photo&text:豊田慶記 ※新旧2台カットは編集部
■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
ソニー α7 V のスペック
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| イメージセンサー | 35mmフルサイズ |
| 有効画素数 | 約3300万画素 |
| マウント | ソニーEマウント |
| 常用ISO感度 | ISO 100〜51200(拡張ISO 50/204800) |
| 連続撮影 | 約10コマ/秒(メカ)/約30コマ/秒(電子) |
| ファインダー | 0.5型OLED EVF 368万6400ドット |
| 液晶モニター | 3.2型 209万5104ドット 4軸マルチアングル タッチパネル |
| 記録メディア | CFexpress(Type A)/SDXC(UHS-II対応) |
| 発売日 | 2025年12月19日(ズームレンズキットは2026年春以降発売) |
| 大きさ | 約130.3×96.4×82.4mm |
| 重さ | 約695g |
ソニー α7 V はどんなカメラ?
常に「革新」の連続だった歴代α7シリーズ進化の軌跡
「世界初のフルサイズ・ミラーレス機」α7の登場は2013年10月。それから12年の時を経て、α7の5代目が登場した。その足跡を簡単に振り返ると、初代は先進的だった一方で一眼レフとの性能差がまだまだあることが否定できず、発展途上の色が濃かったのは事実。

同時発表の新キットズームレンズ「FE28-70mm F3.5-5.6 OSS II」。ソニー曰く「最強のキットズーム」とのことで、α9 Ⅲ使用時においては最大120コマ/秒までのAF/AE追従連写に対応する…というが、豊田氏と諏訪氏が実写したところ、描写は正直厳しいシロモノ。「最強のキットズーム」は盛りすぎ。この新キットズームレンズのレビューは『カメラマン リターンズ #17_間違いだらけのレンズ選び!! 2026』を参照のこと。
だが、わずか13カ月でボディ内手ブレ補正と動画Log記録に対応する新型α7 IIが登場。発展途上の印象を覆してきた一方で、その早すぎる進化(...というかモデルチェンジ)に物議を醸したことは印象的だった。
次の3代目へのステップアップは約3年後となる2018年初頭。裏面照射CMOSセンサーやリアルタイム瞳AFと秒10コマの高速性、4K動画に対応したα7 IIIでは「フルサイズ・ミラーレスの新基準」をアピール。その一方で、スペック通りの効果を体感しにくかった5軸5段のボディ内手ブレ補正やAF時に表示が粗くなるEVFなど、優れたスペックに対して実際の使用感との乖離がまったくない訳ではなかった。

その流れが変わったのは2021年12月登場のα7 IV。スペック表記的にはわずかな改善となる5.5段のボディ内手ブレ補正はしかし、確かな効果を実感できるようになった。また絵作りにおいても、クリエイティブルックや4K60p対応の33MPセンサーとBIONZ XRを組み合わせ、増加したデータ量とその高速性に対応するべくCFexpress Type AとUHS-IIに両対応するスロットを含むデュアルスロットを装備。
さらにそれまでチルトアングルだった背面LCDはバリアングルに変更され、動画にも強いミラーレス機から、動画ハイブリッド機へとその軸足を変化させたように見えた。

ソニー α7 V のプロカメラマンによるインプレッション
デバイスの進化によるブラックアウトフリーで、ストレスもフリー
α7シリーズの足跡をザッと振り返ってみたが、外観からの印象はα7 II以後はほぼ同一イメージが踏襲されている。そんななか今回、従来機α7 IVからの大きな変更点としてあげられるのが、背面モニターが3型約104万ドットのバリアングルモニターからα7R Vやα9 IIIなどと同じ3.2型約210万ドット(DCI-P3相当)4軸マルチアングルモニターに変更されたこと。
細かいところではグリップ形状などにも改良が加えられているが、よほどのマニアでなければα7 IVとの違いをパッと見で判別するのは難しい。家族に黙って入手する場合にはその秘匿性が大いに役に立ちそうだ。

背面LCDがバリアングルからチルトアングルからバリアングルとチルトアングルを組み合わせた4軸マルチアングルへと変更。α7R Vやα1 Ⅱと同じ方式となった。
ちなみに、筆者の大きな手には新型の方が手馴染みが良く、レンズ装着時の重量バランスも良好に感じられた。確認したところ、グリップ時に右手中指が当たる雪庇部分の傾斜角などが再設計されたことと、4軸マルチアングル化などに伴いボディ背面側がやや重くなったことで、重心バランスが変化しているとのこと。実際に同じレンズを装着して、新旧ボディで握り比べたが、バランスは新型の方が良かった。
撮影性能についてはほぼ一新された。従来機のα7 IVはBIONZ XRを2基掛けという贅沢な仕様だった一方で、AIプロセッシングユニットを持っていなかった。だが今回は、AIプロセッシングユニットとBIONZを統合した新開発の映像エンジン「BIONZ XR2」を採用する。処理性能を高めつつ省エネも両立しているという。
これに組み合わせるセンサーは、同じく新開発の33MP部分積層型CMOSセンサー。これらの新型コアデバイス採用によって、電子シャッター時にブラックアウトフリーでのAE/AF追従最高約30コマ/秒かつ14bit RAW記録と、プリキャプチャーにも対応する。

ローリング速度は「α7 IV以上α1 II未満」とのことだが、体感ではニコンZ6 IIIの部分積層型センサーと同等以上の読み出し速度であるように感じられた。ちなみにメカシャッター時はこれまで通り秒10コマとなる。
ブラックアウトフリー化による最大のメリットは、AF測距が撮影時に途切れないこと。少し踏み込んだ説明をすると、撮影のためのデータとは別に、AFやライブビュー用にデータを別途出力し続けられ、撮影用のデータ読み出し、つまりブラックアウトによる測距演算の中断が無い。つまり、最大60fps(1秒間に60回)で演算と測距を常時行うことが可能なのだ。AF追従性に貢献することは想像に難くないだろう。

グリップ形状の細部をブラッシュアップ。右手中指の掛かり具合はα7 IVの方が深いが、人差し指のシャッターボタンへかけるトップ部の形状がα7 Vの方が角度が付けられており、手のひら全体でホールドさせていてバランスが良い。
実際に今回ハンズオンした感想としても、ブラックアウトフリー化の恩恵は大きく、例えばAF中でもEVFの表示解像度や滑らかさが維持され、LCD表示についても一瞬のカクツキ等は感じられなかった。
α7 IVと比較してみたが、あまりの違いにEVFまわりの光学系やデバイスも一新されたのか?と確認したところ、「ユニットは同一だが、センサーとエンジンの性能が上がったことで出力される映像のクオリティも合わせて向上し、結果としてEVFユニットの性能を最大限に活かせるようになった」という回答。これには驚かされた。カタログスペックからでは読み解けない些細なことだが、カメラへの信頼感向上に寄与している。上位モデルを使った時のような馴染む感があり、ストレスが無いのだ。

また、α7 IVではトラッキングAFなどを多用しているとバッテリー消費をそれなりに感じられたが、本機でハンズオン中にメカシャッターで600ショット、電子で1400ショットし、一通りの設定やメニュー画面のチェックなどを経てもなお81%の残量があった。性能と省エネ性を両立できている。
ソニー α7 V の画質とAF性能
階調限界の再現性を改善。AFは「α7 IVとは比べられない」
ソニーの画質に対するアピールでこれまで気になっていたのが、「◯◯ストップ」というフレーズ。本機も最大16ストップであることをアピールしている。これは14bitのRAWデータをJPEGなどに圧縮して表現する際の、特にハイライトとシャドー部の限界域の再現性が伸びました(良くなりました)!ということを表している。
聞けば、「センサーとエンジンの性能が良くなったことで、これまでいわゆる撮って出しの素のJPEG出力時に、階調補正などの処理を施さなければ表現することが難しかったシャドー限界(黒つぶれ)とハイライト限界(白飛び)の再現性を改善。階調性を広げた(軟調に)、というよりも、これまでの表現にプラスして限界を広げた、というイメージ」のようだった。なお、これはメカシャッター時のみのスペックで、「電子シャッター時には少し下がる」とのこと。
ポートレートシーンで試した限りでは数値が持つインパクトに納得感があるか?と言われるとなんとも言い難いが、デフォルト設定で工夫なく撮っただけで、ここまでシッカリと再現してくれることに驚かされたことは明記しておきたい。

FE85mm F1.4 GMで、開放絞りかつAF-Cで約400ショット連続撮影してみたが、元データではほぼ全てのカットでコンタクトの縁が分かるレベルのAF精度。大変に素晴らしい結果だった。イジワルな明暗比設定にも関わらず、ハイエストライトからディープシャドーまで無調整でポンと出たようには思えない。良し悪しや好き嫌いは別として、後処理のひと手間が減るのでとても楽。これにはクラリと来る。

縦位置カットは50mm F1.4GM。AIによるAWBシーン判定の効果はそれなりにあるようには感じられたが、バラつきが全くないというワケではないので、適宜マニュアルWBを使いたい。
期待のAF性能は、大袈裟でなく「α7 IVとは比べられない」が正直な感想だ。ライブビューのラグが減っていること、表示がキレイになっていること、被写体検出の世代が異なっていることなどが加算され、あらゆる状況でレスポンスが良いのだ。
もちろん使い方によっては差を感じない場合もあるだろうが、α7 Vはいつでもキレイなままでヌルヌルと動作する。また、顔瞳認識に限った話をしても、検出中の瞳が影に隠れても追従は止まらず、ロストしたとしても頭部に検出表示が張り付いている。その上、画面のほぼ隅まで検出追従してくれるようになったので、撮影時に咄嗟に姿勢(縦横)を変えたりする状況で、フレーミングが暴れたとしても画面内に捉えてさえいればAFは継続される。これは野鳥撮影などでより威力を発揮するだろう。こういった性能は上位モデルだけの特権でもあったが、それは徐々に特別なものではなくなりつつある。

被写体検出の検出速度と精度、そしてトラッキング性が大きく向上。特に帽子の鍔の影に瞳が隠れても瞳位置で正しく検出し続けていて感心した(写真左下)。またニコン機並みの瞳検出サイズの小ささを達成しているので、撮影していて「カメラがちゃんと人物を掴んでいるぞ」という安心感が大きくなった(写真右上)。実際に画角右下の隅に配置してみたがまったく問題なく検出・追従(写真右下)。また縦位置時の表示もスムーズに切り替わり、姿勢差によらず視認性が高い(写真中央)。
今回はフィールド実写したわけではないが、短時間触れてみただけでもそれなりの性能差があることが実感できた。税込・約41万7000円というα7シリーズの価格上昇を憂う声もあったが、「α7 Ⅳの後継モデルというよりは実質的にα9 IIの撮影性能を得た新しいモデル」と考えると、価格に対する印象は変わりそうだ。
まとめると、このα7 V。ソニーが「再定義」という言葉を使うように、「Basic」の意味を再び考えさせられるカメラとなっていた。「Basic」という割にはややオーバースペックで、価格もいささか高い。未来の話になるが、数年後に新型が登場し、従来機もしくは旧型となってはじめて本機は一般的な意味での「Basic」の座に落ち着くのだろう。それだけ先取りした性能を持っているように感じられた。
ソニー α7 V のメリットとデメリット
| メリット |
|---|
| ブラックアウトフリーで快適 |
| レスポンスが良い |
| グリップが良くなった |
| バッテリー消費の少なさ |
| EVF表示がキレイに |
| デメリット |
| 強いて言えば動画性能がオープンゲート記録じゃない |
ソニー α7 V と他機種のスペック比較
| 項目 | α7 IV | α7 V | α7C II |
|---|---|---|---|
| イメージセンサー | フルサイズ 裏面照射型 | フルサイズ 部分積層型 | フルサイズ 裏面照射型 |
| 有効画素数 | 約3300万画素 | 約3300万画素 | 約3300万画素 |
| 画像処理エンジン | BIONZ XR | BIONZ XR2 | BIONZ XR |
| AIプロセッシングユニット | — | BIONZ XR2に内蔵 | AIプロセッシングユニット搭載 |
| AF(静止画・動画) | リアルタイム認識AF(人物、動物、鳥) | リアルタイム認識AF(オート、人物、動物、鳥、昆虫、クルマ、列車、飛行機) | リアルタイム認識AF(オート、人物、動物、鳥、昆虫、クルマ、列車、飛行機) |
| 連続撮影 | 最高約10コマ/秒 メカ | 最高約30コマ/秒 電子 | 最高約10コマ/秒 メカ |
| ブラックアウトフリー | — | ブラックアウトフリー | — |
| 連写ブースト対応 | — | 連写ブースト対応 | — |
| プリ撮影対応 | — | プリ撮影対応 | — |
| コンポジットRAW撮影 | — | HDR撮影/NR撮影 | — |
| 常用ISO感度(拡張) | 100-51200(50・204800) | 100-51200(50・204800) | 100-51200(50・204800) |
| ボディ内手ブレ補正 | 5.5段+動画時ダイナミックアクティブモード | 中央7.5段/周辺6.5段+動画時ダイナミックアクティブモード | 7.0段+動画時ダイナミックアクティブモード |
| 動画記録方式(APS-Cクロップ) | 4K30P/4K60P | 4K60P/4K120P | 4K30P/4K60P |
| 液晶モニター | 3型 103.7万ドット バリアングル | 3.2型 209万5104ドット 4軸マルチアングル | 3型 103.7万ドット バリアングル |
| EVF | 0.5型OLED EVF 368万6400ドット | 0.5型OLED EVF 368万6400ドット | 0.39型OLED EVF 235万9296ドット |
| USB | Type C+マルチ/microUSB | Type C×2(10Gbps/480Mbps) | Type C |
| メディアスロット | CFexpress Type A+SD(UHS-II) | CFexpress Type A+SD(UHS-II) | SD(UHS-II) |
| 撮影可能枚数(モニター/EVF使用) | 580枚/520枚 | 750枚/630枚 | 560枚/540枚 |
| 大きさ(W×H×D) | 約131.3×96.4×79.8mm | 約130.3×96.4×82.4mm | 約124.0×71.1×63.4mm |
| 重さ(電池・カード含む) | 約658g | 約695g | 約514g |
| 発売日 | 2021年12月17日 | 2025年12月19日 | 2023年10月13日 |

