シグマから続々とキヤノンRFマウント用のレンズがリリースされている。今回紹介する30mmと56mmは、いずれも開放F値F1.4の単焦点大口径レンズだ。EOSのAPS-Cボディでは焦点距離換算の係数が1.6倍となるため、30mmは48mm相当の標準レンズ画角に、56mmは89.6mm相当の中望遠レンズ画角となり、どちらもキヤノン純正のAPS-C用レンズのラインナップにはないものとなっている。
※撮影共通データ ■キヤノン EOS R10 絞り優先AE

シグマ 30mm F1.4 DG DN | Contemporary(RFマウント) 主な仕様

画像: シグマ 30mm F1.4 DG DN | Contemporary(RFマウント) 主な仕様

●焦点距離:48mm(35ミリ判換算)
●最短撮影距離:0.3m
●最大撮影倍率:1:7
●レンズ構成:7群9枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:52mm
●大きさ・重さ:φ69.0×71.3mm・285g(キヤノンRF)
●付属品:フード

シグマ 56mm F1.4 DG DN | Contemporary(RFマウント) 主な仕様

画像: シグマ 56mm F1.4 DG DN | Contemporary(RFマウント) 主な仕様

●焦点距離:89.6mm(35ミリ判換算)
●最短撮影距離:0.5m
●最大撮影倍率:1:7.4
●レンズ構成:6群10枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:55mm
●大きさ・重さ:φ69.0×57.5mm・290g(キヤノンRF)
●付属品:フード

大口径ながら十分にコンパクト。そして軽量。

まずはレンズをEOSボディに装着してみると、その収まりの良さが心地いい。最近のAPS-C用レンズのコンパクトさ優先のラインとは異なるが、大型の高画質レンズのように異常なほど存在感をしめすものとも異なる。つまりは「ちょうどいい」のだ。

画像: 30mm。解像感を優先してF8まで絞って撮影。右奥にわずかに玉ボケが見えるがF8でもほぼ円形で周辺まできれいな円形を保っている。枯れ葉の穴に太陽を入れているがその右下に光彩が見られる。ただしこれは穴を通る光の特殊な屈折によるものだ。強い逆光だがフリンジは発生せず、周辺の産毛までシャープに描写している。 ■絞りF8 1/320秒 マイナス1.3露出補正 ISO100 WB:太陽光 RAW(DPPで無調整現像)

30mm。解像感を優先してF8まで絞って撮影。右奥にわずかに玉ボケが見えるがF8でもほぼ円形で周辺まできれいな円形を保っている。枯れ葉の穴に太陽を入れているがその右下に光彩が見られる。ただしこれは穴を通る光の特殊な屈折によるものだ。強い逆光だがフリンジは発生せず、周辺の産毛までシャープに描写している。
■絞りF8 1/320秒 マイナス1.3露出補正 ISO100 WB:太陽光 RAW(DPPで無調整現像)

今回使用したボディは筆者個人所有のEOS R10。EOSのAPS-C機最上位のEOS R7よりはひと回り小ぶりなボディだが、それでもバランスは良好。30mmはレンズ鏡筒が絞られたデザインで、56mmはピントリングあたりでやや膨らむデザインで寸胴に近く見える。また、全長が30mmの方が少し長く56mmの方が短い。

このあたりのデザインの違いが持ちやすさ等に影響していると思われる。筆者としては56mmの方が手にしたときのバランスが良く感じられた。重さ的には30mmが280g、56mmが285gといずれも軽量で似た重さであるため、形状の違いがそう思わせるのであろう。もちろんこのあたりはユーザーそれぞれの手のサイズにも依存する部分であり、どちらのレンズも開放F1.4のレンズとしてはかなりコンパクトな部類に入るといっていいだろう。

画像: 30mm(左)は純正レンズでも採用しているようなマウント径からレンズ鏡筒が絞られたそのままの径を先端まで維持するスリムデザイン。対して56mm(右)はマウント部からは絞られるがピントリングあたりでやや膨らんで径を大きくしている。

30mm(左)は純正レンズでも採用しているようなマウント径からレンズ鏡筒が絞られたそのままの径を先端まで維持するスリムデザイン。対して56mm(右)はマウント部からは絞られるがピントリングあたりでやや膨らんで径を大きくしている。

さて、シグマのRFマウント用レンズ(他社も基本同様だが)共通のポイントとしては、レンズ情報をボディ側が持たないため、キヤノン純正のデジタルレンズオプティマイザは使用できない。しかし歪曲収差や周辺光量、色収差、回折補正は利用できる。

また専用のコントロールリングを持たないが、それはキヤノン純正のRF-Sレンズも同様。ピントリングかコントロールリングか、どちらかに設定する必要がある。「ピントはAF任せ」という方はコントロールリングとして使って露出補正を割り当てるのも良いだろう。その代わり、いざマニュアルフォーカスで撮ろうと思ってボディをMFに切り替えてもピント合わせはできない。よって、イザという時に「動かない」と騒ぐことになる(笑)

EOSのメニューに「フォーカス/コントロールリング」の項目があり、ここで選んだものが本レンズのピントリングに割り当てられる。コントロールリングとして使用して露出補正等を割り当てると便利だが、ピントリングとしては機能しなくなるので設定したことを忘れないように。

レンズを装着してファインダーを覗くと「明るい!」と思わされる??

画像: 30mm。ちょっと伝わりにくいかもしれないが、これも角度を付けてパースのつき具合を確認しながら撮影したカット。画面全体に広がる草は周辺まで均一にキレのある描写。上の部分だけは距離がはなれてボケているが、やかましいボケ方はしていない。 ■絞りF5.6 1/500秒 マイナス0.6露出補正 ISO100 WB:オート ※ピクチャースタイル:モノクロ(オレンジフィルター) RAW(DPPで無調整現像)

30mm。ちょっと伝わりにくいかもしれないが、これも角度を付けてパースのつき具合を確認しながら撮影したカット。画面全体に広がる草は周辺まで均一にキレのある描写。上の部分だけは距離がはなれてボケているが、やかましいボケ方はしていない。
■絞りF5.6 1/500秒 マイナス0.6露出補正 ISO100 WB:オート ※ピクチャースタイル:モノクロ(オレンジフィルター) RAW(DPPで無調整現像)

いや、ナイナイナイ(笑)。デジカメのEVFだと、レンズの明るさなんて露出調整されて分からないから。にも関わらず明るいと感じさせられるのは…像にキレがあり、とてもクリアであること。そしてボケが大きくコンパクトズームが映し出す像とは明らかに異なるからだ。それがファインダーで視覚として実感できるのだ。

実際にデータでは中央から周辺四隅の部分までとてもシャープで、均一した画質。カリカリしたエッジではなく、細く丁寧なエッジでのキレの良さでとてもクリアだ。ボディ側補正とうまくマッチして各種収差も見当たらない。ボケはソフトでピント位置から丁寧に繋がってボケていく。実に気持ちがいい。

両レンズは画角が異なるため画としての描写は大きく異なる。

画像: 30mm。ちょっと角度を付けてるとパースもついてやや広角っぽい写りになる。階調の再現も良くメタリックな塗装の質感の再現もいい。空の部分を見ても分かるが、補正もあり周辺まで光量は安定している。 ■絞りF5.6 1/1000秒 マイナス0.3露出補正 ISO100 WB:太陽光

30mm。ちょっと角度を付けてるとパースもついてやや広角っぽい写りになる。階調の再現も良くメタリックな塗装の質感の再現もいい。空の部分を見ても分かるが、補正もあり周辺まで光量は安定している。
■絞りF5.6 1/1000秒 マイナス0.3露出補正 ISO100 WB:太陽光

30mmは45mm相当の標準レンズらしく、自然な遠近感が得られる。しかし、少し角度を付けて構えると逆にパースが際立って広角っぽい写りにすることもできるので、オールマイティーに使っていけるだろう。それでいて角度を付けても歪みが目立つことはないので常用にももってこいだ。

画像: 56mm。周辺まで安定した画質が得られるため、質感と色で見せるようなこういうカットも得意だ。本カットはRAWからの画像だが階調調整などはしておらず撮って出しと同じ状態。深いトーンとキレのあるエッジが見事にシーンとマッチしている。 ■絞りF1.4 1/800秒 マイナス0.7露出補正 ISO100 WB:オート RAW(DPPで無調整現像)

56mm。周辺まで安定した画質が得られるため、質感と色で見せるようなこういうカットも得意だ。本カットはRAWからの画像だが階調調整などはしておらず撮って出しと同じ状態。深いトーンとキレのあるエッジが見事にシーンとマッチしている。
■絞りF1.4 1/800秒 マイナス0.7露出補正 ISO100 WB:オート RAW(DPPで無調整現像)

一方56mmは84mm相当の中望遠ということで、用途としてはスナップやポートレートあたりか。今回はポートレートでの実写はしていないが各撮影距離での画質から見るに、ポートレートでも素直なシャープネスと美しいボケが得られるはずだ。

筆者は主にスナップベースでの撮影を行ったが、コンパクトなので常用にもまったく抵抗がなく、むしろ意識を集中させる視野に近いため気に入ったポイントを抜き取るような撮り方にはとても重宝した。

さすがは単玉。絞ればキレッキレの描写が堪能できる!

画像: 56mm。ビルの光る部分と影の部分の交差が気になりシャッターを切ったが、強い反射が入ってもゴーストなどは一切無し。しかも光に溶け込む窓枠から通常の明るさの部分への繋がりもとても自然。周辺までキッチリとした描写だ。 ■絞りF4.0 1/4000秒 マイナス0.3露出補正 ISO100 WB:オート

56mm。ビルの光る部分と影の部分の交差が気になりシャッターを切ったが、強い反射が入ってもゴーストなどは一切無し。しかも光に溶け込む窓枠から通常の明るさの部分への繋がりもとても自然。周辺までキッチリとした描写だ。
■絞りF4.0 1/4000秒 マイナス0.3露出補正 ISO100 WB:オート

どちらのレンズもよほどの逆光でなければゴーストは発生せず、耐性も十分。開放だけが能ではないので多少絞ってF4~F5.6程度で撮るとまさにキレッキレの描写を見せてくれて質感描写も得意だ。

ちなみに開放絞りのF1.4だが、晴天時の屋外では明るすぎてISO100でも露出オーバーとなってしまうことが多い。EOSのAPS-C機ではISO100よりも低感度側の拡張設定がないため、明るい場所でどうしても開放絞りで撮影したい場合はメニューから「シャッター方式」を切り替えよう。

画像: 56mm。開放からキレッキレで、背景のボケとのエッジの境目の描写がとにかくお見事。キレがあるのに嘘くさくないのだ。ちなみにEOS R10は通常1/4000秒までだが電子シャッターに設定することで1/8000秒を利用できている。ローリングシャッター歪みが気にならないシーンでは積極的に切り替えて開放絞りも使いたい。 ■絞りF1.4 1/8000秒 ISO100 WB:オート

56mm。開放からキレッキレで、背景のボケとのエッジの境目の描写がとにかくお見事。キレがあるのに嘘くさくないのだ。ちなみにEOS R10は通常1/4000秒までだが電子シャッターに設定することで1/8000秒を利用できている。ローリングシャッター歪みが気にならないシーンでは積極的に切り替えて開放絞りも使いたい。
■絞りF1.4 1/8000秒 ISO100 WB:オート

ここで電子シャッターを選択すれば、より高速なシャッター速度を利用することができる。動きの速い被写体ではローリングシャッター現象が出てしまう可能性もあるが、通常の撮影であれば電子シャッターでも問題ないはずだ。これはフルサイズ機でも同じ。安易に低速側のISO感度拡張を使うよりも、電子シャッターを使う方がお勧めでもある。

ということでこれら2本のレンズ、レンズが大口径というだけでなく描写性能も高く、1クラスも2クラスもカメラの性能を引き上げてくれる。言い換えればAPS-CのEOSを積極的に使うなら、ぜひとも使ってみたいレンズだ。キヤノン純正のラインナップにもないし、価格的にも良心的な設定。迷っている場合ではないぞ!

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