1/125秒) マイナス0.3露出補正 ISO200

ネガティブな点はテレ端の開放F6.3とAE制御プログラム。開放絞りが暗いことは日中や屋外ではそれほど気になるシーンはないように感じられたが、さすがに屋内ではその影響が大きく、簡単にISO感度が上がってしまいやすい。なので、使うシーンによって意見が分かれるレンズという印象を持った。

10mm時。イチャモンをつけるとしたら、キヤノンのAPS-Cは1.6倍の画角になるので、10mmって焦点距離から予想するよりも画角が狭いのよね。9mmスタートだったら嬉しかった。あとスペックからレンズの暗さが気になっている人もいらっしゃると思いますが、屋外シーン(雨天を除く)ではほぼ気になりません。
■絞り優先AE(F9.0 1/250秒) マイナス0.7露出補正 ISO200

AE制御プログラムについての不満は、早々に絞り込みやすいところが気になった。Pモードで気を抜いていると1/80秒でF16.0みたいな測光結果をはじき出すシーンが何度かあった。APS-C 24MP機のEOS R10であってもF13まで絞ると回折が気になってしまい、せっかくのキレのある写りがスポイルされてしまうように思う。

さらにワイドレンズで大きく絞り込むとホコリやレンズ前玉の汚れが気になってしまう場合があるので、余程の意図が無い限りはF11よりも絞り込むメリットはないと筆者は考えている。よってAE制御に関してはファームアップ等で対策してほしいと思う。

こんなに褒める気はなかったんですが…。

10mm時。撮影条件に依らず気持ち良い描写。作例にはありませんが、逆光だとちょっとゴーストが出易い感じでしたが、それでもお値段を考えると十分以上の実力。このサイズなのに、なんでこんなに写るのかね? って思いながら撮ってました。軽いので徘徊が捗ります。
■絞り優先AE(F6.3 1/200秒) マイナス1.3露出補正 ISO200

総じて好印象で、ビギナー向けのワイドズームとは思えない実力に驚かされた。
Lレンズなどの高性能なレンズユーザーこそ、こういった廉価なレンズのポテンシャルに気付くことができる、というのがこのレンズの真に面白いところかも。サブシステム用に入手してみたら「これで良いじゃん…」となってしまいそうだ。

18mm時。雲の感じが良かったのでパチリ。やっぱりプログラムオートだと絞り込みやすい。
■プログラムAE(F13.0 1/250秒) マイナス1.0露出補正 ISO200

無論、高価で高性能なレンズにはお高い理由がちゃんとある(稀に例外アリ)ので、本レンズがそうしたレンズの役割を完全に全う出来る訳ではなく、描写力以外にもタフネス性やAF性能などでハイクラスの製品を選択が合理的な場合もある。だが、普段使いの心強い相棒としてはもちろん、撮影条件さえ許せば本気の撮影であっても十分に対応出来る描写力があると感じた。

ということで、サイズと性能、コスパのバランスが高次元でとれていて、ミラーレス化の恩恵を実感出来るとても良いプロダクトに仕上がっていて唸らされました。こんなに褒めちぎるのは本意ではない(?)のだが、仕方ありません。こういう方向性の提案をシッカリとやってくるキヤノンの開発力は…スゴイね。

ノーファインダーで鳥をパチリ。動物優先のサーボAF任せでしたが、鳥認識でバッチリ。この瞬間がキヤノン(ソニーもね)。このサイズのカメラとは思えないAF性能持ってるので、咄嗟の撮影でも高確率で撮れちゃうのが本当に痛快。
■プログラムAE(F8.0 1/200秒) ISO200