撮影共通データ
■パナソニック LUMIX S5 絞り優先AE WB:オート
■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
シグマ 20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporary 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算20-200mm相当
●最短撮影距離:16.5cm (焦点距離28mm時) 25cm(W)-65cm(T)
●最大撮影倍率:1:2(焦点距離28-85mm時)
●レンズ構成:14群18枚
●最小絞り:F22-40
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:72mm
●大きさ・重さ:φ77.2×115.5mm・550g(Lマウント)
●付属品:フード ポーチ
「強烈スペック」だけで終わらせないのがシグマさんなんですー。

20mmスタートを選んだのにはたくさんの理由があったかと思われるが、おそらくLUMIX S 20-60mmの存在が大きかったのでは? と邪推している。というのもパナの20-60mmは特異なスペックながらかなりコンパクトに仕上げられているからだ。

周辺光量補正を切るとこんな感じ。シーンによっては結構目立ちそうだから、補正入れるか撮り方考えるとかしたいかもね。四隅以外の解像性は大変にお見事。
■絞りF6.3 1/320秒 プラス0.7露出補正 ISO100 ※125mm時
本レンズの魅力はスペックだけではなく、AFモーターにHLA(いわゆるリニアモーター)を採用したことによる快適なAF性能も挙げられる。いくら便利なズームレンジであったりサイズ感を実現していてもAFが鈍重ではそのスペックを活かしきれない。さらに接写性も高く、最大撮影倍率0.5倍を実現していることも特筆事項だ。
Lマウント版のサイズは縮長で115.5mm(ズーム位置20mm時)。ちなみにフード装着状態では実測で約139mmだった。テレ端では同じくフード装着状態で約208mmなので、例えばLUMIX S PRO 70-200mmF2.8が収納できるバッグであればフードを装着してレンズを伸ばした状態でも楽に収納することができる。重さは540gなので、500mlのペットボトルに近いサイズ感というのも素晴らしい。

ズームロックスイッチが備わっているので、自重でズームが伸び縮みするのかな? と意地悪してみたが、かなり派手に振り回しても自重でズームが伸び縮みすることはなかった。ズームリングの操作感は重すぎず軽すぎず。全体的に質感は悪くない。
光学式の手ブレ補正機構は持たないが、Lマウント機の大多数はボディ側に手ブレ補正機構を持っているし、フルサイズのEマウント機もそれは当て嵌まることだ。が、シグマ謹製のカメラにはボディ側に手ブレ補正機構を持たないスパルタンな仕様を強いている現実がある。ということで今後「ひょっとして…?」という期待も高めておきたい。
まさか高倍率ズームのハードルをここまで上げてくるとは…。

結構イジワルしてパチリ。さすがに枝部分にはフリンジ出ていますが、後処理で簡単に補正できるレベルで優秀です。ボケがうるさかったり変にグルグルだったりってこともなくて素直でいい感じ。
■絞りF6.3 1/250秒 プラス3.3露出補正 ISO800 ※200mm時
結論から言えば、高倍率ズームの歴史を塗り替えるトンデモナイ1本だった。実写するまでは「20mmスタートだし、スペックの割には大きくないし、さすがに無理してんじゃね?」みたいに考えていたのだが、すぐにこのレンズに夢中になった。
高性能なズームレンズの評価に用いる「ズーム全域で解像感が高い」が当然のように当て嵌まるし、「撮影距離を問わず安定して高い結像性能」もクリアしている。そのうえでハチャメチャに寄れて、ボケも素直だ。

休憩中にスズメが寄ってきた。近接性能も高くて楽しいね。ほぼ至近端ですが、写りがイイねぇ…こんな写ると思ってなかったので感激です。
■絞りF6.3 1/500秒 プラス0.3露出補正 ISO800 ※200mm時
ワイド側の至近前後で対角方向に奥行きをつけた構図をとれば、流石に近距離側の周辺部で「それなり」な部分を見つけられるが、そんな意地悪をしたくなるくらいの光学性能を世界初のスペックを持つ超高倍率ズームレンズが持っていることに驚かされた。逆光耐性についてもかなり優秀で、味気ないくらい。夜景で高輝度LED光源を写し込んでみたが妙なゴーストはなかった。

明確な弱点らしいところがパッと出て来なくて、躍起になって探したけど試用程度じゃ見つけられませんでした。こりゃスゴイレンズだわ。高倍率ズームってことを忘れちゃう実力。
■絞りF6.3 1/250秒 プラス1.3露出補正 ISO100 ※150mm時
AFは爆速というわけではないが十分に快適なレスポンス。LUMIX S1やS5で試した限りの話となるが、MF時の操作感や反応も良い。周辺光量については補正ナシだとソコソコ落ちるが、この程度であれば補正ナシでも筆者的には全く問題ない。しかもボケ味も素直なので、ツッコミどころは性能の高さしかない。
と、ここで断言しましょう。歴史的な一本で間違いない!!

このレンズのためにボディ買って良いレベルだね。本レンズを目の当たりにした他社が、今後いったいどんなアクションを起こすのか、そういう事を想像してみると結構楽しい気持ち。
■絞りF8.0 1/320秒 マイナス0.7露出補正 ISO100 ※40mm時
これまでの超高倍率ズームには何かしら足りない部分があった。それは、レンズの明るさだったり接写性能だったり、開発時の取捨選択によって我慢せざるを得なかった特定条件でのウイークポイントといった部分だ。
よってシステムに組み込む際には相互補完できるような配置を考えたり、撮影に赴く際のモチベーションの方向を調整したり、といった気遣いが全く必要無いというわけではなく、便利さというアドバンテージを天秤に掛けた時にどうか? という視点を無視できるワケではなかった。
ところが本レンズでは我慢らしい我慢は「明るさ」だけと言っても過言ではないところまで性能が進化している。

AFのレスポンスが良いのも魅力。風で揺れる花を撮ってても全くストレスがない。このトータルバランスと商品性は、これまでの高倍率ズームを置き去りにしたと言っても過言じゃないです。タムロンの25-200mmとはキャラが違うから、Eマウントユーザーだと悩ましいね。
■絞りF7.1 1/200秒 マイナス0.7露出補正 ISO100 ※95mm時
超高倍率ズームの魅力として、これ1本で幅広いシーンに対応できる便利さに注目しがちだと思うけれど、1本であらゆる画角の特徴や楽しさを味わえるところについてもフォーカスしてほしいと考えている。
便利という枠に押し込んでしまうのではなく、焦点距離の特徴を知ることで、いつもとは見え方の違う世界を楽しんで、「あのスペックの単焦点レンズだと世界がどう見えるのか?」といった具合に、写真表現だけでなくレンズ遊びについても視野を広げてみると、お財布はペラペラになりますが、写真がもっと楽しくなると思います。

周辺光量補正入れていても、フラットなシーンだと気にならないこともないかな? って感じ。ドンケが汗で変色するくらい暑かった日ですが、そんな環境で丸1日撮っていても「熱で写りが」とか「暑さで動作が」みたいなことはありませんでした。高温下だとAF怪しくなったり写りが「ん?」ってレンズもあるけれど、本レンズは安心です。
■絞りF8.0 1/640秒 ISO100 ※200mm時