2014年に登場したOtus(オータス)シリーズの登場は、レンズ業界にとって転換点となったと言っても過言でないくらいの衝撃でした。遅かれ早かれ同じ道を進むとは思っていましたが、「このサイズになっても性能が良ければ許されるんだ!」みたいな雰囲気になったのは、やはりオータス以後だと思います。そんな高性能(高画質?)レンズの代名詞でもあるオータスが、このたびミラーレス用にリニューアル。5月発売がアナウンスされています。今回はRFマウントをテストしました。

撮影共通データ:■キヤノン EOS R1 絞り優先AE WB:オート

コシナ ZEISS Otus ML 1.4/50 (RFマウント) 主な仕様

画像: コシナ ZEISS Otus ML 1.4/50 (RFマウント) 主な仕様

●焦点距離:50mm
●最短撮影距離:0.5m
●最大撮影倍率:1:7.3
●レンズ構成:11群14枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ77.4×92.9mm・697g
●付属品:フード

「ミラーレス仕様」により300gの軽量化を達成!

画像1: 「ミラーレス仕様」により300gの軽量化を達成!

ということで、シリーズの名称もOtus MLに。「ML」については想像通り「MirrorLess」のMLとのこと。シグマで言うところの「DN」と同じだね。ミラーレスのショートフランジバックに最適化することで性能を維持したまま小型軽量化(約300gも軽い!!!)を達成したことがアピールされています。

焦点距離が以前の55mmから50mmに変更となっています。これは従来型では「ミラーボックスを持つ一眼レフの長めなフランジバックで妥協なく性能を追求するために+5mmにした」と、当時どこかで読んだ気がします。が、一眼レフと比べてミラーレスでは設計上の制約が少なくなるので50mmで期待する性能を実現できた、ということなのでしょう。

そこら辺の詳しい話はアカギカメラ第113回で触れられています。(※デジカメWatch さん、ありがとう!)

外観は従来の流線型というか、どこか「ヌルっ」とした意匠から、無難とというか馴染のあるカタチに。だけど、同じオータス一族に類するレンズであることがひと目で分かるのは、独自のイエロー配色が踏襲された文字のカラーリングが影響しているのかも知れません。個人的には従来型より今回の新型のデザインが好きです。

画像2: 「ミラーレス仕様」により300gの軽量化を達成!

製造は「俺達のコシナ」なので当然と言えば当然ですが、質感は非常に高く、ピントリングは重めだけど滑らか。絞りリングも「精緻」な操作感。ピントリングの回転角が大きくとられているので「慎重にフォーカシングすべし」と暗に示されていますが、ちょっと操作量が大きすぎるようにも感じました。

付属の金属製フードは肉厚が1.5mm程度あり、剛体そのもの。仮にこのフードでスイカを穴だらけに抉ったとしてもヘッチャラでしょう。

超絶描写仲間のアポランターよりは「優しさ」が感じられる?

画像: テストの最後の方に撮った1枚。撮ってて「このレンズなら、もしかして?」と思って数多のレンズを葬った「高確率でグルグルボケに見える禁断のイジワルシーン」でボケが汚く写るように最大限頑張って撮った1枚。やってることはほぼイチャモンです。だけど、見事だね。開放絞りからピント面はお見事よ。 ■絞りF1.4 1/5000秒 プラス0.3露出補正 ISO100

テストの最後の方に撮った1枚。撮ってて「このレンズなら、もしかして?」と思って数多のレンズを葬った「高確率でグルグルボケに見える禁断のイジワルシーン」でボケが汚く写るように最大限頑張って撮った1枚。やってることはほぼイチャモンです。だけど、見事だね。開放絞りからピント面はお見事よ。
■絞りF1.4 1/5000秒 プラス0.3露出補正 ISO100

極上のEVFを持つEOS R1と組み合わせてみると、ファインダーを覗くのが楽しくてもうメロメロ…と言いたいところですが、R1が持つ覇気のせいか「お仕事感」が襲いかってきますので、「楽しい」に振り切れないモドカシサがありました。これがZ6ⅢやEOS R5 MarkⅡであったのなら、楽しいだけで話が進んだ可能性があります。

高性能のMFレンズと言えばアポランターが思い浮かびますが、アポランターよりも使用感は優しい(易しい)感じ。シャープはシャープなのだけれど、少しだけ幅があるって言えば良いのかな?

画像: キヤノンの電子シャッター時に1/8000秒より高速シャッターに対応している機種でもAEでのシャッタースピードの対応範囲が1/8000秒までっていう「劣悪仕様」をナントカして欲しいです。それは置いといて、ドエライ写り。マジで空気が写ってるね。開放絞りでこんな写る? って勢い。 ■絞りF1.4 1/16000秒 マイナス1.3露出補正 ISO100

キヤノンの電子シャッター時に1/8000秒より高速シャッターに対応している機種でもAEでのシャッタースピードの対応範囲が1/8000秒までっていう「劣悪仕様」をナントカして欲しいです。それは置いといて、ドエライ写り。マジで空気が写ってるね。開放絞りでこんな写る? って勢い。
■絞りF1.4 1/16000秒 マイナス1.3露出補正 ISO100

うまく説明できませんが、アポランターだとピントを外してしまった場合に鬼教官のご指導を賜ったような気持ちになる場合がありますが、本レンズの指導強度は「猫パンチ」って感じ。受け手次第ではご褒美という意図です。なので、気持ちが軽いと言えば良いかな? 爪が出てたら痛いけどね。

画像: 路面等の目地の消失感をチェックしつつ、周辺にボケが汚く見え易い成分のものを配置。何も起こりませんでした。50mmで撮った写真ぽく見えないよね。今回、カラーの写真は全て素のピクチャースタイルである「ニュートラル」で撮っていますが、それでも厚みのある感じで写るから、もう「忠実設定」で撮るか? と思ったりしてました。 ■絞りF2.0 1/1000秒 ISO100

路面等の目地の消失感をチェックしつつ、周辺にボケが汚く見え易い成分のものを配置。何も起こりませんでした。50mmで撮った写真ぽく見えないよね。今回、カラーの写真は全て素のピクチャースタイルである「ニュートラル」で撮っていますが、それでも厚みのある感じで写るから、もう「忠実設定」で撮るか? と思ったりしてました。
■絞りF2.0 1/1000秒 ISO100

写りはね、なんかスゴイって感じ。写真見てても「これは高いレンズで撮ったな!」と分かるというか。「解像性能が超スゴイ!」みたいな分かり易い良さではなくて(もちろん解像性もスゴイのだけどね)、ずっと眺めていたくなるような良さがある。

たとえば拡大してみるとスゴイ写ってるのに、全体だとそのスゴさのアピールが控えめで、全体として上品なバランスになっている感ね。被写体やシーンに対する得手不得手が無いと言えば良いかな。
念の為、50mm画角のレンズだと地味にボケが汚く見える条件を織り交ぜて撮ってみても、ドラマは起きませんでした。

フォーカシング送り量多め=微妙に気になってきます…。

画像: EOS R1だとね、ピントが見える見える。フォーカスアシスト使わなくても見えちゃうから、途中からOFFにして撮ってました。繊細さと柔らかさのバランスが良いし周辺もキッチリ写る。 ■絞りF1.6 1/1250秒 マイナス0.3露出補正 ISO100

EOS R1だとね、ピントが見える見える。フォーカスアシスト使わなくても見えちゃうから、途中からOFFにして撮ってました。繊細さと柔らかさのバランスが良いし周辺もキッチリ写る。
■絞りF1.6 1/1250秒 マイナス0.3露出補正 ISO100

少し長いレンズで撮影された写真を鑑賞している時のような感覚はありますので、自分が写真を眺めていて「コレ本当に50mm?」みたいな戸惑いはありますが、撮影者以外にとっては関係ないのかな。

フォーカシングの回転角の大きさは、キマった距離感で撮影するには良いけれど、お散歩スナップで遊ぼうとすると操作量が気になりました。EOS R1だとじっくりフォーカシングしなくてもピントが簡単に見えちゃうので、かえって操作量の多さが気になった説はあります。

↑みたいなことを書いてしまうと、同じレンズであってもマウント毎の設計最適化をやらずには居られない仕事熱心なコシナのことだから「Z用は回転角を小さめに」みたいな狂気の調整を今後検討してしまうかもね。

画像: ピントを合わせた自分を褒めてやりたい。というのが、元々狙ってる撮り方じゃなくて急遽対応したので、ピントリングの回転角の大きさに「頼む、間に合ってくれ!!!」って祈りながら撮ったから。 ■絞りF2.0 1/1000秒 プラス2.7露出補正 ISO200

ピントを合わせた自分を褒めてやりたい。というのが、元々狙ってる撮り方じゃなくて急遽対応したので、ピントリングの回転角の大きさに「頼む、間に合ってくれ!!!」って祈りながら撮ったから。
■絞りF2.0 1/1000秒 プラス2.7露出補正 ISO200

総じて、旨味の濃いレンズでした。カメラ含めて、積み重ねた技術をちゃんと表現してくれる感じがあります。好みの話をすれば、大きく重いレンズはあまり持ちたくないのだけど、このレンズなら旅行とかにも持っていきたいなー、と。

この原稿を書きながら名刺サイズのサムネイルでザラッと見返したりしてますが、サムネイルを眺めててもなんか違うんだよね。分厚いというか、写真に無色透明の液体が満たされているようなそんな感じの重さがあるように見えます。Lマウント版の用意があったりしたら危ないところでした。

画像: 露出の都合で0.3段絞ってます。EOS君は何故、1/8000秒以上のシャッタースピードは1段ステップになるのかな? 誰も何も言わなかったのかな?? 他の写真では「繊細さと柔らかさ」みたいなことを言いましたが、このカットでは素晴らしくシャープ。相反すると思ってた描写特性が、仲良く同居してる感があります。 ■絞りF1.6 1/8000秒 マイナス1.0露出補正 ISO100

露出の都合で0.3段絞ってます。EOS君は何故、1/8000秒以上のシャッタースピードは1段ステップになるのかな? 誰も何も言わなかったのかな?? 他の写真では「繊細さと柔らかさ」みたいなことを言いましたが、このカットでは素晴らしくシャープ。相反すると思ってた描写特性が、仲良く同居してる感があります。
■絞りF1.6 1/8000秒 マイナス1.0露出補正 ISO100

画像: フォーカシング送り量多め=微妙に気になってきます…。

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