撮影共通データ:■ニコンZ5Ⅱ 絞り優先AE WB:オート
赤城耕一
東京都三鷹市生まれ、高齢初心者。東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。戦前のライカから最新デジタルカメラまで、あれこれ食べ散らかしている。ただし、特定のメーカーのカメラだけでは満足できない浮気性ゆえ、機材の評価に忖度はない(はず)。2024年から日本作例写真家協会会長を拝命、不遇な機材レビューワー写真家の待遇改善と社会的地位の向上を目指している。著作「フィルムカメラ放蕩記」(平凡社)「アカギカメラ -偏愛だっていいじゃない-」(インプレス)など多数。
コシナ Voigtlander SEPTON 40mm F2 Aspherical 主な仕様
ネーミングは往年のレンズシャッター用から拝借。

SEPTON名はレンズ前面にエングレーブされています。ブランドというより、名の響きが愛称みたいでいいですね。さて、今後もSEPTON名のレンズが出てくるのでしょうか?
この名を冠した新しい単焦点標準レンズが「SEPTON 40mmF2 Aspherical」であります。製品名である「SEPTON」は、1950年代末から1960年代にかけて発売されたレンズシャッターの一眼レフカメラ「ベッサマチック」および「ウルトラマチック」用に開発された標準レンズに由来しているそうです。勉強になりました。レンズシャッター用のレンズまではさすがにノーマークだったので…。

鏡筒は金属製。仕上げはお見事。絞り環や距離指標表示も綺麗です。純正のAFレンズにはできないMFレンズならではの特徴を生かしていますね。
本レンズは6枚構成の「オルソメター」タイプをベースに、非球面レンズ1枚を加えた6群7枚構成を採用しています。小型化と低歪曲収差を維持しながら、F2の明るさを実現したというのがコシナからのアナウンス。

同梱されるドーム型フード装着の図。全長を長くしないようにという配慮ですね。フードをしては目立たないので、このレンズを主張したい人は、サードパーティ製の大きめのものを選択するといいかもしれません。あるいはコシナがドーンとしたものを作ってくれるとか…。
オルソメターは対称型の構成のため、歪曲収差、コマ収差、倍率色収差の補正に優れるとされます。1926年にカールツァイスのウィリー・ウォルター・メルテが設計したオルソメターから、このレンズタイプが生まれています。
コンパクトカメラでの「王道」とされた40mm画角。

合焦点のシャープネスはとてもいい感じですね。F4あたりの描写でスキがなくなります。
■絞りF4 1/4000秒 ISO100
35mmフルサイズでの40mmという焦点距離のレンズは、過去にはフィルムコンパクトカメラに多く採用されました。これは記念写真、記録写真などに使いやすい画角であること、50mmよりも被写界深度が深く、ビギナーが撮影しても失敗が少ないからだという理由を聞いたことがあります。
後にミノルタから、ライカMマウント互換のレンジファインダー機=ライツミノルタCL=用として、ライカMマウントのMロッコール40mmF2が用意されますが、筆者の認識では、この時に40mmはコンパクトカメラ用のレンズだという概念から外れ、独自の存在が注目されるようになったように思います。
当たり前のことですが、広角35mmと標準50mmの中間の画角ですから、旅行やスナップにも向いています。主題のほか、周囲の状況を程よく取り込めるという特性があります、準広角、準標準レンズとしての役割を担いますが、絞り込めば50mm標準レンズよりも被写界深度は深くなりますし、絞りを開けばそれなりのボケが期待できます。ということで中途半端な画角と言われることもあるのですが、現在は多くのメーカーが単焦点の40mmの交換レンズをラインアップしていますから、けっこう人気の焦点距離のようです。

最短撮影距離、絞り開放です。合焦点は特別にシャープではありませんが、ボケもクセがなく自然な雰囲気を感じる描写です。
■絞りF2 1/320秒 ISO400
フォクトレンダーブランドのレンズでも40mmという焦点距離、開放Fナンバーが同じスペックのレンズとして、ULTRON 40mm F2 Aspherical SL Ⅱs、NOKTON 40mmF2がありますが、前者は一眼レフ用として、後者はレンジファインダー用のレンズとして用意されました。
本レンズでは銘玉として知られた「ULTRON 40mm F2 Aspherical SL Ⅱs」の6枚構成に1枚レンズを加え、さらに光学性能を向上させているとのこと。しかも当然ながら35mmフルサイズのラーレス機用に特化したものとして設計されているのが特徴です。
本レンズはいわゆる「パンケーキタイプ」とされていますが、筆者の“パンケーキ”の定義からみると、それよりも少々全長は長く感じます。現時点ではソニーEマウントとニコンZマウントがラインアップされていますが、それぞれのセンサーの特性に合わせてチューンされており、これはもうコシナのお家芸みたいなものです。
フォルムは、どちらかというと「Fマウント」に寄せていませんか?

点光源を撮影してみました。描写は周辺域ではやや乱れますが、実用上は問題のない描写です。
■絞りF2 1/125秒 ISO400
今回はZマウント用をニコンZ5Ⅱに装着して試用してみました。フォーカスリングのローレットはニコンFマウント時代の単焦点レンズのそれを意識した感じに見えます。
個人的には見た目も指がかりもいいので実用上の文句はありませんが、すでにニコンではZがボディのメインになっていますので、必要以上のFマウントレンズのデザインこだわりは不要になってきているようにも思えます。もちろんこのあたりは好みの問題です。

光の乏しい路地裏ですが、よい感じで階調を繋いでくれます。モノクロの描写にも期待できるでしょう。■絞りF5.6 1/200秒 ISO400
マニュアルフォーカスレンズですからフォーカスリングのロータリーフィーリングは過剰なほど気が使われ、その動きで指が心地よく感じるほどです。当然、鏡筒には距離指標、被写界深度指標もありますので昨今のミラーレス用のAFレンズのように寂しくはありません。
絞り環はレンズ先端にありますので、フォーカスリングに近くなりますが、回しづらいということもありませんでした。電磁絞りではありませんから、露出は絞り優先AEかマニュアルで決めることになりますので絞り環の操作は多くなるでしょう。
性能向上のための絞り込みは不要。そこはコシナですから。

絞り込むと周辺域まできっちりとした描写です。コントラストも高くなります。
■絞りF8 1/1250秒 ISO400
絞り込むと被写界深度は深くなりますから、日中晴天などの撮影時には、目測撮影で十分ですが、絞りを開けて撮影したい、至近距離で撮影したいという場合は、カメラ側の表示設定で画像を拡大表示しフォーカスを追い込んだほうが、本レンズのポテンシャルは引き出しやすいでしょう。
描写性能はいずれの絞りでも優秀ですが、開放絞り、特に至近距離ではとくに軟らかい調子でハイライト部分はごくわずかに滲みます。とはいえ合焦部を拡大しますとフォーカスの芯は確認できますので、像の立ち方はしっかりしています。

この時期の代表的な花である山茶花です。曇天、絞り開放、至近距離撮影です。合焦点は軟らかく、背景のハイライト部分やエッジのボケは個性的ですね。
■絞りF2 1/1250秒 ISO400
絞り込むにつれて均質性が増してゆきますが、性能向上のための絞り込みは不要です。個人的にはシャープネスとボケのバランスを見るには、絞り開放からF4あたりの間で本レンズの特性は最も引き出されるのではないかと考えています。
携行性に優れたレンズですから、常用の標準ズームレンズと焦点距離が重複したとしても、バッグのサイドポケットに忍ばせておくだけで「ここぞというとき」、ズームとは異なる良い仕事をしてくれるレンだと思います。




