写真の新たな媒体、SNS(ソーシャルネットワークサービス)。この新連載では写真家・中野幸英さんが、SNS から生まれた新たな文法 = リテラシーを実際に投稿者と会って検証・共有していきます。
今回はGakuさんをご紹介します。この記事は月刊カメラマン誌に掲載されたものです。

明るさの基準 

家の近くの現像屋さんに行き、いつも通りネガシートとともにフィルム現像のみを頼む。ふとレジ横に置いてある写真展のDM を見つけた。「フィンランドからの手紙」と題された展示。何が「手紙」なのか、その時ポストカードに載せてある一枚の写真からは想像がつかなかった。
 
「手紙」。Instagram でサムネイル画面を見つめていると、アカウント自体が一つのメッセージのように感じることがある。そんな時Instagram で「白い」アカウントを見つけた。撮っているものが白いというよりも、光や明るさについて一定の基準で揃えられているようなアカウントだ。

一枚一枚に写っているのは若い女性・海・花・中古カメラ…と、おしゃれ写真界隈のアカウントと大差はないのだが、その揃えられた白さ・明るさ、またモデルとの距離、場所と、禁欲的で品のある投稿がサムネイルで一面に続いている。

SNS を長く続けている人には、こういう穏やかな投稿という共通点があると思う。この連載のためにいろんな人のアカウントをのぞくのだが、感情的な投稿を感情的にポストしても、SNS から期待するような応えはきっと返っては来ないだろう。この「白い」アカウントのGaku さんが冒頭の「フィンランドからの手紙」の人だと気づくのに少し時間がかかった。

静かに白い展示

展示初日のカフェでアポイントを取ったGaku さんと初めてお会いした。想像した以上に穏やかに笑顔を見せる男性が迎えてくれて、とても1 万を超えるフォロワーを持つインスタグラマーのようにはお見受けできず、少し驚いた。

展示は一年前の夏、北欧に出向いた時の写真だ。街並みや公園、教会の中、これも一般的な旅行写真と被写体の差はあまりない。どこか味気なさすら感じる写真もある。しかし、一歩引いてカフェとして全体像を考えると、この形態の少し違うスターバックスの店舗で、目立つでもなく埋没するでもない。白
い壁に馴染んだ、彼の展示がカフェに落ち着きを与えている。

Gaku さんに話を伺うと、ここで展示するまでには時間をかけ、あまり人の写真や重いメッセージではなく、今回は旅行で好きなものを撮影した、揃って見ることのできる写真を展示に選んだという。

このインタビューの最中にも、ステイトメントのように話すべき内容をまとめたメモを確認していて、その丁寧な姿勢に終始驚きを感じてしまう。揃ったように見えるInstagram のサムネイルは、意図的というよりも彼の制作スタイルなのだ。SNS や展示だけでなく全て入念に準備をし、自分に課すルー
ルを設けているように見受けられる。