パナソニックのLマウント用レンズ。そのなかでもやや異色の存在なのが、単焦点レンズの「F1.8シリーズ」だ。このシリーズは現在、24mm、35mm、50mm、85mmの4種があり、外観デザインやサイズ、操作性や描写性能までも統一性を図った独特なラインナップだ。今回は、その50mmF1.8を紹介しよう。

LUMIX S 50mm F1.8 主な仕様

●焦点距離:50mm
●最短撮影距離:0.45mm
●最大撮影倍率:0.14倍
●レンズ構成:8群9枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚(円形絞り)
●フィルターサイズ:φ67mm
●大きさ・重さ:φ73.6×82.0mm・約300g
●付属品:フード/キャップ

外観、サイズ、重さ、そして描写までも統一された「4兄弟」

F1.8シリーズ3本を並べたところ。いずれも本体サイズは全く同じ。もちろんレンズフードは50mm用の眺めのものが用意されている。

LUMIXはとくに動画撮影に力を入れており、同シリーズはそれに対応したもの。つまりサイズや重さを統一することで、リグを組んだり、ジンバルやドローンなどを使って撮影した時でもレンズ交換時にバランス調整などを最小限に留められるように配慮されているわけだ。

さらに描写性能面においても、録画途中でレンズ交換をしてもそれを感じさせない仕上がりになるように考えられているなど、静止画撮影とは違った点にも配慮した設計になっている。

レンズフードはロック付き。もちろん逆付けも可能で、持ち歩いていても外れる心配はない。

さて、その50mmだが、このレンズの実力はなかなか侮りがたい。
外観はシリーズ共通ということで、やや大きめに感じるものの、サイズの割に軽量で携帯性は悪くない。フォーカスリングの幅も広く、ホールド感もよくマニュアルフォーカス撮影もやりやすい。

AFは動画撮影を重視していることもあり、とても静音で滑らかなもの。
最短撮影距離は0.45mと最近のレンズとしては無難なレベルで、もう少し寄れればと思うこともあった。

外観サイズが統一されているためやや大きめに見えるが、重さは300gと軽量で軽快。LUMIX S5とのバランスも良好。

スチール用途としての実力も安定しています 

絞り開放とは思えないほど周囲の点光源の滲みも抑えられており、きれいな点に表現されている。
撮影共通データ ■パナソニック LUMIX S5 絞り優先AE(F1.8) WB:オート ISOオート

クルマのガラス越しでの撮影だが、ハンドルの質感もよく再現されておりガラスの反射によるボケもきれい。描写もカリカリしておらず、かつ立体感がある。

 
描写性能はなかなか良好。解像力は絞り開放から高く、甘さを感じることはない。それでいて描写はカリカリしておらず、適度な立体感のあるものだ。

後ボケは素直でクセがない。ただし前ボケはまれに若干の二線ボケ的な傾向が見られることもあるが、さほど気にはならない。さらに絞り開放から軸上色収差もほぼ気にならないレベルに抑えられており、夜景の点光源を撮っても周辺まで滲みもない。
 

光量比が高いシーンだが、描写もクリアでゴーストもみられない。このシーンでは前ボケもクセもさほど気にならないレベル。

ピントの合っている中央の人形はとてもシャープ。後ボケは素直。ただ、前ボケはややクセがあり、二線ボケのような傾向が見られる。

描写は、狙い通りに同シリーズの24mmや35mmと似た傾向で、通常シーンなら同じシーンを撮ってもレンズを交換したことに気付かないレベルだ。

正直、全体に際立った特徴はない。しかし使用感、描写性能ともによく、安心感のあるレンズに仕上がっている。実売5万円台前半と比較的手頃なレンズだが、それ以上の価値を感じる。
軽量で使い勝手も良く、高い描写力を備えた標準レンズ。動画向けとしてはもちろん、普通に静止画を楽しむ人にも安心してオススメできる、実用的な実力派レンズだ。

光量比が高いシーンだが、描写もクリアでゴーストもみられない。このシーンでは前ボケもクセもさほど気にならないレベル。