まずは何が進化したか?「OM-5 Mark Ⅱ」のリニューアルポイントまとめ
①メニューの表示方式が今風に
新生OM SYSTEMになってのフラッグシップ機「OM-1」から搭載されはじめた、横移動式の新しいメニュー表示方式(キヤノン的?)に変わった。カメラボディは横長でモニター画面も横長だから、やっぱりこっちのほうが合理的だと思う。筆者は縦送りメニューの「E-M1X」をまだメインに使っているので最初は戸惑ったが、すぐに慣れてこっちのほうが見やすく使いやすいと感じた。
②「CP」ボタンが付いた
「CP」はOM SYSTEMが推す「コンピュテーショナル フォトグラフィ」のこと。このメニューが一発で呼び出せるボタンが付いた。具体的にいうと、ハイレゾショットや深度合成、ライブND、HDRなど、高度な画像処理をカメラ内の画像処理エンジンでほぼリアルタイムに実行することで、撮影しながらその場で絵作りを行える機能だ。おうちに帰ってパソコンで画像処理するのとは、ぜんぜん違う撮影体験が楽しめる。納得がいく画になるまで、撮影している場所で何度もやり直しが効くわけだ。

左が深度合成後で、右が深度合成前の普通のショット。左の方が手前の綿毛のディテールまでしっかり出ている。でも自然なボケ方で、全然合成くさくないのがすばらしい。これが簡単に撮れる。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro 絞り優先AE(F3.5 1/1600秒) プラス0.3露出補正 ISO1600 WB:オート
もっとも、これらの機能はOLYMPUS銘の前のモデルからずっとあって、それも段々と進化を続けてきているのだが、それらの機能を使うためには、いちいちメニューから呼び出すか、自分でボタンをカスタマイズして機能を呼び出して使うことになっていた。
それが、最新のOM-3に「CP」ボタンが付いて「あー、これは使いやすいなー」と筆者は思っていたのだ。「CP」ボタンとダイヤルの押し回しでグリグリとお好みの機能がすぐに呼び出せる。筆者は深度合成と手持ちハイレゾをよく利用するのだが、OM-5 Mark Ⅱにも「CP」ボタンが付いてるのを見たとき「わかってるじゃーん、OMサン」と独りつぶやいてしまったのであった。
③USB端子がType-Cになった
バッテリーはBLS-50で先代と変わらず。
新ロゴに初めて変わった前モデルが登場した際に「なーんだMicro-Bのままか」と言われていたところが「ようやく追いついたな」という感じ。遠出してAC電源に不自由することって結構ある。ホテルの部屋でもACコンセントはそんなに数多くはないし、充電が必要なのはカメラだけじゃない。同行者がいると尚更だ。だから、今どきポピュラーなType-Cの端子で、色々なデバイスと色々な電源をやりくりして使えると本当に助かるのだ。
④カラバリが出た
「サンドベージュ」ですよ! 何となくガンプラを連想してしまったが、なかなかいい感じにカメラらしくなくもあり。筆者は「黒」を好むのだが、実はいろんな色があっていいと思う主義。高校時代に「OM-1」(もちろんフィルムカメラのね)の貼革をタミヤカラーで「ピンク」に塗ってしまった事もある。この「サンドベージュ」、主張し過ぎない上品なカラーだなと思う。売れるといいね。
「OM-5」とは何か? について

筆者の所有する初代「E-M5」(実は一度シャッターユニットを交換して現役)と本機「OM-5 Mark Ⅱ」を一緒に並べると「おまえさん、よく成長したなあ…」って感慨もひとしお。
初代の「E-M5」は、OM-Dのフラッグシップだった「E-M1」の弟分、すなわち中級機の位置付けとして登場した。この関係は、OLYMPUSからOM SYSTEMに変わっても、「OM-1」&「OM-5」として変わらないクラス分けで存在してきている。そして今回、「OM-1」→「OM-1 Mark Ⅱ」への進化の流れと同じくして、「OM-5」→「OM-5 Mark Ⅱ」へと進化した。初代「E-M5」からの進化は、本機「OM-5 Mark Ⅱ」で数えて5代めとなる。
では、実際に使ってみて…
こんなふうにレンズ面ぎりぎりまで被写体に寄って撮ったのが次の作例。
やっぱり軽い。手に馴染む。ストラップで首から掛けても、たすき掛けにしても、首が痛くならないし肩も凝らない。もちろんレンズとの組み合わせにもよるが、「OM-5 Mark Ⅱ」は絶対的に軽く、カメラマンにとっては福音。筆者においては、このカメラに似合うツートップのレンズは、マクロと高倍率ズームだと思う。そこで今回のレビューには、30mmマクロと12-200mmを使用した。

最短撮影距離に近い距離=ボケボケの美しい世界へようこそ。これだけの拡大率になると、ちょっとした被写体ブレも写ってしまうので、できるだけ速いシャッタースピードを選ぶ。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 30mm F3.5 Macro 絞り優先AE(F3.5 1/4000秒) プラス0.3露出補正 ISO1600 WB:オート
筆者チョイスの30mmマクロは、価格もライトだが質量も超ライト。レンズ前面まで思いっきり寄れるので、ボケ最大限の非日常的な絵作りが可能だ。「OM-5 Mark Ⅱ」の「CP」ボタンから深度合成を呼び出して使えば、最大限にボケまくってしまう超寄りの状況でも、意図に近い程度にまで深く被写界深度をコントロールすることができる。
万能レンズ12-200mm(フルサイズ換算=24-400mm)を付けてみた。ちょっと重くなるが、旅行や行楽のお供に最適。

12-200mm(フルサイズ換算=24-400mm)は、動物園ではお目当ての動物がでっかく撮れて、かなり楽しい。ちなみに左は124mm、右は200mm。
もう一つの筆者チョイスは、12-200mm高倍率ズーム。「OM-5 Mark Ⅱ」に付けるとやはりゴロッとした重さを感じる。カメラの方がすごく軽いせいだ。ただ、これ一本でフルサイズ換算28-400mmの画角だということを思い起こすと、その「万能感」が麻酔のように「ゴロッと感」を忘れさせてくれる。そして、ただただ遠くのものを近く大きく(しかも詳細に)写せることに、このレンズを持つ者は、単純だが大きな満足感を覚える。この望遠域でのアドバンテージがマイクロフォーサーズ機の最大の魅力なのだ。

■左側のカットが、手持ちハイレゾショット。画面中心20%ほどの領域を拡大して切り出している。ヒカゲヘゴの葉がしっかりと解像しているのがわかる。手持ちハイレゾ恐るべし。
あと、この高倍率ズームで、手持ちハイレゾショットの実力も試してみた。ピクセル等倍にまで拡大しなくともその効果がわかる。レンズが十分に高画質な証拠だ。ソフトウェアによる画素補完とは異なる「画素ずらし」という精巧な技術によって得られるOM SYSTEMのハイレゾショットの効果は、もちろんレンズの描写力にも左右される。しかも「手持ちハイレゾ」となれば、望遠域でのシビアさは言うまでもない。しかしながら12-200mmでも、実際にその効果は表われたのだ。
筆者がおススメしたいと考える人々

■M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 絞り優先AE(F7.1 1/500秒) マイナス0.3露出補正 ISO400 WB:オート
メーカー広報のレクチャー資料によると、「OM-5 Mark Ⅱ」は「山の人に推したい」ということのようだ。確かに、「サンドベージュ」というカラバリにもそれが表われているように思われる。「山歩きやキャンプ、スキー・スノボやグランピングなどのレジャー・アドベンチャーのお供にいかがですか?」ということだろう。
小型軽量やIP53の防塵防滴などの特徴もそれにマッチしている。防塵5等級=故障するほどの粉塵は侵入しない、防滴3等級=ワリと激しく降ってくる雨でも大丈夫、ということである。実際の開発試験ではシャワーで水をジャージャー掛けるらしい(ユーザーがマネをしてはいけないらしい)。

■M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 Ⅱ 絞り優先AE(F1.8 1/3200秒) プラス0.7露出補正 ISO80 WB:オート
しかし、このカメラの秘める潜在能力は非常に高い。手ブレ補正、AF、連写性能など、上級機に比べると確かに「あるレベル」にスペックが抑えられてはいるが、絶対値としては非常に高性能・高機能なカメラなのだ。
例えば、筆者が得意としている野球の撮影では、電子シャッターを利用するプロキャプチャーによる高速度連続撮影(毎秒30コマ!)で、大事な局面のプレーの瞬間をほぼ確実に捉えることができる。またE-M、OMシリーズが先陣を切っているコンピュテーショナル フォトグラフィでは、様々なクリエイティブな効果をカメラの機能だけで得ることができる。

■M.ZUIKO DIGITAL ED 100-400mm F5.0-6.3 IS Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/2000秒) プラス0.3露出補正 ISO1250 WB:オート
そして、何しろ、カメラの基本性能がしっかりしているのである。その上で、普及機並みの小型軽量さでありながら、一方では上級機並みの様々なギミックを満載しているわけだ。だからもしかして、お客は「どれを買えばいいのかな?」と迷ってしまうのかもしれない。しかしここは、筆者がズバリ、このカメラをおススメしたい人々を具体的に示したい。
1.スポーツを撮影したい人。例えば、サッカーや野球などをやっているウチの子の姿をキチンと撮って残しておきたい人々。
2.フルサイズやAPS-Cサイズのカメラ・レンズの大きさ重さに疲れ、腰やヒザに危機的なモノを感じている人々。
3.他社のカメラ・レンズの高価格な値付けぶりに驚きや憤りを感じている人々。
でしょ? 潜在的に「OM-5 Mark Ⅱ」がピッタリなユーザーは、本当はいっぱい居そうなはず、そんな気がするのだ。

■M.ZUIKO DIGITAL ED 12-200mm F3.5-6.3 絞り優先AE(F6.3 1/400秒) プラス0.3露出補正 ISO6400 WB:オート