ニコンのZマウント用標準ズーム2本が同時に発売となり、先日紹介したZ28-75mmとこの「NIKKOR Z24-120mm f/4 S」が登場。これによりZマウントの標準域の充実度はかなり広がってきた。今回は、このNIKKOR Z24-120mm f/4 Sの方をレビューします。

NIKKOR Z24-120mm f/4 S 主な仕様

●焦点距離:24-120mm
●最短撮影距離:0.35m
●最大撮影倍率:0.39倍
●レンズ構成:13群16枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚(円形絞り)
●フィルターサイズ:φ77mm
●大きさ・重さ:φ約845×118mm・約630g
●付属品:花形フード/ケース

AF-Sバージョンとはマッタクの別モノ!

120mmまでをカバーするのでテレ端ではそれなりにレンズ長は長くなる。が、得られる画角からすれば順当なところだ。

この24-120mmという焦点域のズームは、Fマウントの「AF-S NIKKOR 24-120mm f/4G ED VR」がラインナップされており、とりたてて新しい焦点域というわけではない。とはいえAF-Sレンズの単なる焼き直しではなく、ミラーレス最適化したZマウントレンズとして今回登場している。

全長は約15mm程度長くなっているが重量は80gほど軽くなっており、レンズ構成ももちろん異なり、使用されているEDレンズなどの高級素材レンズも増えている(本レンズはEDの非球面レンズも採用)。

AF-S 24-120mmも24mmスタートで広めの焦点域を持つ標準ズームとして人気であったが、Zマウント用にも登場したことでこれもまた人気になりそうだ。ただしこちらはレンズには手ブレ補正機構=VRがない。Zシリーズならボディで補正できるので実用上は問題ないだろう。もちろん欲をいえばレンズ側にも欲しいところだが…。

「S」のエンブレムが光り、その上にはファンクションボタンも搭載。このクラスでは利用頻度は少ないかも知れないが、あればあったで便利なはず。

先に言ってしまうと、筆者(諏訪)はこの「NIKKOR Z24-120mm f/4 S」がかなり気に入った。前回Z28-75mmを紹介した際に、筆者はどちらかを選ぶならこの「NIKKOR Z24-120mm f/4 S」の方だと書いたが、実際に使うまではZ28-75mmの方に魅力を感じていた。

ただし使ってみるとその広い焦点域からくる使い勝手、大きな差ではないが画質的な差でこちらの方がお気に入りなのだ。

もちろん組み合わせて使用したボディがZ 9であったこともその判断に影響している。大柄なZ 9と組み合わせてしまうと多少サイズ的に大きめのレンズでも気にならなくなってしまう、いやもっとザックリした言い方をしてしまうと、どうせ大きいので多少のサイズ差などどうでも良くなってしまうのだ(笑)。

組み合わせるボディがZ 7/Z 6で、コンパクトに収めたいのであればZ28-75mmの方が適していることには間違いない。本レンズはテレ端120mm側にするとそれなりにレンズは長く伸び、端から見るとやや大柄に見える。とはいえ重さは約630gしかないので、重さ的な負担はZ28-75mmとあまり変わらない。

賛否が分かれる「アッサリしたデザイン」はZレンズに共通したもの。

画質はしっかり"S-Line"しています

ワイド端

テレ端

ワイド端テレ端ともに光源を直接入れた場合のゴーストの発生はかなり少ない。周辺に置いたときにだけ外側にわずかに光彩が発生する程度。光源周辺に霞が発生するがこれはボディ由来と思われるもの。

さて画質を見てみると、まず逆光では中央から周辺まで太陽を配置してみてもほとんどゴーストが発生しない。四隅付近でやや外側に発生するが、目くじらを立てるほどのモノではない。

直接的な光線よりも、むしろ木漏れ日のような光が曲がりながら入ってきたときにたまにゴーストが強く出ることがあったが、レンズ素性としては良い方だろう。

また、フードの影ではないのだがフレアカッターの影と思われるような妙なゴーストが出ることがあったのも事実。なんとかそれを撮ってお見せしようかとトライしたのだが、かなり微妙な条件のようでなかなか撮影までは至っていない。

直射光に対してはゴーストをほとんど出さないが、こういう光が曲がってくるシーンではしっかりゴーストが発生することも。また、このシーンでいうところの太陽の下辺りに直線的なフレアカッターの影と思われるような段差のあるフレアが発生することもあった。■ニコン Z 9 絞り優先AE(F4 1/250秒) プラス1.7露出補正 WB:オート  ISO100

いずれにしても逆光耐性はなかなかのモノだ。この辺は前回紹介したZ28-75mmとは大きな差だろう。ただし、これまたZ 9のボディ由来の描写として、太陽などの高輝度被写体の輪郭がボワっと霞む。これはどのレンズでも起こるのでレンズとは別問題ではあるのだが…。

この逆光テストカットからも判るが、周辺光量は低下するが、テレ側もワイド側も落ち方が安定しており、極端に落ち込むこともない。つまるはデジタル補正を組み合わさればかなりフラットで安定した像にできるということだ。

画像左がワイド端(左下は隅の拡大)、右がワイド端(右下はその隅の拡大)。ワイド端ではやや周辺が甘くなり、全体にわずかにフリンジも見られるが24mmスタートのズームとしては平均的なレベル。テレ端も周辺は甘くなるがZ28-75mmほどではない。焦点域は広いがワイド端からテレ端までバランスが取れた画質といえるだろう。

シャープネスを見てみると全体に非常にシャープ。Z28-75mmはテレ側で周辺が甘くなっていたが、本レンズもテレ端120mm位置の開放絞りでは周辺がやや甘くなる。
ただしそのシャープネスの低下度合いは少なめ。本レンズの場合はむしろワイド端の方が周辺が甘くなりやすい。これは24mmスタートということで多少の無理もあるためだ。

28mm位置であれば開放でも周辺までシャープだ。また、ワイド端開放絞りでは多少フリンジも発生している。しっかり縁取るほどではないが、うっすらとみられる。全体的に見れば画質的にはZ28-75mmより上であり、このあたりはレンズ名に「S」が記されているだけのことはある。

まとめ=Z28-75mmと迷っているなら、迷わずコッチ?

1段絞ってあげる(=F5.6)だけでかなりのキレを見せてくれる。このカットでは四隅に物がないが、隅まで安定している。避雷針の先までキレッキレの描写だ。
■ニコン Z 9 絞り優先AE(F5.6 1/1000秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート  ISO100 

2本同時に発売されたZ28-75mmと迷っているなら、迷わずこちらがオススメだ。もちろんサイズ差がありそれを許容できるかがポイントになるが、実売価格は極端には変わらないし、その広い焦点域は撮影の幅を広げてくれる。

やや大柄ではあるがF4通しのレンズであることもあり極端に大きな物ではなく、スナップで撮り歩くにも便利なレンズだ。筆者がZボディをメインで使うとするなら、常用レンズはこれになりそう…。
■ニコン Z 9 絞り優先AE(F8 1/800秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート  ISO100

今回は撮端撮影距離などは触れていないが、こちらもズーム全域で0.39倍が得られるし、そもそもこちらの方が圧倒的にシーンゲットしやすい! 

ただし本レンズが開放値F4であるため、少しでもボケをと考える人にはZ28-75mmも魅力であろう。が、それもテレ端でよければこちらは120mmでそれなりにしっかりボカせるので大きなウィークポイントにはならないはずだ。それが問題ない、という方には本レンズはオススメな1本だ!

逆光にも強く、太陽を入れたカットを躊躇なく撮れる。ただしボディによっては霞む。水面部分の拡大画像(右)を見ても、波自体はかなり丁寧に再現できているのだが、反射の高輝度部分は輪郭が霞んでいる。
■ニコン Z 9 絞り優先AE(F8 1/12800秒) マイナス2.0露出補正 WB:オート  ISO100

ワイド端でのカットだが、これも1段絞っている。全体にしっかりキレがある。本当の四隅のみ少し甘くなっているように見えるかもしれないが、これは距離差によるピントのズレだ。キレを求めるなら1段絞る、が、このレンズのポイントだろう。
■ニコン Z 9 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート  ISO100