※撮影共通データ:■パナソニック LUMIX S1RⅡ 絞り優先AE WB:オート
■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
パナソニック LUMIX S 100-500mmF5-7.1 O.I.S. 主な仕様

●焦点距離:100-500mm
●最短撮影距離:0.80m(W) / 1.50m(T)
●最大撮影倍率:0.16倍(W) / 0.36倍(T)
●レンズ構成:12群19枚
●最小絞り:F29-40
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:82mm
●大きさ・重さ:φ92.0×196.1mm・約1285g
●付属品:フード・三脚座
超望遠域ゆえに、LUMIX純正には期待が高まる!
フード装着状態での全長(マウント基準面まで)は手計測で約260mm、テレ端時には約340mm。レンズ単体で前後にレンズキャップを装着した状態では220mm弱だった。フードの最大径は103mmなので、カメラバッグ選定の参考にして欲しい。
肝心のAFアクチュエータには、新型のデュアルフェイズリニアモータを採用する。従来比で約3倍のパワーを持つとアピールされているので、テストするのが楽しみであった。またリニアモータではギアなど使用せず推進力を直接レンズに伝達できるので、高速かつ静粛性に優れている。
本レンズはテレコンにも対応するが、ズーム位置は150mm以降という制約がある。この点だけ注意が必要なので、テレコン使用時には鏡筒の付け根にあるズームリミットスイッチを利用したい。
2倍テレコンと組み合わせも含めて、LUMIX純正レンズで14mmから1000mmまでの領域をカバーできるようになった。とはいえ他社と比べて純正レンズの守備範囲はまだ発展途上にあり、シグマがLマウントレンズの核として引き続き存在感を放つこととなるが、超望遠領域でボディの性能を100%発揮できる純正レンズが登場した意義はとても大きい。
鏡筒の剛性感は上々。テレ端でもガタツキがなく安心感があり、三脚座の固定や回転もスムースだ。
操作トルク可変仕様のズームリングは操作感も悪くない。SMOOTHの「TH」から1cmほどタイト側にしておけば、自重で伸び縮みせず、絶妙な設定と感じた。が、撮影していると意図せず指が触れてしまうのか、可変リングがいつの間にか動いていたので、好みの設定が決まればパーマセルなどで固定したくなった。
ズームリングの回転角は、筆者にはやや広め。例えば、ファインダーを覗きながら一気にテレ端に、というシーンでは扱い難かった。が、これはあくまで好みの問題でもある。また、レンズ側のFnボタンは1つしかなく、正直これでは足りない。
AFはレスポンスが素晴らしく好印象。ボディとレンズの協調制御である「Dual I.S. 2(テレ端で最大約7段!!)」の手ブレ補正効果も抜群で、500mmでもピタリと安定するので気分が良い。しかも1日中撮影したあとの疲労状態でも安定感に陰りは無く、大変に素晴らしい。AFと手ブレ補正についてはシグマ100-400mmを明確に凌駕し、「さすがは純正である」という高い満足感があった。
正直に言います。不調でした。
今回組み合わせたのはS1RⅡ。実写前の印象が良かったので期待は大きかったが、結果は散々だった…。

レンズ性能とは違うのだけど、鳥認識の実力はソニーと比べちゃ駄目だとは思いました。控えめに言ってもα7C Ⅱの方がかなり上だな。超望遠レンズが登場すると、システムとしての実力が問われるからね。
■絞りF7.1 1/6405秒 プラス2.0露出補正 ISO3200
試用中、もっとも不満だったのはボディ側のAF性能不足。トラッキングや被写体検出させる設定では、日中でも対象が日陰になると途端に挙動が怪しくなる。そういった状況で被写体をロストしてしまうと、ボケた状態で固まってしまいがち。
画面内の整頓ができていて被写体の周囲がクリアな状況では問題ないけれど、それでもEV8あたりから特にテレ側でのAF動作が快適ではない。トラッキングや被写体認識を用いないAF設定では程度が良くなるけれど、それでもキヤノンやニコン、ソニーのAF性能を経験していると想像や期待よりずっと早く音を上げるAF性能の限界には戸惑ってしまう。簡単に言えば、他社機で苦もなくできることが、LUMIXでは出来ないのだ。

500mm時。とりあえず、と思ってテレ端で遠景撮ってみたら、EVFで見てても不安になる感じ。撮影画像を背面モニタでチェックしたところ、ゆるっゆる。急遽、重チェックに。純正かつ実売30万円に迫ろうかという製品で、この体たらくは好ましくないよね。
■絞りF7.1 1/640秒 ISO200
他にも撮影距離200m以上でビルを撮ると高確率でピントが甘い。遠距離でタイルなどの高周波成分を含んだ規則的なパターンがAF位置にあると、ピント精度は目に見えて悪化した。テレ端かつ絞り開放では目立って描写が緩くなるが、その片棒を担いでいるのはAFだろう。
というのも、同様の症状をシグマ100-400mmとXシリーズの組み合わせで経験し、その際にはファームアップで改善があった。なので「犯人は高周波成分に対するAF(ピント精度)だろう」と推測し、AF-Cで連写して程度を探ってみたところ、500mm時では大体10%くらいのヒット率でソコソコ緩くない絵が撮れた。

同じく500mm。遠距離でのヘボさからすると想像できないくらい近距離ではキレがある。だけど約5mくらい離れるともう怪しさが出てくる。どうってことないシーンでAFが迷ったり、絵が緩いのを高解像のEVFで見ているのはホント楽しくない。
■絞りF5 1/125秒 プラス0.3露出補正 ISO200
描写性能について。250mmまでは切れ味のある素晴らしい描写力に唸らされたが、それ以降の領域では(撮影距離3m以内の条件ではそれほど気にならなかった)、特に30m以上の撮影距離での絵の緩さが気になった。絵の緩さはピント精度が主原因とは思うが、F10より絞りを開けた状態ではガチガチにピントを合わせても、この価格帯の製品として納得できる実力か? と問われると、個人的には否だ。仮に、自分が購入したレンズがこの個体だったら? と考えると気が重くなった。
たとえ個体差を割り引いても、他社比では分が悪いかと…。

被写体認識やトラッキングを使わなければ、不満のない限界の照度がこの辺。近接性が高いので、室内でも超望遠レンズを使えると、背景の写り込みを整理できるから楽しさ倍増。手ブレ補正が強力なこともあって、本当にとてもいい感じ。超望遠の可能性を広げる撮影を楽しめるってのは良いよね
■絞りF8 1/100秒 ISO500
念の為、登場時の紹介記事を担当した編集部の根本氏が撮影した画像を確認させてもらったところ、明らかにクリアで本レンズとは別モノの感。さらにWebを徘徊して画像をチェックしたところ、いくつかの作例では本レンズ同様の緩さがあった。ということで、個体差もしくはレンズ不調の可能性を否定できません。
仮にレンズ性能が本調子だったとしても、カメラ側のAF性能の低さ(暗所や低コントラスト限界が低い)とレンズの開放Fが暗いことによる合せ技で、快適に使えるシーンが最新のハイエンド機種としてはかなり限定的。日中日向であれば問題ないけれど、冬の日陰や薄暮だとトラッキングや被写体認識は期待通りに動作しないので、ある程度の工夫が必要になりそう。これは「撮って撮れないことは無いけれど、少なくとも他社機と比べて快適じゃないぞ」という意味です。
今回試用したS1RⅡは、PDAF(像面位相差AF)の第1.5世代機に当たると考えていますが、その点に注目すれば「登場から僅かな時間で良くぞココまで!」と称賛したい気持ちがあります。だけど、他社機はその遥か先のレベルにあるという現実を、同時に見つめる必要があります。

ワイド側は、お世辞抜きで素晴らしい写りですねぇ…。今回の個体は300mmくらいから話になりませんでしたけれどね。
■絞りF11 1/125秒 マイナス0.7露出補正 ISO250
当然、開発側もそういった現実を正しく理解しているとは思うので、「現状のLUMIXの、システムとしての超望遠に対する適性の低さ」 が、本レンズによって否応なしに表出してしまう可能性を考慮した上で、それでもブランドにとってメリットがあると判断し製品化したのだろうとは思います。
それは「LUMIXは本気だぞ!」という所信表明のようでもあり、今後に対して大きな期待を感じさせてくれる姿勢でもあります。
ということで、このレンズの真の実力を解き放ってくれるボディの登場に期待しましょう。ニコンのZという前例が物語るように、エンジンが刷新されないことには根本的な解決とはならないと思います。
本調子ではなかった描写力について。

F11まで絞ってコレ。お値段1/3の(キヤノン)RF100-400mm F5.6-8 IS USMとかの方が断然シャープだしAF精度良いのよ。これじゃ話にならんのよ。
■絞りF11 1/640秒 ISO500
昨今のミラーレス化以降のレンズでは、ほぼ全数検品と言っても過言ではないレベルで品質管理がなされています。さらに、レンズの敏感度を下げる工夫を設計でも盛り込んでいたり。そういった取り組みによって製造上の歩留まり改善と、超の付く精密機器にも関わらず衝撃にも強いタフさを持ち、トータルとして安定した性能を提供してくれています。
なので、一眼レフ時代のようなビックリするようなハズレ個体と遭遇したり「なんだか最近画質が悪くなったぞ」みたいな状況になるのはレアケース。それでも、確率的にどうしても発生し得ることだけど、それに当たっちゃうとイメージは良くないよね。
実はこれが初めてのことではないので、今回はソックリそのままの状態でインプレを行いました。そういう事があると知れば、当たっちゃった場合に「ハズレか?」という気付きにより修理などの対応ができると思います。それで対応に納得ができれば信用に変わりますし、逆に 「当社基準内」 って言われちゃったら「御縁が無かった、これも勉強」と思って整理整頓しましょう。
ともあれ、他社のシステムと比べてパフォーマンスが良くないので、超望遠の撮影を現状のLUMIXでやるのは「歌舞いてるね!」って感じ。思い通りに撮れるようになれれば、相当なレベルアップができていると思うので、やっぱり欲しいという気持ちを持っているなら応援します。








