2025年4月に登場したニコンのミラーレス機 “Zシリーズ” のベーシックモデル「Z5II」は、2020年8月に登場したフルサイズセンサーを搭載するベーシックモデル「Z5」の後継モデル。小型・軽量ボディに妥協のない画質と性能を搭載した「Z5II」をプロカメラマン豊田慶記氏が徹底解説します。

■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。

ニコンZ5IIの性能をプロカメラマン豊田慶記氏が分析

大幅に進化したベーシックモデルZ5II

本機は「長時間持ち歩いても苦にならない小型軽量性と、画質や撮影性能・機能に妥協しない」という開発コンセプトを掲げて登場。Z5ユーザーの声にも応えるべく、「Z6III」やフラッグシップモデル「Z9」などと同じ画像処理エンジン「EXPEED 7」の採用によって、ディープラーニングを活用したAI技術による被写体認識AFに対応するなど、5年のスパンに相応しい改良が施されている。

撮像センサーは画素数こそ同等であるものの、コストと性能バランスから選択された表面照射型CMOSセンサーから、Z6IIやZfと同じ裏面照射型CMOSセンサーを採用。読み出し速度の向上と暗所特性に優れた撮像センサーを手に入れ、最新世代の画像処理エンジンを組み合わせたことで、暗所や低コントラストシーンでのAF性能の底上げだけでなく、3D-トラッキングや上述の通り被写体検出AFに対応したことは、使い勝手に大きく貢献する改善点だ。

画像: Z5IIボディ:25万8500円 Z5II 24-50レンズキット:29万9200円 Z5II 24-200レンズキット:35万8600円(※価格はニコンダイレクト価格で、記事執筆当時のものです)

Z5IIボディ:25万8500円 Z5II 24-50レンズキット:29万9200円 Z5II 24-200レンズキット:35万8600円(※価格はニコンダイレクト価格で、記事執筆当時のものです)

従来機では暗所や低コントラストシーンでのAF快適性で「ムムム」と思う部分があったが、本機では−10EV対応となったことで、肉眼で被写体を補足するのが難しいくらいの照度でもAFしてくれるようになった。が、このスペック表記には注意が必要で、暗いレンズを装着して暗いシーンでISO感度を上げて撮る、といった条件ではスペックから期待するほどの実践力ではない。

というのも、単位時間あたりでセンサーに届く光量がAFの暗所性能では重要なので、より明るいレンズと組み合わせることで真の実力を発揮できる、という構造になっているからだ。とはいえ、キットレンズなどの開放口径が限定的なレンズと組み合わせた場合でも、従来機と比べてスペック差以上の体感性能の差があることは間違いない。

画像: ボディ上部に新設されたピクチャーコントロールボタン。独立した専用ボタンとなったことでニコンの画作りを楽しんで欲しいという想いが込められている。

ボディ上部に新設されたピクチャーコントロールボタン。独立した専用ボタンとなったことでニコンの画作りを楽しんで欲しいという想いが込められている。

レンズ本来の性能を引き出せる裏面照射型CMOSセンサーを採用

またセンサーが裏面照射型CMOSセンサーとなったことで、オールドレンズ、特にワイドレンズ使用時の周辺部の再現性についても改善が期待できる。というのも、表面照射型よりも裏面照射型の方が周辺部への受光効率が良く、色転びや周辺光量への影響が小さくなる。レンズ本来の性能を堪能するにはZ5IIの方が適していると言って良さそうだが、周辺描写の「落ち」についても味わいとして表現に加味したいユーザーにとってはZ5の方が都合が良い、という指摘についても十分な正当性があるのも事実。デバイスの構造変更に伴う性能や特性の変化がある場合は “買い替え” ではなく “買い足し” という判断もあるということをぜひ検討してほしい。趣味だからこそ性能だけでは語れない「好み」についても向き合うことは重要なのだ。

従来モデルは、ボディ内手ブレ補正を装備しながらも10万円台で手に入る稀有なフルサイズミラーレス機、という新規ユーザーにとってとても良い選択肢となっていた。実際に本稿執筆時の主要通販サイトでの市場価格は約15万円未満だ。中古であれば10万円未満で手に入る魅力的な価格設定となっていたが、本機は24万円前後とかなりの価格上昇となっている。このことに不満を覚えるかもしれないが、最新エンジンの「EXPEED 7」によって撮影時の快適性や対応できる撮影シーンが大きく拡張され、ほとんどのユーザーが満足できる撮影性能・機能を手に入れた点に注目すると、この価格は妥当か(少し乱暴な論評になるけれど)かつての主力ミドルクラス機Z6IIの登場時価格、税込み約26万8400円よりもお手頃価格ながら撮影性能では大きく上回っている。この事実を目の当たりにすれば、むしろ安く感じられるかもしれない。

画像: 従来機から引き続き両スロットがUHS-IIに対応するSDダブルスロット仕様。メディアの挿抜性についても良好だ。開閉時のストラップ三角環への干渉も最小限だ。

従来機から引き続き両スロットがUHS-IIに対応するSDダブルスロット仕様。メディアの挿抜性についても良好だ。開閉時のストラップ三角環への干渉も最小限だ。

その撮影性能の立役者として貢献度が高いのはやはりEXPEED 7だ。従来型のEXPEED 6と比べて約10倍の処理能力を持っていることが利いている。ただし、上位モデルと同じエンジンを持っているからと言って、上位モデルと同じAF性能を持っている訳ではない、ということについては注意が必要である。

動体予測や検出性・追従性だけでなくピントロストしてからの復帰力に差が出てくる。が、そうした性能の限界に触れるような撮影をしない限りは上位モデルのような快適なAFを楽しめる。性能の一例で言えば、本機は上位モデルと同様に画面の長辺約3%に相当する顔面積があれば顔認識が動作する。これは例えば家族の記念写真や成長の記録のようなシーンでも積極的に人物にAFしてくれるので、背景にピントが抜けたりといったハプニングに遭遇する頻度がぐっと小さくなっていて安心感がある。このようにZ5では撮影に工夫が必要だったシーンに楽々対応できるだけの実力を持っている。

先日公開されたZ6IIIのファームVer.2.00で逆転されてしまったが、それまではZ6IIIに対して一部有利なシーンを持つ「下剋上」があった。具体的には鳥類に対する優先的検出設定となる「鳥」を持つ本機と持たないZ6III(「オート」と「動物」で鳥に対応していた)では本機の方が鳥の検出速度は上だったが、アップデートで下剋上は是正された。より高速センサーを持つZ6IIIを選ぶメリットは、被写体検出後に対象が大きく動いたり、高速で移動する対象をフレームインさせ続ける、といったシーンでEVFの遅延が少ないのでより直感的にフレーミングでき、AFの追従性も良いといったアドバンテージがある。とはいえ意外と便利なAF-Aで気楽に撮れるZ5IIのカジュアルさも捨てがたい。

ともあれ、本機が本格的な撮影性能を持っていることが伝われば幸いである。

ニコンZ5IIの操作性をレビュー

高い剛性感と心地良いシャッターフィーリングに注目

このように十分以上の撮影性能があれば、それだけ現役選手として長く主戦力になる、つまりそのカメラを長く愛用できるということに繋がる。これまでは高い撮影性能を持つ機種は軒並み大きく重く、普段使いにするには腰が重くなる側面を持っていた。が、本機のようにベーシックモデルでありながら十分な性能を持つカメラであればより長い時間をカメラと共に過ごすことができ、それだけ撮影機会にも恵まれる点は無視できない。無論「いつでも全力で」というストロングスタイルも美しく、楽しみ方は様々あるが、普段一緒に過ごすなら? という点についても少し考えを巡らせてみると、特に経験者にとってのベーシックモデルという可能性についても見えてくるのではないだろうか。

Text:豊田慶記

※以降、本誌に続く

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