プロカメラマン・諏訪光二氏が新しいレンズ、注目のレンズを採り上げてガチンコ比較を行うレンズショー企画。第一弾は、シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Ⅱ|ArtとソニーのFE 24-70mm F2.8 GM Ⅱ。
(※価格と記事は2024年7月時点でのものです)
テスト条件
できるだけユーザーの実際の利用に近い条件として、 カメラボディで利用できるレンズ補正などは全てONにしている。補正が働けば各レンズは性能向上したかのように写りの差は少なくなるが、現在のレンズは補正を前提としているものも多く、実際の利用ではほとんどの方がONで使用しているはず。これはレンズ単体での比較があまり意味を持たなくなってきているとも言える。それでもメーカーによりその補正内容は異なるであろうから、実際に使ってみれば違いが出るかもしれない。そのあたりも含めての評価をしてみた。その他にも、露出、ホワイトバランスはマニュアル(5200K)でブレ幅をなくし、ソニー機ではメカニカルシャッターを使用。他の要素に起因する差はなるべく出ないように撮影している。(諏訪)

■諏訪光二氏プロフィール
1968年、東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科在学中にアンセル・アダムスのオリジナルプリントに感銘を受け、ゾーンシステムを用いたオリジナルプリント制作に目覚めた。3年半で大学を中途退学し、フリーランスの写真家に。日本では早期にデジタルフォトを取り入れた数少ない写真家の一人。現在は広告撮影、写真専門誌等での原稿執筆、写真講座講師などを手がけながら、主に自然を作品モチーフとした作品を制作。

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN II|Artとソニー FE 24-70mm F2.8 GM IIを比較

ソニーEマウント〜純正 vs シグマ標準ズーム対決!

2024年5月30日に発売されたシグマの24-70mm F2.8 DG DN II|Artは、MTF曲線などスペックを見るだけで旧型よりも良くなっているのが分かる。そこで、Eマウントのソニー定番のFE 24-70mm F2.8 GM IIと比較してみた。

ミラーレス機用の大口径標準ズームとしてII型の登場となったシグマだが、ソニーもII型。とはいえ、ソニーの発売は2022年6月と2年ほど前になるため、発売時期にズレがある。それがどこまで描写の差になっているかが気になるところだ。

画像: ソニー FE 24-70mm F2.8 GM II ■発売:2022年6月10日 税込価格(実勢):30万8000円 ※価格は記事執筆当時のもの

ソニー FE 24-70mm F2.8 GM II
■発売:2022年6月10日 税込価格(実勢):30万8000円 ※価格は記事執筆当時のもの

ソニー FE 24-70mm F2.8 GM II

  • レンズ構成:15群20枚
  • 絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
  • 最小絞り:F22
  • 最短撮影距離:0.21-0.3m
  • 最大撮影倍率:0.32倍
  • フィルター径:Φ82mm
  • 最大径×長さ:Φ87.8×119.9mm
  • 重さ:695g
  • 付属品:フード・ケース
画像: シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Ⅱ|Art ▪️発売:2024年5月30日 税込価格(実勢):19万8000円 ※価格は記事執筆当時のもの

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Ⅱ|Art
▪️発売:2024年5月30日 税込価格(実勢):19万8000円 ※価格は記事執筆当時のもの

シグマ 24-70mm F2.8 DG DN Ⅱ|Art

  • レンズ構成:15群19枚
  • 絞り羽根枚数:11枚(円形絞り)
  • 最小絞り:F22
  • 最短撮影距離:0.17-0.34m
  • 最大撮影倍率:0.37-0.25倍
  • フィルター径:Φ82mm
  • 最大径×長さ:Φ87.8×120.2mm
  • 重さ:745g
  • 付属品:花形フード・ケース

Case 1:テレ端70mm 近距離ポートレート

絞りは開放。露出はマニュアルで固定だが、ややシグマが暗く見える。またシグマの方が若干色が 強く乗って赤みが多くなり、ソニーは赤みが抜けてやや青に寄っているため、肌がより白トビに近く見える。さらにシャドーの引き締まりはシグマの方が上で、結果としてシグマの方が肌を含めた階調を綺麗に記録できている。

画像: ▪️Model:沙倉しずか RQやコンパニオン、そして 『CAPA』にひょっこり顔を出す流しのモデル。CMRもほぼほぼレギュラーの登場です。愛機・α7R Vに200-600mm着けて、サーキットや野鳥も撮るカメラ女子。 #しずカメラ @

▪️Model:沙倉しずか
RQやコンパニオン、そして 『CAPA』にひょっこり顔を出す流しのモデル。CMRもほぼほぼレギュラーの登場です。愛機・α7R Vに200-600mm着けて、サーキットや野鳥も撮るカメラ女子。 #しずカメラ @

ピント位置のシャープネスは、どちらもかなり高く甲乙付けがたい微妙な差。だが、ソニーの方がカリカリの鋭いエッジを再現しているのに対し、シグマは緩いわけではないが優しいエッジだ。

画像: ■共通撮影データ:ソニーα7R V 絞り開放 ISO100 WB:5200K

■共通撮影データ:ソニーα7R V 絞り開放 ISO100 WB:5200K

とはいえ服の繊維など周波数の高い部分に関してはシグマの方がシャープネスが高く、ソニーはややユルめの再現。これらはレンズ補正の影響もありそうで、今後ファームが進化すればソニーも変わる可能性があると思われる。

ボケ量はソニーの方がほんのわずかに大きいが、合焦位置からボケへの繋がりはシグマの方が自然。ソニーは少しブレたようなボケになる部分も見られる。またファスナーの部分を見るとソニーはやや光が散っているのに対し、シグマはほとんどない。その他の画質面ではどちらも四隅まで安定してお り、補正処理の破綻も見られない。

このケース、よほどピント位置のカリカリなシャープネスを求めるのでなければシグマの勝ちだ。

Case 2:ワイド端24mm 中距離ポートレート

こんなにも差が出るのか!?という違いが。屋外で光のばらつきはあるとはいえ、色味やコントラストが大きく異なる結果となった。

画像1: Case 2:ワイド端24mm 中距離ポートレート

まずソニーは全体に青に寄っている。肌も緑も不自然な色で、特に肌は生気が感じられない色だ。対してシグマは赤みが乗っているように見えるが、RGB値でも確認するとシグマが自然。コントラストもシグマの方が高いが、階調自体は共通の白トビ部分以外は丁寧に再現できている。

画像2: Case 2:ワイド端24mm 中距離ポートレート

ピントはどちらも右目を瞳AFで狙っているが、どちらもやや後ピン。合焦位置でのシャープネスを見ると傾向はCase1と同様。ソニーの方が強いエッジのシャープネスだがやや不自然か。シャドーも浮き気味でコントラストがシグマより低い。

背景のボケを見ると、シグマの方が自然。ソニーはややエッジが立つボケ方だ。ただソニーの方が玉ボケはキレイ。もう一つ、欠点とまではいかないが、ソニーはフリンジが各所で出かかっている。ギリギリ見えるか見えないかのところで留めているが、目が肥えている人なら分かる描写。

周辺画質は、どちらも四隅までよく整えてある。が、ソニーは左右のフチに近い部分だけやや流れるような部分が見られる。このケース、Case1ほどソニーのシャープネスも効いておらずシグマの勝ちだ。

Case 3:ワイド端24mm 逆光

画像1: Case 3:ワイド端24mm 逆光

陽が画面上部に写り込む状態での強逆光での同一EVカット比較。見てすぐにシグマの方がよりしっかりコントラストを見せているのが分かる。ソニーは全体に霞んで暗部が浮き、全体に白っちゃけてしまう。

画像2: Case 3:ワイド端24mm 逆光

色味の違いはCase1、2と同様にソニーが青い 。EVFで覗くのが厳しいレべルの強逆光ながら 、カメラの瞳AFはどちらもしっかり効いて合焦。シャープネスはほぼ同レベルだ。ゴーストは、シグマにわずかに大きな輪状の光彩の一部が服の色の濃い部分と重なって見える。うっすらで言われないと気づかない人もいるかもというレベルだが、シーンによっては気になる可能性もある。

そしてフリンジ。このシーンではソニーにハッキリと発生。レンズ補正は使っているが、モデルの服と背景といった輝度差の激しいポイントでしっかり縁取りができてしまっている。このケースもゴーストは出てはいるものの、描写として安定しているのは圧倒的にシグマの方だ。

Case 4:ワイド端24mm 遠景

絞りはF8で撮影。評価は未掲載の分を含め中央チェック用と周辺チェック用と複数撮影して行った。

画像: Case 4:ワイド端24mm 遠景

ワイド端で中央部分を見ると甲乙付けがたいシャープネス。だが、やはりソニーは輪郭強調が強く働いているのか、ビルの窓や各階の手すりなど、エッジ自体はしっかり見えるようになっているのだが、そのエッジのそばの細かいところは甘さが残りチグハグな描写。

画像: ■共通撮影データ:ソニーα7RV 絞りF8 ISO100 WB:5200K

■共通撮影データ:ソニーα7RV 絞りF8 ISO100 WB:5200K

左右の中段あたりを見るとソニーがわずかに甘さを見せてフレアも見られるようになり、コントラスト低下も発生している。これは四辺いずれにも当てはまる傾向。特に中央の上下端あたりはレンズの端のちょっと内側にあたる場所で、そこは明らかにシグマがシャープでコントラストもしっかり。四隅あたりはほぼ同等レベルとなる。

ワイド端で気になる違いは画角圧縮の仕方の違い。センサー上でコンマ何mmといった程度の差だが、同じ24mmでごくごくわずかにソニーの方が画角が狭い。にもかかわらず、周辺部の傾き圧縮は強め。特に上下方向には強めに圧縮がかかっている。シグマは圧縮が中央から周辺まで自然で、特に被写体のバランスが崩れたようには見えない。

このケース、ほぼ互角といえるが、周辺までのコントラスト、圧縮の自然さでわずかにシグマの勝ちとしておこう。

Case 5:最短撮影距離(テレ端・ワイド端)

最後は最短撮影距離。両者のレンズ、テレ端では極端な倍率差にはなっていないが、ワイド端では距離こそ極端に違わなくとも、倍率ではシグマより高い倍率となっている。日常を寄って撮る場合などには大きな差となり得るだろう。

画像: Case 5:最短撮影距離(テレ端・ワイド端)

テレ端の画質を見ると、倍率的にはソニーが高く、より大きく写せている。そしてシャープネスはソニーが一枚上手。輪郭強調が強めに働く傾向だったが、近距離ではそれがいい方向に働いている。シグマは少し甘めだ。どちらも色収差が発生して前後の文字の輪郭には色がしっかり浮いているが、これもシグマがわずかに多めだ。これはソニーの勝ち。

画像: ■共通撮影データ:ソニーα7R V 絞り開放 ISO100 WB:5200K

■共通撮影データ:ソニーα7R V 絞り開放 ISO100 WB:5200K

ちなみにワイド端はというと、倍率がかなり異なっている。そのため最短同士の比較ではある意味イーブンではない。被写界深度が極端に浅いため、一見するとソニーの方がシャープに見えるが、ごくわずかな合焦位置のシャープネスを見るとシグマとソニーはほぼ互角。この倍率差でシグマのこのシャープネスは立派だ。

この最短比較。画質だけを見ればソニーの勝ち。撮影領域の広さという意味ではシグマの勝ちだ。つまり ユーザビリティを含めると互角だ。

総論:シャープネス過剰なソニー。コスパ的にもシグマが◎!

今回の両者の比較を見て、たった2年だがソニーが古く感じられる描写であった。発売当初はかなり高評価であったが、シグマの基本画質の高さとソニーのレンズ補正の不自然さが目立つ結果であった。たしかにソニーは未だにシャープではあるが、過剰なほどのシャープネスがむしろもったいない。ファームウェアでの改善を望みたいところだ。

また、シグマは絞り環やピントリング、ファンクションボタンなどのフィールや精度が高く、持つ歓びも与えてくれる。しかも値段的には量販店価格で11 万円近い価格差があり、シグマの方がかなり安く購入できることも考えると、これからEマウントでこのクラスを購入するなら、 よほどソニーの色でないとイヤ!という人でない限り、シグマでキマリだろう。この勝負、シグマの勝ちだ。

(Photo&Text:諏訪光二)

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本記事は「カメラマン リターンズ#11」の記事を転載したものです。【どっちのレンズショー Round 2】以降はコチラの本誌もぜひチェックしてみてください!↓

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