■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
■宇佐見健氏プロフィール
1966年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒。専門誌出版社、広告代理店を経て独立。撮影ジャンルは360度全天球、水中、旅、風景、オーロラ、ポートレート、モータースポーツ、航空機、野鳥など多岐に渡る。カメラ誌等では新製品機材の実写インプレッションやHOW TO関連、カメラメーカー工場取材取材など多方面の記事を執筆中。
「高確率で鳥の瞳にAF追従できる」宇佐見健氏がソニー α1 Ⅱで実写&解説!
Catch&Shoot! AFの強化を盛り込んだαフラッグシップの2代目
旗艦機の2世代目として約4年振りに登場したα1 Ⅱは、5010万画素センサーや画像エンジンなど画質性能を担う主要部分はα1を継承。中間感度域の低ノイズ性能向上も実現しているが、進化の目玉はAIプロセッサ搭載による被写体認識と追従性能などAFの強化だ。

地面スレスレの高度を一直線に飛んで来て、僅かに上昇を始める瞬間の撮影。近づくにつれゾーンAFは頭部から瞳へとトラッキング追従するエリアを的確に狭めて終始確実に食らいついていた。
■FE70-200mm F2.8GM OSS Ⅱ(200mm) ・シャッター優先AE(1/4000秒 絞りF2.8) ISOオート(125) 撮影協力:鷹の庵
共通撮影データ/WB:オート トラッキングゾーンAF(被写体認識:鳥)
メーカー発表では、犬・猫など動物で約30%、鳥類は約50%も認識性能を向上させており、被写体種類を自動認識する「オート」が初搭載された。α1では鳥認識の検出精度に少々不甲斐なさを感じていたこともあり、試写では鳥を被写体にしてみた。
オオタカの撮影では鷹匠による調教中でのシーン。飛ぶタイミングやルートの予測が可能とはいえ、正面からの速度は速い。それでも結果的に野鳥撮影では考えられないほどの近距離から200mm絞り開放F2.8で背景ボケを活かした作例が難なく撮影できた。α1の伸び代があり過ぎたとも言えるが、高確率で鳥の瞳にAF追従できていて手応えは良い。
ただし「鳥」はもちろん「動物」にも形や大きさが様々あるわけで、百発百中は無理。被写体検出をカメラが迷ったときは自力で確実にAFフレームを当ててトラッキングさせられるスキルが使いこなす上で重要だ。
被写体認識「オート」はライバル機では多くが実装済みで、ソニーは敢えて載せないのかも?と思ったが違ったようだ。オート検出する被写体も選択できるなどカスタマイズも可能なので、通常時設定して何に遭遇してもOKという使い方ではなく、対応したい被写体に絞り、必要に応じて切り替える方が良さそうだ。

50MPセンサーはAPS-Cクロップしても21MPをキープする高画質で1台二役の使い方ができる。あまりにも獲物が小物過ぎるコサギの捕食を900mm相当のどアップで。
■FE200-600mm F5.6-6.3G OSS (600mm:35mm判換算900mm) 絞りF8.0 1/3200秒 ISO500
ソニー α1 Ⅱの機能性・操作性
シャッターレリーズ押下から最長1秒間で30コマ/秒の連写を遡り撮影できるプリキャプチャー機能に関しては、フル画素は30コマで良いが、たとえ記録画素数を下げるなどしてでも、もう少しコマ速を上げる設定も増やすことはできなかっただろうか?120コマ秒で切れるα9 Ⅲと競合することは分かるが、最新のフラッグシップとしてはややモヤモヤ感が否めない。
細かな不満はまだあるが、筐体を同じくするα9 Ⅲ同様、握りやすいグリップ形状やマルチアングル液晶モニターなど各部が更新され、また撮影時だけでなくレーティングや絞り込みなど、再生時の大量画像のハンドリングも良くなり総合的な操作性の向上も実感できた。飛び道具的な新規軸はないものの、「着実な進化を遂げた2代目フラッグシップ」といった印象だ。
ちなみに、本機はクロス検出ではないことと、読み出し速度がEOS R1ほどではないので、動体撮影時やシビアコンディションではEOS R1の方が高い歩留まりが期待できそうだ。積層型センサーと処理性能の大幅な向上によって、ブラックアウトフリー撮影はもちろんなのだが、電子シャッター時に最高約30コマ/秒、メカシャッター時に最高約12コマ/秒(R1と同等)を獲得。ちなみに、ローリング速度はEOS R3に近いレベルというから驚きというか、複雑というか、とにかく技術の進歩を実感させられる。

カワセミの捕食をAPS-Cクロップで撮影。日陰だったので高速シャッターを稼ぐべくISO12800まで上げた。大伸ばしにはキビシイが通常サイズやwebページであれば鑑賞に耐える画質は有している。
■FE200-600mm F5.6-6.3G OSS (600mm:35mm判換算900mm) シャッター優先AE(1/2500秒 絞りF8) ISO500
宇佐見 健氏が考えるソニーα1 Ⅱの「◯と×」
◯
・フルサイズ/APS-C 1台二役
・手持ちでも辛くなくなったグリップ形状
・背面液晶はやっぱマルチアングル
・大分お利口になった被写体認識
・威圧感もオーラもないコンパクトボディ
×
・機種名の白ペイントが安っぽい
・だけど価格はまだまだお高い…
・スマホアプリとの連携がやや難解
(写真&解説:宇佐見 健)
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「オールラウンダー機としての資質をさらに高い次元へ」豊田慶記氏がソニー α1 Ⅱで実写&解説。従来機と徹底比較!
高画素と高速性をさらなる高みで両立
αシリーズのフラッグシップ第2世代機が約4年9カ月振りに登場。約50MPのメモリー内蔵積層型CMOSセンサー 「Exmor RS」を踏襲しつつ、最新の画像処理エンジン「BIONZ XR」を組み合わせ、AIプロセッシングユニットを搭載した。

横幅はα1から7.2mm拡大されたが、ストラップ取付部の間隔はα1とほぼ同等になるように斜め部に設置されている。ストラップを斜め掛けにした時のバランスにまで配慮されている辺りに開発の矜持を感じた。
映像エンジンにいわゆるアクセラレータをドッキングし、それぞれが得意な処理に作業分担させる手法は先に登場したα9 Ⅲと同じであり、EOS R1やR5 MarkⅡも採用していることから、今後のハイエンドモデルのトレンドとなりそうだ。
このAIプロセッシングユニットの搭載によって、従来機では「人物・動物・鳥」の3種のみだった被写体認識はα9 Ⅲと同じく「人物・動物・鳥・昆虫・車/列車・飛行機」に対応。人物の瞳認識と動物の認識性能はそれぞれ約30%アップ。鳥については約50%も認識性能が向上しているというが、α9 Ⅲと同等クラスだろう。

背面モニターがチルト式から、バリアングルとチルトを組み合わせた4軸マルチアングルに。α7R Ⅴで初採用となったものだが、現時点での最適解だろう。
α9 Ⅲに採用されていたプリ撮影機能も搭載。全てのファイル形式で記録可能であり、プリ撮影記録時間はα9 Ⅲの最短0.005秒に対して、本機はグローバルシャッターではないことから最短で0.03秒。だが、0.03秒から0.1秒までは0.01秒刻みで非常に細かく設定できるなど、基本的な使い勝手はα9 Ⅲと同等だ。
しかもプリ撮影時にレリーズ全押ししたコマにレーティングする設定が可能であるなど、プリキャプチャーで先行するライバル他社では使い勝手的に物足りなく感じていたところを完全にフォローアップした。もはやα1 Ⅱとα9 Ⅲ以外でプリ撮影を使おうなどとは考えられないほど完成度が高められている。しかも最高120fpsで制御される強力なAF性能もある。まさにソニーの独壇場と言っても過言ではない機能になった。

プリ撮影時に全押ししたタイミングのコマにレーティングできるようになった。大量に撮っても後処理が楽になる。開発チームにガチでこの機能を使っている人がいることを窺わせる。ボタンやダイヤルの配置は踏襲されており、R5から乗り換えても違和感はない。
ボディ内手ブレ補正機構も大幅に強化され、中央で8.5段、周辺部で7.0段の効果を発揮。実際に体験したが、スペックに偽りなしの非常に強力な効果というだけでなく、常用領域から「写真が上手くなった」と感じるくらいに自然なフィーリングでスッと安定するので気持ち良い。
ソニー α1 Ⅱのサイズ感と使い心地
ボディはα9 Ⅲと同じ筐体を使用したことでα1よりは若干大型化しているが、操作性とコンパクトさを両立できているので、適切なサイズ感になったという印象。ボタンやダイヤル類の配置、グリップ形状もα9 Ⅲと同じであり、ボディ前面に追加されたカスタムボタンや4軸マルチアングルモニタも然り。約944万ドットのEVFも同じなので、乱暴に言えばα9 Ⅲからセンサーを交換して、α1に投入された新設計のメカシャッターを搭載したのがα1 Ⅱということになる。

露出補正ダイヤルからプリントが消え、他の機能割当もできるように。左肩のドライブモードダイヤルには*マークが追加され、こちらにも任意のドライブモードを設定可能。現場の声が届いていると感じる変更点だ。
1台であらゆるシーンに対応できる最新のαフラッグシップ
手にした感触は「素晴らしく手に馴染むカタチ」というもの。形状そのものが良く、僅かに大型化したことで窮屈さも無くなった。これはα9 Ⅲでも同じ印象だ。AF性能そのものはα9 Ⅲの方が上という感触。アルゴリズム自体は本機の方がより新しいVerが搭載されていて、近い将来α9 Ⅲもアップデートで追いつく、という話だったが、α9 Ⅲはグローバルシャッターによる超高速読み出しが利いているのかもしれない。

素晴らしくグリップ性が良くなっただけでなく、人差し指が自然にシャッターボタンへと導かれる形状になり、カメラとの一体感は別物になった。
またバスケットボールのシーンでは、被写体認識任せで撮っていると背景に明るい服装の人物が写り込むと、選手よりも背景の顔を捕捉してしまいやすい挙動が気になった。
α9 Ⅲではグローバルシャッターが切り拓く新しい表現と高速性を重視した、いわばスペシャルモデルであると感じられたが、α1 Ⅱは「50MP(高解像) x スピード」に加えて被写体認識によるAF性能を進化させることで、オールラウンダー機としての資質をさらに高い次元へと引き上げた。1台であらゆるシーンにハイレベルで対応できる最新のαフラッグシップである。
豊田慶記氏が考えるソニー α1 Ⅱの「◯と×」
◯
・α9 Ⅲと同じ形状のボディで絶妙なサイズ感
・グリップと操作性が良い
・覗き心地の良いEVF
×
・AFは期待したほどじゃない(十分凄いが)
・本当に100万円??の質感
(写真&解説:豊田慶記)
α1 II | α1 | EOS R1 | Z9 | |
有効画素数 | 約5010万画素 | 約5010万画素 | 約2420万画素 視線入力ほか | 約4571万画素 |
AF機能 | 759点 個人認証 | 759点 個人認証 | クロスAF アクション優先 | 493点 |
常用最高ISO感度 | 100-32000(50・102400) | 100~32000 | 100-102400(50・409600) | 64-25600(32・102400) |
被写体検出AF | オート/人(瞳/ 頭部/全身)/動物(鳥/昆虫)車/鉄道/飛行機 | 人物/動物(犬/猫/鳥) | 人物/動物(犬/猫/鳥/馬)/乗り物(車/バイク)/鉄道/飛行機 | 人物/動物(犬/猫/鳥)/乗り物 |
AF低輝度合焦限界 | マイナス4EV(@F2) | マイナス4EV(@F2) | マイナス7.5EV(@F1.2) | マイナス7EV(@F1.2) |
高速連写 | 30コマ/秒(電子)10コマ/秒(メカ) | 20~30コマ/秒(電子) 10コマ/秒(メカ) | プリ連続撮影 40コマ/秒(電子)12コマ/秒(メカ) | プリキャプチャー機能影(1秒)20コマ/秒(電子のみ) |
最高シャッター速度(電子時) | 1/32000秒 | 1/32000秒 | 1/64000秒 | 1/32000秒 |
EVF | 約944万ドット/0.90倍 | 約944万ドット/0.90倍 | 約944万ドット/0.90倍 | 約369万ドット/0.8倍 |
最大手ブレ補正効果 | 中央8.5段/周辺7.0段 | 5.5段 | 中央8.5段/周辺7.5段 | 6.0段 |
大きさ(W×H×D) | 約136.1×96.9×72.8mm | 約128.9×96.9×69.7mm | 約157.6×149.5×87.3mm | 149×149.5×90.5mm |
重さ(電池・カード含む) | 約743g | 約737g | 約1115g | 1340g |
ソニーα1 Ⅱ のスペック
- センサーサイズ:35mm(フルサイズ)
- 画素数:約5010万画素
- ファインダー:0.64型OLED EVF 約943万7184ドット
- レンズマウント:ソニーEマウント
- モニター:3.2型 209万5104ドット
- 感度:ISO 100~32000 ※拡張ISO 50/102400
- 連続撮影速度: 約30コマ/秒(電子 Hi+時)※約10コマ/秒(メカ)
- 4軸マルチアングル タッチパネル
- CFexpress(Type A対応)/SDXC(UHS-Ⅱ対応)
- 大きさ:約136.1×96.9×82.9mm
- 重さ:約743g
- 発売日:2024年12月13日
- 価 格 :99万円(ボディ)
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本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。興味のある方は、本誌もぜひチェックしてみてください!↓