ユーモア溢れる自撮り写真がTVやネットで大きな話題となっている89歳のアマチュア写真家・西本喜美子さんの特別企画展が本日から新宿のエプサイトで公開されている。

くったくのない笑顔と自撮り写真を駆使したユーモアセンスで世界から注目されている西本喜美子さん、89歳。

ネットで話題になった自撮り写真やデジタルアート作品を展示!

西本喜美子さんは、72歳のときに長男でアートディレクターの西本和民氏が主宰する写真講座に参加したときに初めてカメラに触れた。その後、指導を受けながら撮影や画像処理の技術を習得し、独自の感性を育んできた。
2011年、82歳のときに熊本県立美術館分館で初の個展を開催。画像処理ソフトを巧みに使ったデジタルアート作品や、ユーモア溢れる自撮り写真が大きな話題となった。
年齢に関係なく心の底から写真を楽しみ、作品を精力的に制作する姿は大きな共感を呼び、以降その活動が多数のメディアで取り上げられている。

《西本喜美子さん & 西本和民氏 記者会見要旨》
「最初は難しいと思っていた。徐々に楽しいと思うようになり、そして友達ができた」

Q.初めての東京での展覧会、今のお気持ちは?
西本喜美子さん(以下「」内は喜美子さん)「うれしくもあり楽しくもあり、ありがとうございますという気持ちです」
Q.いま、興味があることは?
「写真が一番! あとイラストにも興味があります」
西本和民氏:(以下「和民:」)とにかくいろいろ撮ってきては、家に持ち帰ってきます。お寿司屋で「要らない貝殻はないか?」と聞いたりして…はたから見るとガラクタだが、本人には宝物なんです(笑)
Q.ショールームで放映している年賀状作成中の動画を見ると、フォトショップを使って作業しているときの、とても楽しそうな表情が印象的です。フォトショップにはすぐ慣れましたか? 
「2-3回やっているうちに要領がわかってきた」

西本喜美子さんと長男でアートディレクターの西本和民氏。

www.epson.jp

西本和民
遊美塾・代表。1955年生まれ、西本喜美子さんの長男。金沢美術工芸大学を卒業後、東京の広告代理店やレコード会社などを経て、30歳のときアート・ディレクターとして独立。チャゲ&飛鳥やおニャン子クラブ、光GENJI、吉川晃司、B’z、アルフィー、相川七瀬など日本一レコード・ジャケットを作る。東京と実家のある熊本を往復しているうちに熊本での仕事も増え1997年に写真塾「遊美塾」を開講。

「技術の習得は教え方、伝え方しだい。その人が何をしたいか見極め、そこだけ教えればいいんです」(西本和民)

Q.お2人に聞きます。その年齢でフォトショップを使えるのは特別なスーパーおばあちゃんだと思っていたんですが、誰でもできるものですか?
「特別ではない」
和民:伝え方だと思う。もしフォトショップとかいろいろなソフトのマニュアルを1ページ目から読もうと思ったら、おそらくみんな寝ます。私自身、フォトショップ1.0を日本に入ってくる前から使っている。教えるときは、望むところだけをわかりやすく伝えればいいんです、それ以外は伝えなくていい。本来、必要ないことはいっぱいある。わかりやすく言うと、駅前にあるパソコン講座では、受講者が絶対に使わないワードとかエクセルを教えられる。自分は年賀状を作りたいだけなのに、なんでエクセルの表計算を覚えなければいけないのか。その人が何をしたいか見極めて、そこだけ教えればいいんです。目的が増えれば、同じようにやって、だんだんスキルが増えていく。僕も使わないものはわからない。そういう伝え方をしていけば誰でも使えるようになっていく、と自信をもって言える。
Q. 和民氏に伺います。お母さんが写真に凝り始めてから、何か変わったことはありますか?
和民:まず写真の講座に入ってきたのがビックリでした。まぁ友達が増えて、それはそれでいいかと。ただ写真は型に嵌めるものではない。写真教室で“こうでなければ写真ではない”という人がよくいるが…でも写真ですよね。嵌める型はないんです、伸びて行けばいい。誰かの型に沿っていっても新しいものが生まれるはずがない。芸術ではない。つまり、いろんな感性をみんなが持っている。だからこういう人(喜美子さん)がドンドン出てくるといい。こうじゃなきゃない、ということはなくて写真はシャッターさえ押せて、何かが映ればいい。その写っているものが、人に何かを訴えればいい。写真が上手って何なのか? カメラの扱い方が詳しくても写真が上手とは言えない。撮った写真が人に何かのメッセージを伝えたり、感動を送ったり、そういう写真を撮れた人が、写真が上手い人なんですね。そういう考えの中でやっているので、この人(喜美子さん)はいまだによくカメラの扱い方はわかりません。でもこういう結果を出せるので、コレでいいんですよ。そんな感じだから、自由に楽しくやっていられるし、仲間たちも楽しかったんじゃないかな。
Q.素材を撮るとき、作品を制作するとき、作品を鑑賞してもらうときなど写真に関わる瞬間はいろいろありますが、どんな段階が一番楽しいですか?
「撮っているときが一番楽しい。これをどうしよう、とあれこれ考えるのが楽しい」

西本喜美子さんのキャラクターらしく、ギャラリーは楽しさ満載のレイアウトがなされている。

“面白いものを撮る”のではなく “たとえ石ころでも面白く撮る”

Q.自撮りした作品がとてもユーモラスですが、何を伝えたいですか?
「写真は楽しいということ、面白いということ。カメラを持つことは楽しいということ。観る人が面白いとか楽しいとか、笑えるとか、そっちのほうですね」
Q. 作品のアイディアはどんなときに考えますか?
「その場その場で考える。 “面白いものを撮る”のではなく、“石ころでも面白く撮る”」
Q.自転車で疾走しているところや自動車と併走している作品がありますが、若いころに競輪選手の経験もあるしスピードが好きなんですか?
「そうですね、まぁ(笑)」
Q.反響をどう思います?
「うれしい限り。ありがたい」
Q.アートでキレイな作品もありますが、こちらはご自宅のスタジオで撮影した?
「ほとんどそうですが、ピーマンの作品は“流し”にいるときに蛍光灯の光がキレイだと思ってそこで撮りました」
和民:ちなみに動物の作品はアルミのパイプから覗きこんで撮影しています。こちらの作品はすべて合成ではありません。
Q.ご自分の作品をモニターで見るのと、プリントで観るのと、なにか違いはありますか?
「自分の写真は、たいていパソコンで見ている。プリントもパソコンの中、そのままだと感じます。ただ大きくなってキレイだな、とも思う」

じっくり西本喜美子ワールドを楽しんでほしい。 
*展示作品のプリント制作は、高速かつ豊かで滑らかな階調表現を実現した大判プリンター「SC-P2005PS」と高画質と低印刷コストを両立したColorio V-editionシリーズのプリンターを使用。

「写真を撮るようになってからは、倍、人生が楽しくなりましたね」

Q.西本さんはすごく人生を楽しんでいらっしゃる。自分もいつかそのように暮らしたいと思っています。西本さんが若いとき、いまの年齢の自分をどのように想像していましたか? そして今、楽しいと感じていますでしょうか?
「まぁ主人と2人でずっと生活してきた。そして写真を撮るようになってからは、倍、人生が楽しくなりましたね」
Q.人生長いですが、どう楽しめばいいのでしょうか?
「(しばし考えたあとに)人によって違うから難しいね。私は、昼はやっぱり写真を楽しんで撮ること」
和民:バーで飲んでいるのが一番楽しいんじゃない(笑)。
「それは別として(笑)。夜は友達と雑談をしながらバーボン飲みです」
和民:年寄りのくせに朝、起きるのが遅いんです(笑)。
Q.来年90歳になりますが、新たにチャレンジしたいことは?
「いくつになっても自分が歩ける間は、写真を撮っていきたいと思っています」
和民:来年はYoutubeの仲間と、写真仲間と語れる友人たちとバーをやりたい、と言っていました(笑)。今クラウドファンディングで募っています、ぜんぜん集まっていませんが(笑)。ふだんはバーボン飲んでタバコを吸っているんです。
「だいぶ不良です(笑)」
Q.元気の秘訣はそういうところですか?
「そういうことですね、自由に遊んでいますので」
Q.吸っているタバコの銘柄は(笑)?
和民:メンソールならなんでもいいんです(笑)。
Q.いつまで写真を続けますか?
「写真が好き。寝たきりになっても部屋の中を撮っていたい」
和民:すみません、最後に私からひとつ質問をしてもいいですか? ふだん写真のハナシをしたことはないんです。自分で自分の写真をうまいと思っている?
「思っていない。塾で教わったとおりをやっているだけ」
和民:教える先生の立場としてだけど、写真の技術はない。だけど写真はうまい。写真は表現するもの。写真を見た人が一目で何かを感じるという、視覚的にスゴイ表現方法です。それができている。だからうまいんです。写真技術がいくら高くても、人の心を打つ写真ができなかったら、それは写真がうまいとはいえない。要するに、写真がうまいかどうか、というのは写真表現がうまいかどうか、ということ。こんなにうまい人はいない。

個展開催前日の12月14日に行われたメディア向けの内覧会と共同取材に日本のテレビ・新聞・雑誌はもちろん、ドイツ、スペイン、中国ほか世界中のメディア約17社が集結した。そして意外なことに!?西本喜美子さんはアートな作品の腕前も抜群なのだ!

「エプソンが西本さんの作品展をやった理由は3つあります。まず我々の心をグッと掴む作品だということ。これを印刷したらどうなるのだろう? 2つめはユニークなものだけではなくアーティスティックな作品もあります。これもまた印刷したらどうなるのだろう?という興味。3つめは89歳でここまで作品を作る情熱、元気さに感服したことです。我々はまだまだ子供だ、と思わされる。仲間のうちで話題になり、今回の企画展が実現しました。企画展を打診したときに西本さん快諾してくれ、細かい部分にも丁寧に受け答えしてくれました。ご存知のとおり、エプソンの仕事はプリンター事業のほかに作品作りを支援できるようにエプソンギャラリーがあります。昨今はスマホやLINEなどで写真をやりとりする動きがありますが、実際にプリントをして引き伸ばしたり、何枚も並べてみたりするとパソコンやスマホとは違う!ということをぜひみなさんにも見て知ってもらいたい。少しでも楽しいな、と感じていただければ幸いです」(エプソン 田中氏)

展覧会に先駆け11月上旬からエプサイトのショールームで2018年度の西本喜美子氏の年賀状をColorio V-editionシリーズを用いて制作、展示している。こちらも見逃せない。

西本喜美子
1928年、両親が農業指導のために渡ったブラジルで生まれる。8歳で帰国。美容院開業後、競輪選手をしていた弟の影響を受けて自身も競輪選手になる。27歳で結婚し主婦に。72歳のときにアートディレクターである長男が主宰する写真講座に参加し、写真を始める。2011年、82歳のときに熊本県立美術館分館にて初めて個展を開催。以後、その活動が多数のマスメディアに取り上げられ大きな話題となり、現在も精力的に作品を制作中。

■西本喜美子写真展『遊ぼかね』
●開催日時:2017年12月15日(金)~2018年1月18日(木)
10:30~18:30。最終日は14:00まで。日曜休館・12月28日~1月4日年末年始休館。●会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト(東京都新宿区西新宿2-1-1 新宿三井ビル1階)●入場料:無料