【豊田慶記氏プロフィール】
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
キヤノン EOS R1はどんなカメラ?
全てのユーザーに「撮影領域の拡大」を約束するミラーレスEOSの頂点
EOS Rシステム登場から丁度6年の時を経て、ついにフラッグシップモデルEOS R1が登場した。EOS R発売後にDSLRのEOS-1D X Mark IIIを投入してくるという興味深い展開もあり、当時のキヤノンはミラーレス機のポテンシャルに対して旗艦機を投入するには時期尚早であると判断したのでは? という推測をした記憶があるけれど 、時は満ちたということだろう。

重さはR3から約100g増量となる約1115gだが、Z9より200g以上軽い。α9IIIにグリップを装着するとバッテリ・カード込みで約1115gとなり、ほぼ同等レベルにある。
キヤノンのフラッグシップ機には「EOS-1」や「F-1」などのように”ハイフン”が用いられてきた歴史がある。過去にはEOS-3という例外はあったけれど、銀塩時代から約半世紀以上続いた伝統の型を破り新しい世代 への歩みを印象付けるためなのか、本機はハイフンを持たない。
キヤノン EOS R1の機能とサイズ
センサーは画素数こそR3と同等の24MPながら新開発の裏面照射積層CMOSセンサーが採用されている。グローバルシャッターではないけれど、メカシャッターと同等の歪み性能まで読み出し速度を高速化させている。ちなみに、メカシャッターでもシャッターが走る速度よりも早くパンすると歪む。

背面以外を含む全ダイヤルの非接触検出化に注目! 接点による検出ではなく光学検出となるので、摩擦による操作不良を排除している。
R3の発表時にグローバルシャッターの是非について質問した際、「グローバルシャッターに迫る高速読み出しをローリングシャッターでも実現可能であり、それぞれにメリット・デメリットがあるので選択は慎重に行っている」旨の回答があったが、R1でその回答の芯に触れた形だ。

これまではPC必須だった元データを 高解像度に変換するアップスケーリング がカメラ内でできるようになった。豪快 にトリミングしても鮮鋭感をキープするこ とが可能。
高画素化に舵を切らなかったことについては、カメラ内のアップスケーリングで縦横がそれぞれ2倍の96MP出力(ファイルサイズは約3倍)に対応したことで実質的な解決策となった。普段は24MP、時々96MPというのは、データハンドリング的にも実用性の観点からもバランスが良さそうだ。

グリップは個人的にはα1 II&α9 IIIと並ぶベス ト形状。表面の新パターンのラバーの感触も良い。
エンジンは既に発売されているR5 MarkIIと同様にDIGIC XとDIGIC Acceleratorを組み合わせ、強力な被写体認識AF性能と高速性を手に入れた。R5 Mark IIとの差別化ポイントとして、エリア内の全ての領域でクロス検出に対応したことでより強力かつ安定した被写体の捕捉が可能であることをアピールしている。
R5 Mark IIでもAFの新機能「アクション優先」が搭載されており、バスケットボールなどの対象競技ではクロス検出によってさらに強力に被写体にAFさせることが期待できそうだ。

キヤノン最後のフラッグシップ一眼レフ・ EOS-1D X MarkIIIと比べると、ひとまわり小さい感じ。重量で300g以上軽くなっており、レンズを含めるとかなりの差となる。
外観はR3と同じテイストだが厚み以外はひと回り大きく、ラバーのシボ形状はディンプルから縞鋼板のようなパターンに。R3を長時間使っているとパターンに汚れが溜まって滑るなどの話を耳にしたことがあるが、R1ではそんな悩みも解決しそうだ。
キヤノンEOS R1を楽天で購入される方はこちら↓(注:このリンク経由で購入すると、Webカメラマンに広告費が入ります♪)
キヤノン EOS R1の撮影インプレッション
フラッグシップ機からでしか得られない「撮れた」という信頼感
最終試作モデルのテストができたのでそのインプレを紹介したい。サイズから想像するよりも持った時の印象はずっと軽い。とはいえ物理的に1kgを超えており、長時間持ち歩くと数字なりの負担はある。 EVFの覗き心地は極上で他を圧倒、ライバル機を抑えてNo.1だ。これほど快適なEVF は世界でもR1だけだろう。

輝度がR3の約3倍と大幅に向上した EVF。その覗き心地はまさに極上。ミラーレスでベストと言って良いだろう。
キヤノン EOS R1のオートフォーカスについて
AFのクロス検出の威力チェックを動物園などで試してみた。旗艦機なので厳しく言うと、(ファームが最終ではないためか) やや期待ハズレ。R5 Mark IIや従来機と比べて明らかに安定感があることは事実だけれども、α9 IIIの方がAFは正確で、檻などの障害物に惑わされない感触だった他、逆光気味のシーンでレッサーパンダやキリンを捉えると誤検出が頻発したことも気になった。

AWB制御が良くなかったのでプリセットWBで撮影。この日はフラミンゴだけでも900ショット撮ったが、 被写体認識時のピントのバラツキが非常に少なく、とんでもない精度で安定していた。
RF100-500mm F4.5-71 L IS USM+エクステンダーRF2x使用 シャッター優先AE(1/640秒 絞りF13) ISO2000 WB:太陽光 ※撮影はデモ機によるもの
厳密に言えば対応していない種類なのかも知れないが、EOS R8では問題なかったシーンで耳や前足にガチピンしてしまう挙動が気になった他、ボケボケで合焦表示が出ることもあり、「ん?」という印象だ。視線入力は、検出が敏感過ぎると感じたシーンもあるので少しダルなモードがあると嬉しいけれど、慣れ次第という感はある。
ただし、基本的なAF性能は申し分なく、 アクション優先についてもストリートバスケットで軽く試した感じではとても効果的。 ボールキープしているプレイヤーにAFが勝手に集まり背景の人物にAFが抜けにくく、こんなに楽に撮れるのかと驚かされた。

視線入力は検出範囲の拡大とR3の約 2倍となった検出フレームレートなどによ り、入力精度を改善。実際にメガネ着用で試してみたが、ハッキリと体感できる差があった。
全体的には簡単な試用では性能の底が全く見えないレベルで、その道の専門家でなくても初見でソコソコの写真が撮れてしまう感じ。かといって、撮らされているような感じもないことが不思議で、まるでカメラが自分のテクを底上げしてくれているような感覚だった。
キヤノン EOS R1のAWB/手ブレ補正について
精度とシーン 認識性能が向上したとアピールされたAWBについて、テストした限りでは特に日陰シ ーンの制御がイマイチだったが、製品版では改善されている可能性がある。

サッカーやバスケ、バレーボールなど、特定のアクションをしている被写体を認識し、その被写体にAFフレームを移動させる機能を搭載。クロス検出と合わせてさらに強力なAF捕捉&追従性を確保した。
感心したのは手ブレ補正の動作感。他の機種よりも明らかにスムーズで繊細に制御されているように感じられた。通常のボディ内手ブレ補正機は内部でセンサーが動いている感触が少なからず手に伝わってくるのだが、その動作感がないのに構図はピタリと安定している。構図変更時にはスムーズに追従し、手ブレだけが排除されているよう。この感触がとても上質に感じられた。
性能以外の部分で気になったのは大きさ。取り出すとやはり目立つ。この独特の存在感は、普段使いというよりは仕事道具だろう。 総じて、キヤノンがフラッグシップを名乗るだけのことはある。多少の不満は挙げてはいるが、「撮れた」という信頼感は格別。フラッグシップ機からでしか得られない安心感は確実にあることを思い出させてくれる。
キヤノン EOS R1の◯と×
◯
- 現状のミラーレスで最高のEVF
- 質感が極上
- 手ブレ補正の制御が秀逸
- 意外と軽い
- 性能の全てが撮影に集中させてくれるようにできているので撮影していて楽しい
×
- AWBの制御
- デカくて目立つ
- 不得手なシーン(AF)もありそう
キヤノン EOS R1のスペック
- センサーサイズ:35mm(フルサイズ)
- 画素数:約2420万画素
- ファインダー:0.64型 EVF 約944万ドット
- レンズマウント:キヤノン RFマウント
- モニター:3.2型 約210万ドット
- 感度:ISO 100~ 102400 ※拡張ISO 50/409600
- 連続撮影速度: 約40コマ/秒 (電子) ※約12コマ/秒(メカ)
- バリアングル タッチパネル
- 発売日:2024年11月29日
- 価 格 : 108万9000円(ボディ)
- 大きさ:約157.6×149.5×87.3mm
- 重さ:約1115g
キヤノンEOS R1を楽天で購入される方はこちら↓(注:このリンク経由で購入すると、Webカメラマンに広告費が入ります♪)
本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。本誌もぜひチェックしてください!↓