今回のテーマは『雨に唄えば』。
本誌では、濡れた石畳の質感をできるだけ出したくて余分なカラーを排除し、モノクロカットを掲載。人目を気にせず、踊りながら全てを雨に流してしまえば、そこに待つのは、晴れ晴れした気持ち…を表現してみた。
実はこの『雨に唄えば』、頭の中ではストーリーのベクトルが二つ存在していた。
一つは本誌で掲載された“晴れ晴れ”とした方向。
で、もう一つは、雨と共に哀しみを感じ、止むと呆然とする方向。
最後まで決めかねていたこともあり、いのうえさんには両方のシチュエーションの展開であれこれ演じて頂いた。
Webでは後者のほうを中心にご紹介する。
雨が止んだタイミングで立ち尽くす。
何かを含んだ表情ではあるが、先を見ながらも、そこには希望という明るさは感じない。これまで過ごした時間にサヨナラをする気持ちを込めてもらった。
立ち尽くすシーン、寄りのカット。
このシーンでは誰かを意識もしくは居合わせているわけではないので、表情もなにかを思ってのものではなく、見知らぬ人とたまたま目が合った感じで。彼女を見て(つまりこのカットをご覧になった方が)各々彼女の感情を思い描いて頂ければいいと思う。
足元で表現する。
足元のカットもかなり撮影した。石畳でかつ濡れているとなれば、足元だけの撮影は必然。足元カットただ1点だけなら画になることも多いが、数点見せるうちの1点となると、漠然としたものになりやすいと思い、もう少し事を語ってくれるような、状況を匂わせてくれるようなものが欲しくなった。
ちなみに水たまりの水滴がはねるカットも撮影したが、状況という点で水面が映っているカットにした。
気分を変えて。
気持ちを取り直して、お茶するシーン。
モノクロにしたのは、まだ感情に彩りが無い雰囲気を出す為。
雨でさまざまなシチュエーションを
雨に濡れるシーンをとても多くみかけるし、それはそれでいいと思うが、普段の営みの中で、を考えてみてこのように創ってみた。大した雨ではなかったにもかかわらず、彼女も私も足元はビチョビチョに。濡れた靴のままではテンションが下がるので、できれば撮影ごとに靴を履き替えさせてあげたくなったね。(萩原)
この撮影をして、秋雨の時期もカメラを持って出掛けたいって思いました。ショーウィンドウについた水滴、水溜りの写り込み、濡れて深くなる緑。 雨の日だから撮れる写真って好きです。 次回は雨に打たれてるシーンとか撮ってもらいたいな。(いのうえ)