大門美奈氏プロフィール
横浜出身、茅ヶ崎在住。作家活動のほかアパレルブランド等とのコラボレーション、カメラメーカー・ショップ主催の講座・イベント等の講師、雑誌・WEBマガジンなどへの寄稿等、精力的に活動。個展・グループ展多数開催。
撮影共通データ
■ライカ SL3-S WB:オート
シグマ 35mm F1.2 DG Ⅱ | Art 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算35mm相当
●最短撮影距離:0.28m
●最大撮影倍率:1:5.3
●レンズ構成:13群17枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:72mm
●大きさ・重さ:φ81×111,4mm・755g(Lマウント)
●付属品:フード ポーチ
絞り開放でスナップしたくなる、「えげつなさ100%」のアートレンズ
時はコロナ禍、光量の限られる室内専用レンズとして大いに活躍したシグマ35mm F1.2 DG DN | Art(生産完了品)。私が室内専用としていたのは、当時の世情ということもあったが、いちばんの理由はやはりそのサイズと質量である。
描写に関しては無論いうことなしで、当時私はこのレンズを「ニューワールド」と表現していたようだ。
@damonmina post on X
x.comそしてこの度Ⅱ型となって、より高い光学性能を得ながらも約30%の軽量化という大幅なサイズダウンを実現。これはもう、期待が高まるというものである。
Ⅰ型と比較してみるとそのサイズの違いは一目瞭然。口径は82mmから72mmに、また質量は1090gから755gへ、そして全長は約20.5mmも縮小(いずれもLマウント)したというのであれば、これはもう街中に持ち出してみようかという気にもなるもの。早速、秋の風が吹き始めた9月、新宿へスナップをしに出かけることにした。
動ける、寄れる、そしてなにより…描写に後悔ナシ!

■絞りF1.2 1/2500秒 ISO100
仕事で関わったホテルのテラスで一枚。そこそこ飲んだ翌朝、なんとなく撮ったものだが、絞り開放でこの写りを目にしたら一気に目も冴えるというもの。ガラス製ではなくプラスチックのカップだが、そうとは思えぬ佇まいだ。

■絞りF5 1/60秒 ISO800
どうにも餃子が食べたくなったので通りがかった餃子専門店へ。早速出てきた餃子にレンズを向けると違和感。「ここまで近寄れなかったはず」と 仕様を確認すると最短撮影距離も30cmから28cmへ短縮。 このレンズをテーブルフォトに使用するにはそれなりの存在感は意識せざる得ないものの、俄然楽しみが広がるのではないか。

■絞りF1.2 1/500秒 ISO100
最短撮影距離が2cmも短縮されたのであれば、この時期見頃のアレもマクロ的に撮れるのではないかと都心の花壇に群生していた彼岸花を撮影。モニターを確認して思わず口に出た「うわ、えげつな…」という言葉。ピント面がシャープというより、艶やさすら感じる域に達しているのである。

■絞りF2.8 1/1250秒 ISO100
正直なところすべて絞り開放で撮りたいところだが、天気も良いことだし、と 少々絞って撮影。通りすがりに撮ったものだがビタっと合う。ピント性能も非常に良好である。この立体感だけでもシグマ公式ページにある「この6年で積み重ねた最新技術を惜しみなく投入」という言葉に賭けた凄みが感じられる。

■絞りF1.8 1/5000秒 ISO100
逆光でのこの髪の表現を見てほしい。近距離で撮影しているが、手触りすら感じられそうなほどの描写ではないか。つい周囲の人に見せびらかしたくなってしまうほどだ。

■絞りF11 1/60秒 ISO1000
F11まで絞って撮影してみたが、このレンズのえげつなさは当然開放寄りだけではない。この線の細さの表現には、なにやら視神経を直撃するものがある。

■絞りF1.2 1/60秒 ISO400
夜こそF1.2の明るさを試す絶好のチャンス。ちょうど祭りを開催していた夜の荒木町へ。ほのかな提灯のあかりという条件でも質感の違いを描き分けるのは、もう「さすが」としか言いようがない。
日常的に使用するには、正直なところまだ大きいと感じることもある。今回のレビューで使用したカメラボディ=ライカSL3-Sに装着すると約1.5kgということもあって、一日中歩き回るのであれば、同じシグマでも35mm F1.4 DG DN |Art(Lマウントで645g)の方が使い勝手は良いだろう。
しかし、だ。ここまでレンズ性能を追求しつつダウンサイジング化を実現したことに、このレンズに賭けるメーカーとしての矜持すら感じられる。ぜひ、あらゆる場面で試してほしいアートレンズだ。