月刊カメラマン誌「ジャンル別フォト講座」にて好評連載中「スナップ」の講師・内田ユキオさんによるWebカメラマンスペシャルセミナー。今回はその8です。このセミナーをもっと知りたい方は月刊カメラマン誌2017年7月号別冊付録をご参照ください。この短期連載は付録よりの引用です。

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「らしさ」を写真に撮る。スナップ上達の大きなステップアップ

すこし前に、宮城県で高校写真部の新一年生に街や公園でスナップを撮ってもらったのですが、ひとりの女子が「これは仙台らしさを撮りたいと思った」と1 カット見せてくれました。

▲電線と行き交う人の不規則さと、ポップな色にあふれたところがバンコクらしさ。さっと撮っているように見えるが、かなり時間をかけている。■フジフイルムX-Pro1 XF18mmF2.8  プログラムAE(F4 1/125 秒) フィルムシミュレーション:ベルビア WB:オート ISO400

残念ながら見てすぐに「たしかにこれは仙台らしい!」とは思えませんでした。が、帰りに道を歩きながら、逆に「さっき見た写真に似ている」といった感覚が蘇りました。    

これはオスカー・ワイルドのいう「自然が芸術を模倣する」ということです。他の街に比べて生い茂
る緑や、真っ直ぐな道を風が抜けていく気持ち良さを再確認して、写真によって仙台の魅力のひとつを
教えられました。

▲よく似た街——香港や中国とも違う、台湾らしさにこだわってフレーミング。道幅や光が、らしさを感じさせると思う。■フジフイルムX100  プログラムAE(F2.8 1/100 秒) マイナス0.7露出補正 フィルムシミュレーション:モノクロ WB:オート ISO200

何度も訪れている都市に行くと「そうそう、この感じ」と思うことがありませんか。ハワイの風の匂いやホーチミンのバイクのエンジン音など、たいてい写真に撮りにくいものです。あるいは春らしさ、夏らしさといった季節感。この「ナントカ感」を撮るのは簡単なことではないですが、スナップの究極の目標でしょう。

▲ハワイが好きな理由を人に説明するのは難しい。結局は光だったり風の肌触りだったりするわけで、それをなんとか写真に再現してみようと奮闘。■リコーGXR A12 50mmF2.5 プログラムAE(F7.1 1/1000 秒) WB:オート ISO200

かのアンリ・カルティエ=ブレッソンは「目と頭と心がひとつになる」瞬間こそ、名作が生まれる条件だと言いました。心で感じていることが、目で見ているものによって刺激され、頭で形づくっていくということでしょうか。

▲日本にいながら目を閉じてロンドンのことを考えるとき、思い出すのはこんな光景。ピントの位置が右の女性で、パッと見ただけだとピンぼけに感じるので、印象を写真に残すよい作例になっているのでは!? ■フジフイルムX-Pro1 XF35mmF1.4 プログラムAE(F5 1/140 秒) マイナス0.7 露出補正 フィルムシミュレーション:ベルビア WB:日光 ISO400

カメラを持っていない人なら何も感じず見逃してしまうような「××らしさ」を写真に残してみよう
と考えるのも、スナップ上達の大きなステップアップになります。

今回のポイントは3点!

❶言葉にしづらい“ らしさ” を撮る!
❷繊細なディテールにこだわるべし!
❸自分だけでなく見る人にも伝わるよう気を遣う!!

撮影・解説は自称「最後の文系写真家」内田ユキオさん

▲内田さんのブログについてはプロフィール写真をクリックしてください。

www.yuki187.com

公務員を経てフリーフォトグラファーに。自称「最後の文系写真家」。モノクロのスナップに定評があり、ニコンサロン、富士フォトサロンなどで個展を開催。月刊カメラマン誌をはじめ、新聞、雑誌に寄稿し、写真教室の講師など精力的に活躍中。主な著書には「ライカとモノクロの日々」、「いつもカメラが」など。