モノクローム専用CMOSセンサーを搭載したコンパクトデジタルカメラ"RICOH GR Ⅳ Monochrome"がついに登場。画質、速写性、携行性を従来機である"Ⅲ"からさらに高めた"RICOH GR Ⅳ"と基本性能は同じだが、「白黒写真しか撮れない」派生モデルである。画素数も同じ約2574万画素だが、解像力や階調の再現性に優れた、非常に上質なモノクローム表現を実現しているとのこと。

岡嶋和幸氏プロフィール
1967年福岡市生まれ。東京写真専門学校卒業。スタジオ・アシスタント、写真家助手を経てフリーランスとなる。精力的な作品発表のほか、メーカー等のセミナー講師やフォトコンテスト審査員など、活動の範囲は多岐にわたる。

待望のモノクローム専用スナップシューター

画像: 待望のモノクローム専用スナップシューター

2023年4月に"PENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochrome"が発売になったとき、同じAPS-C機ということでRICOH GRシリーズのモノクローム専用モデルへの期待が高まった。だが、センサーの流用はできないとのアナウンスで多くのファンが落胆。それでも希望を持ち続けた。そして約6年半ぶりのモデルチェンジとなったGR4が発売されてすぐ、GR4Mの開発が発表された。

GR4が20万円近くするため、モノクロームは30万円くらいになるのではと思ったが、実際には28万円前後と予想よりは安かった。もちろん「白黒写真しか撮れないのに!」と考えれば、カラー写真も撮れるGR4の方がお得と感じる人もいるだろう。それもあってか抽選販売では「素」のⅣよりも当選しやすいようで、私の周りでは手に入れる人が着実に増えている。 Ⅳ型ではなく、待ってましたとGR4Mを選ぶ人も少なくないのだ。

外観や機能面でモノクロームの世界観を演出

画像: 空や海の大半は白トビしているが、強い粒状感によりあたかもディテールが残っているように見える。銀塩プリントの粒子のようでもあり、逆光の空や海面の反射など、ダイナミックレンジに収まり切れないような光線状態で威力を発揮する。 ■絞り優先AE(F4.5 1/320秒) ISO320 イメージコントロール:グレイニー 赤色フィルター:オン

空や海の大半は白トビしているが、強い粒状感によりあたかもディテールが残っているように見える。銀塩プリントの粒子のようでもあり、逆光の空や海面の反射など、ダイナミックレンジに収まり切れないような光線状態で威力を発揮する。
■絞り優先AE(F4.5 1/320秒) ISO320 イメージコントロール:グレイニー 赤色フィルター:オン

"RICOH GR Ⅲ"から高められた速写性や携行性などについてはRICOH GR Ⅳのインプレッションを参照していただきたい。今回はGR4との違い、そして一番気になる画質面を中心にその魅力を探ってみよう。

画像1: 外観や機能面でモノクロームの世界観を演出

RICOH GR Ⅳ Monochrome(上)とRICOH GR Ⅳ(下)。大きさや重さはGR4と全く同じ。遠目では両者の分別は難しい。外装はザラザラした質感でやや光沢のあるGR4とは違い、GR4Mはきめが細かくて平滑性があるシックなマットブラック仕上げになっている。

見た目はもちろん手触りも異なる。正面の"GR"のロゴタイプはグレーではなくブラックで、電源ランプやアクセスランプも緑ではなく白く点灯。このあたりの差別化はPENTAX K-3 Mark ⅢとPENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochromeでも見られたが、モノクローム専用モデルとしての世界観を演出するこだわりが感じられる。

画像: RICOH GR Ⅳ Monochrome(左)とRICOH GR Ⅳ(右)。

RICOH GR Ⅳ Monochrome(左)とRICOH GR Ⅳ(右)。

GR4の派生モデルとして、今年1月に"RICOH GR Ⅳ HDF"が発売になった。GR4には2段分のNDフィルターがレンズユニットに内蔵されているが、その代わりにRICOH GR Ⅳ HDFは特殊効果フィルターの"HDF"(Highlight Diffusion Filter)、GR4Mは赤色フィルターを搭載している。

HDFはハイライトが拡散され、光がにじんでふんわり柔らかな仕上がりになる。これに対し、GR4Mの赤色フィルターはコントラストを高める効果がある。白黒表現ではイエロー、オレンジ、レッドなどのモノクロ撮影用フィルターをレンズに取り付ける技法があり、NDやHDFではなく赤色フィルターを選んだあたりはさすがだと思った。

画像2: 外観や機能面でモノクロームの世界観を演出

GR4Mの背面の[Fn]ボタンのところに[Red Filter]と書かれていて、その機能が割り当てられている。またGR4のようにNDフィルターがないため、最高1/16,000秒の電子シャッター機能を追加。絞り開放や高感度ノイズを生かした撮影などで有効だ。十字キーの下ボタンはホワイトバランス(WB)ではなくイメージコントロールに変更されている。GR4のAF補助光は緑だが、赤色フィルターをオンにすると機能しないため、GR4Mでは光の波長が異なる赤いランプになっている。

モノクローム専用CMOSセンサーの優位性

画像: パッと見た感じ[HDR調]っぽくない仕上がりだが、海面が暗く沈んで深みが出るなど予想外の結果が得られた。[ハイコントラスト]や[グレイニー]より普通で好印象。[ソリッド]でも軟調に感じる場合は、カメラ内RAW現像で試してみると良いだろう。 ■絞りF5.6 1/640秒 ISO320 イメージコントロール:HDR調 赤色フィルター:オン

パッと見た感じ[HDR調]っぽくない仕上がりだが、海面が暗く沈んで深みが出るなど予想外の結果が得られた。[ハイコントラスト]や[グレイニー]より普通で好印象。[ソリッド]でも軟調に感じる場合は、カメラ内RAW現像で試してみると良いだろう。
■絞りF5.6 1/640秒 ISO320 イメージコントロール:HDR調 赤色フィルター:オン

約2574万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーは、GR4のベイヤー配列のカラー用ではなく、GR4Mは文字通りモノクローム専用となっている。モノクローム専用CMOSセンサーの優位性については、「PENTAX official site」での連載「しろくろかめら」の第9回でPENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochromeを例に解説しているのでぜひ参考にしてほしい。

GR4の標準感度はISO 100だが、モノクローム専用CMOSセンサーはカラーフィルターがないぶん受光量が増すため、GR4MはISO 160になっている。とはいえ、モノクローム専用CMOSセンサーの特性を生かした画像処理が行われ、GR4より高感度特性は優れている。

たしかにGR4Mの方がノイズが少なく粒状感は抑えられ、階調豊かでグラデーションは美しく滑らか。繊細な線も丁寧に描かれ、輪郭も自然である。GR4のイメージコントロールの[モノトーン]など、カラー画像から色を取り除いたモノクロ画像とは別次元のクオリティだ。クリアでシャープ、鮮明かつ上質な画像が得られるが、パソコンなどの液晶画面では原寸(100%)表示でようやく違いが分かるレベルである。プリント表現にこだわるユーザーには魅力的だが、SNSなどインターネットで公開し、パソコンやスマートフォンの液晶画面で見たり見せたりするのがメインであればメリットはほとんど感じられないだろう。

RICOH GR Ⅳ Monochrome vs PENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochrome(+HD PENTAX-DA 16-50mm F2.8ED PLM AW)

画像: RICOH GR Ⅳ Monochrome vs PENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochrome(+HD PENTAX-DA 16-50mm F2.8ED PLM AW)

左がGR4M。両者の画質はとてもよく似ている。どちらも輪郭が自然に描かれ、階調豊かで、空のグラデーションも非常に滑らかに再現。解像力は画面の中央部では甲乙つけがたいが、周辺部はレンズ一体型のGR4Mのほうがより高めである。隅々までシャープで安定感のある描写だ。

RICOH GR Ⅳ Monochrome vs RICOH GR Ⅳ 解像

画像: RICOH GR Ⅳ Monochrome vs RICOH GR Ⅳ 解像

GR4の[モノトーン](左)と、GR4Mの[スタンダード](赤色フィルター:オフ)で撮影した画像をパソコンで開き、原寸(100%)表示したものをスクリーンショットで切り出した。GR4Mのほうが高精細で、輪郭やディテールが自然かつ緻密に描かれている。GR4は細部の描写がやや曖昧で、輪郭など境界線に薄ら白い縁取りが見られるが、原寸表示で見たり見せたり、プリントしないのなら全く問題ない。

RICOH GR Ⅳ Monochrome(左) vs RICOH GR Ⅳ 
ISO25600

画像: RICOH GR Ⅳ Monochrome(左) vs RICOH GR Ⅳ ISO25600

ISO204800

画像: ISO204800

ISO感度はISO100~204800のGR4に対し、GR4MはISO160~409600の範囲で設定可能。ISO感度を上げるほど粗い画質になるが、GR4Mのほうが圧倒的に粒状感が少ない。しかもノイズはエッジが効いた粒子といった感じ。描写が甘くならず、むしろシャープだ。GR4の最高感度のISO204800でも、GR4Mは非常にクリアかつ鮮明である。また、画像は掲載していないがPENTAX K-3 Mark Ⅲ MonochromeはISO 25600以上だと格子模様が出て、絵柄によっては気になることもあるが、ISO409600まで上げてもGR4Mではそのような現象は見られなかった。超高感度でも積極的に撮影でき、これは大きなアドバンテージだ。

GRのイメージコントロール

RICOH GR Ⅳ

画像: RICOH GR Ⅳ

GR4のモノクローム系のイメージコントロールは[モノトーン](左上)[ソフトモノトーン](右上)[ハードモノトーン](左下)[ハイコントラスト白黒](右下)の4種類。このほかにカラー系の10種類が選べる。

RICOH GR Ⅳ Monochrome

画像1: RICOH GR Ⅳ Monochrome
画像2: RICOH GR Ⅳ Monochrome

GR4Mは上段左から[スタンダード][ソリッド][ソフト](下段左から)[ハイコントラスト][グレイニー][HDR調]の6種類。ちなみに、PENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochromeのカスタムイメージは[スタンダード][ハード][ソフト]の3種類で、デジタルフィルターに[ハイコントラスト][粒状感モノクローム]などが用意されている。

イメージコントロールは今後のファームアップで追加されると思うが、[ハイコントラスト][グレイニー][HDR調]は個性が強めであるため被写体やシーンなどを選ぶ傾向。SNSなどインターネットで公開し、液晶画面で見せるぶんには大いに楽しめるが、プリント表現においては[スタンダード][ソリッド][ソフト]を使い分けるのが無難。個人的にもそのほうがしっくりくる。

私の場合、撮影時は[スタンダード]で、ヒストグラムを確認しながらダイナミックレンジに収まるように構図や露出を整え、後からカメラ内RAW現像でイメージコントロールを選び直したり、パラメーターを微調整するなど最適な設定を吟味する。覆い焼きや焼き込みなど部分的な調整が必要なときはパソコンで行う感じだ。

全く同じではないが、RICOH GR Ⅳの[モノトーン]とRICOH GR Ⅳ Monochromeの[スタンダード]、RICOH GR Ⅳの[ソフトモノトーン]とRICOH GR Ⅳ Monochromeの[ソフト]、RICOH GR Ⅳの[ハイコントラスト白黒]とRICOH GR Ⅳ Monochromeの[ハイコントラスト]はよく似た調子である。RICOH GR Ⅳ Monochromeで特徴的なイメージコントロールは[ソリッド]と[グレイニー]の2つだ。ユーザーもソリッド派とグレイニー派に分かれるだろう。ちなみに私はソリッド派で、[スタンダード]との使い分けが楽しめそう。

●スタンダード(左)とソリッド

画像: ●スタンダード(左)とソリッド

イメージコントロールの[ソリッド]は[スタンダード]よりも硬調になる。階調豊かでシャドウの深みが増し、黒が引き締まって輪郭が際立つ。抜けが良くすっきりした感じになり、誇張しすぎない範囲で見映えも良くなる。[ソリッド]と赤色フィルターの組み合わせで普段使いするのも良いだろう。ストレートに印刷しても満足度の高いプリントに仕上がる。

●ハイコントラスト(左)とグレイニー

画像: ●ハイコントラスト(左)とグレイニー

イメージコントロールの[グレイニー]はハイコントラストで強い粒状感。ハイライトが飛んだり、シャドウがつぶれやすい[ハイコントラスト]とは違い、ざらつきによりハイライトは白く飛ばさず、シャドウも黒くつぶさずといった効果が得られる。銀塩プリントのような仕上がりになるそうだが、被写体やシーンによっては思いのほか絵画的にも感じられる。被写体の輪郭など境界線の白い縁取りも気になるが、SNSなどインターネットで公開するぶんにはあまり神経質にならなくても良さそうだ。

なにはともあれプリントを見る! 自分の眼で見ること!

画像: シャープかつパンチの効いた仕上がり。[グレイニー]ほどではないが粒状感があり、高感度フィルムで撮影したような味わいも楽しめる。空と建物の境界線などエッジは強調されすぎず、RICOH GR Ⅳの[ハイコントラスト白黒]より安心感がある。 ■絞りF5 1/400秒 ISO160 ※イメージコントロール:ハイコントラスト ※赤色フィルター:オン

シャープかつパンチの効いた仕上がり。[グレイニー]ほどではないが粒状感があり、高感度フィルムで撮影したような味わいも楽しめる。空と建物の境界線などエッジは強調されすぎず、RICOH GR Ⅳの[ハイコントラスト白黒]より安心感がある。
■絞りF5 1/400秒 ISO160 ※イメージコントロール:ハイコントラスト ※赤色フィルター:オン

画像: 明暗差が極端であるため、ハイライトやシャドウはダイナミックレンジからはみ出している。でも粒状感をプラスすることで白トビと黒つぶれをうまくカバー。ハイコントラストだが雰囲気のある仕上がりになった。ただ窓枠の一部で輪郭の不自然さも見られる。 ■絞りF2.8 1/30秒 ISO400 ※イメージコントロール:グレイニー ※赤色フィルター:オン

明暗差が極端であるため、ハイライトやシャドウはダイナミックレンジからはみ出している。でも粒状感をプラスすることで白トビと黒つぶれをうまくカバー。ハイコントラストだが雰囲気のある仕上がりになった。ただ窓枠の一部で輪郭の不自然さも見られる。
■絞りF2.8 1/30秒 ISO400 ※イメージコントロール:グレイニー ※赤色フィルター:オン

RICOH GR Ⅳ Monochromeで撮影した白黒写真(プリント)を一度見てしまうと、[モノトーン]などRICOH GR Ⅳのモノクローム系のイメージコントロールではもの足りなくなる。RICOH GRシリーズに限らず、ほかのデジタルカメラのカラー画像からのモノクロ化でも同じだ。プリント表現にこだわるユーザーは、インターネットで公開されている画像だけで良し悪しを判断するのではなく(このインプレッションを含む)、実際に試せる機会を見つけて自分の目で確かめてみてほしい。

とはいえカラーでも撮りたい欲求も捨てきれない。となるとRICOH GR ⅣとRICOH GR Ⅳ Monochromeの2台持ちとなる。フィルムカメラ全盛の時代は1台にカラーフィルム、もう1台にモノクロフィルムを装填し撮り分けていたものだが、まさにそのような感じ。ところが両者の外装の違いは前述の通りだが、撮影中に瞬時に判別するのは難しい。

そこで「cooca」さんに色違いのネックストラップを制作してもらい、併用しても見分けられるようにした。色違いのサムレストやメタルリングを装着するのも有効だろう。

「モノクロ専用機」を望む声がどこまで高まるのか?

画像: モノクローム専用CMOSセンサーとGRレンズのタッグは最強だ。階調豊かで深みのあるモノクロ表現が簡単に手に入れられる。画面の隅々まで見どころ満載といった感じで、大きく引き伸ばしても見応えのあるプリントに仕上がりそう。 ■絞り優先AE(F4 1/250秒) ISO160 ※イメージコントロール:ソリッド ※赤色フィルター:オン

モノクローム専用CMOSセンサーとGRレンズのタッグは最強だ。階調豊かで深みのあるモノクロ表現が簡単に手に入れられる。画面の隅々まで見どころ満載といった感じで、大きく引き伸ばしても見応えのあるプリントに仕上がりそう。
■絞り優先AE(F4 1/250秒) ISO160 ※イメージコントロール:ソリッド ※赤色フィルター:オン

準広角の40mm相当のRICOH GR Ⅲxのように、RICOH GR Ⅳxもいずれ登場するはずだ。そうなるとRICOH GR Ⅳx Monochromeへの期待も高まる。その鍵を握るのはRICOH GR Ⅳ Monochromの市場での評価となるだろう。

気がつけばPENTAX K-3 Mark Ⅲ Monochromeは生産終了。フルサイズコンパクトのモノクロ専用モデル「ライカ Q3モノクローム」もあるが、販売価格が約4分の1のRICOH GR Ⅳ MonochromはRICOH GR Ⅳの機動力をそのままに、白黒写真表現を本格的に楽しみたいユーザーにとって手ごろな1台と言える。

画像: [スタンダード]でもハイコントラストに仕上がる逆光シーン。[ソフト]でちょうど良い調子になった。太陽はギリギリまで白飛びを避け、橋は黒くつぶれず階調を残している。橋のラインは真っ直ぐに描かれ、輪郭も縁取りなど不自然さは全く見られない。 ■絞りF5.6 1/2000秒 ISO320 ※イメージコントロール:ソフト ※赤色フィルター:オン

[スタンダード]でもハイコントラストに仕上がる逆光シーン。[ソフト]でちょうど良い調子になった。太陽はギリギリまで白飛びを避け、橋は黒くつぶれず階調を残している。橋のラインは真っ直ぐに描かれ、輪郭も縁取りなど不自然さは全く見られない。
■絞りF5.6 1/2000秒 ISO320 ※イメージコントロール:ソフト ※赤色フィルター:オン

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