撮影共通データ ■キヤノン EOS R8 絞り優先AE WB:オート
キヤノン RF16-28mmF2.8 IS STM 主な仕様
●焦点距離:16-28mm
●最短撮影距離:0.2m(28mm時)
●最大撮影倍率:0.26倍
●レンズ構成:13群16枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ76.5×91mm・約445g
キヤノンの開発技術力を見せつける一本?

フィルター径はφ67mmでRF28-70mmF2.8 IS STMと同じであり、沈胴仕様であることも共通だ。沈胴状態で全長約91mm。16mm時にレンズ長は最大となり約113mm、28mm時には約102mm。重さも445gとワイドズームとしてはなかなかコンパクトだ。それでいて光学手ブレ補正機構を搭載していることは素晴らしい。
このコンパクトサイズを実現した立役者はやはり「新ISユニット」という話で、構成する全ての部品の重心を正確に計算し配置を最適化することで、ユニット全体の小型化を実現したとのこと。これに加えて大径のレプリカ非球面レンズを配置できたこともポイントだ。
レプリカ非球面レンズについては、以下のキヤノンの特設ページの解説を観て頂きたいが、これほど大きなレプリカ非球面レンズを実現した技術には驚かされた。
「19まんえん」のレンズとしては質感に不満が…。フードも別売だしぃ。

輝度差が大きくなる窓枠付近やカーテン部とか照明のエッジ部分に色付きはナシ。補正が頑張っているのか、素の実力が高いのかは分かりませんが、スゴイ時代ですねぇ…。
■絞りF2.8 1/60秒 プラス1.0露出補正 ISO200
約445gというスペックから想像はできるのだが、実際に手にしてみるとかなり軽く感じた。今回組み合わせたのはボディ内手ブレ補正機構を持たないEOS R8。この組み合わせで合計約906g(約461g+約445g)と、フルサイズ機を持ち歩いている感覚は皆無。
さすがにRF15-35mmF2.8 L IS USMの約840gよりは重いが、RF24-70mmF2.8 L IS USM(約900g)とほぼ同等なので「Lレンズ1本分程度」と大々的に発信しても怒られない重さになっていることは素晴らしい。
ズームリングやコントロールリングの操作感はとてもスムース。沈胴操作も同様にスムー
スだが、沈胴解除時のトルクも同様に軽めということで、「手間」感が減じられていることに好感が持てた。
価格は約19万円と立派ではあるが、フードは付属しない。価格については為替の都合も無視できないのだろうと邪推するけれど、正直言えば寂しい気持ちは拭えない。
快適なAF、そしれ「寄れる」のはなにより!

至近側でも合焦面はかなりシャープ。背景を整理していることも少なからず影響していますが、それでもボケがキレイで良い感じなことは伝わるかと。周辺でもガチャガチャしてないよね。
■絞りF2.8 1/80秒 プラス2.0露出補正 ISO1000
今回は評価可能なベータ版というステータスのレンズで試用を行った。いつもの様に4時間連続スナップ撮影してみたが、実に開放的な気分で水分やエネルギー(糖分など)の補給を撮影ルート上に設定することなく撮影を楽しめた。
やはり軽さは正義。フルサイズ機もこれくらい軽くコンパクトだと「世界が変わる」という確信(何の?)を強くする。
AFはかなり快適。リードスクリュータイプのSTMなので、静粛性に優れていることはもちろんレスポンスと速度も上々、というかUSMと遜色ないレベルの「快速・快適」を実現している。どこぞのSTMとは大違いだ。

ナンテことない撮り方をしていますが、年季の入ったコンクリは意外とレンズ泣かせだったりもします。本レンズは周辺までキリリと写っていてナカナカよろしい感じ。こういうシーンだと開放から1段絞っときたいかな。
■絞りF4.0 1/80秒 マイナス0.3露出補正 ISO200
接写性は高くレンズ先端から10cm未満まで近接できる。最大撮影倍率も0.26倍となかなか高いので、ワイドマクロ的な使い方を軽量コンパクト性を活かしてガシガシ楽しめるのも気持ち良い。
写りに気になるところはなく、開放絞りからキリリとした解像感はもちろん、f/14など大きく絞り込んだ領域でも回折が気になる(おそらく補正が賢いのだろう)ことも無かった。最至近付近から指1~2本程度の領域だけ少しだけ甘くなるように見えたが、それでも寄れることの悦びの方がはるかに大きく楽しいものだ。
ライバルは「RF14-35mmF4 L IS USM」なんですがー。

ちょっとガチャガチャしたシーンだけど、ボケ感も、ピント面から少し外れた部分の滲み方も悪くない。軽くて寄れるワイドズームってそれだけでも楽しいのだけど、写りも良さそうなので気分良く撮っていました。
■絞りF2.8 1/200秒 マイナス0.7露出補正 ISO100
かなりバランスの良い製品である、という印象と、やはり「軽さが魅力」というのが率直な感想だ。しかし、キヤノンにはプラス5万円程度でRF14-35mmF4 L IS USMという魅力的なレンズが存在することを忘れてはならない。
確かに開放F2.8が効くシーンもあるけれど、コチラ(14-35㎜)はワイド側に2mm広く、テレ側も7mm長いので、守備範囲が大きく広がることが魅力。Lレンズなので堅牢性にもお墨付きがある。
ズームレンズを揃える時には、焦点距離はある程度オーバーラップしている方が運用上都合が良いというのはその通り。さらに言えばワイド側が広い方が、広角レンズは楽しいと考えている筆者としては、少し背伸びしてRF14-35mmF4 L IS USMをオススメしたい気持ちが大きい。
動画観点では、フォーカスブリージング補正対応であるけれど、APS-Cフォーマット機で対応しているのはR50のみ。R7とR10は未だにフォーカスブリージング補正が未対応な点が解せない。
EOSの掲げる「快速・快適」のコンセプト通り。次が楽しみ??

ひとしきり傾向が掴めてからはAvじゃなくてPで撮ってましたが、PだとF13とかを無邪気に叩き出してきてびっくりしました。このシーンもカメラはF11にしたがっていたけれど、あんまし好きな制御じゃないです。ここではビビってF7.1にシフトしてパチリ。ツヤ感など良い感じでニッコリ。
■プログラムAE(絞りF7.1 1/320秒) マイナス1.7露出補正 ISO100
現状ではAdobe Lightroom Classicがレンズデータに対応していないので、RAWデータを読み込ませると16mm時の至近側では歪曲で大きくケラれていることが見えてしまうけれど、実際のJPEG画像を見る限りは不満は全くない。光学と電子補正のバランス次第ではこの性能をこのサイズにまとめることができるのだろう。
ナンデモカンデモ光学側で頑張ろうとするとLレンズのボリュームになってしまうが、そこまでの性能が必要なユーザーの実数は少ないと思うので、こうした提案のラインナップも歓迎したい。
が、それでも19万であるし、繰り返しになるがフードが同梱されないところは不満がある。ちなみに対応フード(EW-73E)は公式ストアで税込4180円だ。

16mm時。ドエライシャープで気持ち良し。Lレンズ必要ないかも?って気持ちが写りだけで言えば心で存在感を発揮してくる感じがありました。全体的に、撮った写真を見ている感想としては「まぁ19万くらいはするよね」っていう性能です。為替も加味して「だいたい15万円くらいのクラスの性能かな?」みたいな不埒な想像をしていましたが、お値段相応だと思います。経験的にリードスクリュータイプのSTMってもう少し反応が鈍い印象を持っていたけれど、本レンズはそういったネガティブな印象を吹き飛ばすくらいに素晴らしいね。何が上手いって、絶妙にカニバらない見事なキャラ分けのレンズラインナップってこと。クラス的には「ちょっと良い」レンズになるけど、性能的には少し前のハイエンドに近いレンズが20万弱で、しかもF2.8通しで揃えられちゃうから、EFから引っ越してきても写りだけで言えば性能は同等以上で、軽くて機能性も上がっているからね〜。お見事です。
■絞りF2.8 1/60秒 プラス1.7露出補正 ISO160
ということで、キャッシュバックキャンペーンとかでLレンズにしたほうが良くね? というのが正直な感想です。
そんな本音はともかく、「究極の性能までは必要ないけれど、ソコソコ満足度の高い光学性能と、どうしてもF2.8の明るさが欲しい。だけど、大きく重いレンズを持ち歩くのは少しシンドイ」というワガママを叶える見事な戦略には脱帽。
それでいて、EOSが持っている「快速・快適」のコンセプトを存分に実感できることも素晴らしい。きっと同じシリーズの望遠ズームも開発されているだろうと予想されるので、そちらも楽しみである。