■阿部秀之氏プロフィール
東京生まれ。1986年からフリー。ヨーロッパ、アジア、さまざまな国で街の風情やポートレート、コマーシャルなど、幅広いジャンルを撮影。フィルムからデジタル、光学まで幅広い知識がある。 カメラ専門誌などで執筆も手がけ、技術的な解説も得意とする。1987年よりカメラグランプリ選考委員を歴任。カメラメーカー主催のセミナー講師としても活躍中。
二コンのミラーレス一眼「Zf」を阿部秀之氏が徹底解説
約1年前に登場したニコンZシリーズのフルサイズ24MPモデルのZf。そのフォルムから、Zfcの兄貴分とも呼ばれ注目を集めた。販売店に聞くと、発売されて1年が過ぎても変わらず高い人気で安定した売れ行きだという。
2025年4月には最新ファームウェアが公開され、Wi-Fiを介してZfと連携し、ワイヤレスワークフローをスムーズにする新クラウドサービス「Nikon Imaging Cloud」に対応。さらに、多彩な調整が可能な「フレキシブルカラーピクチャーコントロール」にも対応しており、NX Studioを使用して作成したピクチャーコントロールをNikon Imaging Cloudまたはメモリーカードを介してZfに適用することで、自分らしいスタイルの静止画や動画を簡単に撮影できるようになった。新しいクリエイティブな表現力を高める機能が盛り込まれた。

背面液晶はZ6Ⅱのチルトアングルからバリアングルに変更。AF測距点用のジョイスティックが無いのは残念!
Zfについては、断っておかなければいけないことがある。スペックを聞いたとき、2023年のリターンズ#10の座談会では「ZfはZ6Ⅲの顔見せのようなものだ。Zfの中身で外観デザインや操作系をZ8仕様に変更したものがZ6Ⅲとして登場する!」と断言していた。
でも、2024年夏にいざZ6Ⅲが登場したときに、センサーには世界初の部分積層型CMOSセンサーが採用されていてまったくの別物…。自分たちの予想は大ハズレ。どーもすみません(汗)

とはいえ、Zfの魅力は変わらない。負け惜しみじゃないよ。そもそもZfは、昔懐かしい金属一眼レフ的な外観デザインが一番のウリ。それでいてZ9やZ8に共通した最新のAFや画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載している。部分積層型CMOSセンサーじゃなくてもOK! 高速連続撮影約14コマ/秒は十分な数値だし、AFも進化しており気持ちよく合う。

被写体検出の検出対応はZ8と同等だが、Zfだけの機能として、MFでの拡大時に拡大箇所の自動選択に被写体認識を用いることができる。
Zfにはレンズの外観もクラシカルなものが似合う。でも、ニコンからはNIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)、キットレンズにもなっているNIKKOR Z 40mm f/2(SE)の2本しか出ていない。コレではあまりにも淋しい。せめてMFニッコールレンズデザインの望遠ズームが欲しいところだ。ちなみに、そのときは緑、白、桃、黄、青、白の被写界深度曲線をお忘れなく。
すでにオールドニッコールを所有しているならぜひマウントアダプターで使いたい。マウントアダプターはニコン純正のFTZⅡがあるが、MFニッコールだけを使うなら、焦点工房のマウントアダプターがデザイン的に優れているし安価でもある。ニコンはマウントアダプターにも外観をオールドニッコールに合わせたようなバリエーションが欲しいよね。

Zfのボディはちょい大き目なので、Z 135mm Plenaと組み合わせるとバランスがとてもいい。2400万画素でもしっとりと美しい描写。再現に大人の余裕が感じられる。
■Z 135mm F1.8 絞りF1.8 1/50秒 プラス0.3露出補正 ISO800 WBオート
■共通撮影データ/ WB:オート
ニコン Zfの優れたモノクロモード
とかく外観に目が行きがちなZfだけど、もうひとつ優れた点がある。そう、モノクロモードだ。Zfのピクチャーコントロールには従来からの「モノクローム」に加え、「フラットモノクローム」と「ディープトーンモノクローム」が採用された。このモノクロモードは、後にZ9やZ8にファームアップで追加され、Z6ⅢにもZ50Ⅱにまで搭載された。

通常のモノクロームに加え新たに2種類のモードを追加。フラットモノクロームはニュートラルの彩度を抜いたものと近似しており、とても扱いやすい。ディープトーンはいわゆるモノクロ!って感じの再現で、こちらもオススメ。NX Studioを使えば従来機でも楽しめる。

ディープトーンモノクロームは、赤の感度が高く青の感度は低い。そのため陰影感を高めながら青空は暗く再現される。これはモノロフィルムにオレンジのフィルターをかけて撮影し、印画紙は3号紙を使ったときの描写によく似ている。
■Nikkor-UD Auto 20mm F3.5 絞りF8 1/200秒 ISO100 ディープトーンモノクローム マウントアダプターFTZⅡ使用
これについては、Zfに最もお似合いな機能なので、フラッグシップのZ9はともかく、他機種にまで搭載しなくても良かったような気がする。最近のニコンは大盤振る舞い過ぎる? D850のフィルムデジタイズは、Zシリーズでも望まれたけど対応しなかった。機種ごとのパワースペック以外の機能の差別化も必要なのでは!?
他機種でもできるようになったモノクロームだが、Zfは専用のレバー(静止画/動画セレクター)を設け、瞬時にモノクロームへの切り替えができるのが特徴。これは大きな魅力だ。

Zfを持つとディープトーンモノクロームを使いたくなってしまう。といってもモノクロオンリーでなく、カラーとの切り替えレバーがあるので両方写すことが多い。シャドー部の中に白い花が映える。趣味の作品作りに適したカメラだ。
■Z 14-30mm F4 絞りF8 1/500秒 プラス03露出補正 ISO100 ディープトーンモノクローム
モノクロモードの中で最も評価したいのは、「ディープトーンモノクローム」だ。中間調は暗めながらシャドー部の黒つぶれを抑えてダークトーンを再現してくれる。モノクロフィルムを使っていたとき、オレンジ色のコントラストフィルターをかけると、晴れた日の青空は黒く写った。これを「空が落ちる」といったが、まさにそんな感じ。
デジタルカメラは初期からモノクロモードが採用されていた。次第にコントラストフィルターなどの機能も盛り込まれたが、フィルムのときと同等に空を落としてはくれなかった。その点、Zfの画像設計の担当者は素晴らしい。モノクロームの魅力と醍醐味は、黒の中の黒といった深い描写にあることを実によく知っている。
ニコン Zf の「◯と×」
⚪︎
・歴史あるニコンだからこそできる金属一眼レフライクな外観デザイン
・瞬時にモノクロームへの切り替えができる専用レバー
・押し心地にもこだわりを感じるシャッターボタン。ネジ式のケーブルレリーズを装着可能なのもいい
・30万円を切るお値段
×
・ボディがちょっと大きい。もう一回り小さかったら最高!
・外観デザインに似合うレンズが2本しかない。旧ニッコールデザインのWズームが欲しい
・背面の操作部にサブセレクターがないのが残念
(写真&解説:阿部秀之)
ニコン Zf のスペック
- センサーサイズ:35mmフルサイズ
- 画素数:約2450万画素
- ファインダー:0.5型OLED EVF 約369万ドット
- レンズマウント:ニコンZマウント
- モニター:3.2型 約210万ドットバリアングルタッチパネル
- 感度:ISO 100~64000 ※拡張ISO 50/204800
- 連続撮影速度: 約14コマ/秒(高速連続撮影 拡張時) ※ハイスピードフレームキャプチャー +C30時は約30コマ/秒
- 記録媒体:SDXC(UHS-Ⅱ対応) microSDXC デュアル
- 大きさ:約144×103×49mm
- 重さ:約710g
- 発売日:2023年10月27日
- 価 格:29万9200円(ボディ)/33万1100円(40mm SEレンズキット)
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本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。興味のある方は、本誌もぜひチェックしてみてください!↓