■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート
コシナ Voigtlander APO-SKOPAR 90mmF2.8 VM 主な仕様
●焦点距離:90mm
●最短撮影距離:0.9m
●レンズ構成:7群7枚
●最小絞り:F22
●フィルターサイズ:39mm
●大きさ・重さ:φ53×60mm・250g
●付属品:フード
ここで「名称」の説明をいたしましょう
「APO(アポ)」とは、光の3原色を構成するRGBの軸上色収差を限りなくゼロに近づける「アポクロマート設計」を採用したレンズの事を指します。アポクロマート設計の何が凄いの? というと、輝度差の大きなものが画角内にある(逆光シーンとかで木の枝とか葉っぱとか撮る、みたいな条件)と明るい部分との輪郭部に出る色ズレを抑えることができるので、クリアでシャープな印象になる、感じられる、とういうことです。ちなみにVoigtlanderブランドでアポを冠したVMの現行レンズは
・APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical
・APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical
・APO-LANTHAR 50mm F3.5 (Type Ⅰ/Ⅱ Limited)
・APO-SKOPAR 90mm F2.8 ← 本レンズ
・APO-ULTRON 90mm F2 ☆2025年1月発売☆
と5本あります=あるいは、現状で5本しかありません。
このように言い方によって印象が変わるので、念の為両方記述したけど、”APO”とは乱暴に言えば「性能に自信アリだぞ」って印です。だからといってアポ無しがヘボいか? っていうとそんな事無いので誤解無きよう。
製品コンセプトでどんな性能を目標とするか? が決まります。
例えば味わい重視であれば、数値性能が低くなってしまうこともあります。数値が低いからと言って描写の印象が悪いわけでは無いし、コシナレンズでは設定した性能を高い精度で射抜いてくる技術があります。
コシナに限らず、名称やスペックに依らず全てのレンズは等しく尊いものだし、その製品が誕生するまでには沢山の人の知恵と努力が込められているからね。
命名規則について話を戻すと、「NOKTON」はすっごい明るいレンズ、「ULTORN」は並の大口径ズームより明るいレンズ、「SKOPAR」は大口径ズームくらいの明るさのレンズ、と乱暴に理解できます。
で、APO-LANTHARだけは別枠で、「性能が鬼」ということになります。
「ピントを追い込む」という作業に感じる歓び!
中望遠レンズとしてはコンパクトで重さも250gしかありませんが、実際の感触は数値よりも少しズシリと手のひらで主張します。もちろんフォーカスリングや絞りリングの操作感はいつものコシナクオリティですので、安心してください。
“切れ味”という言葉が真っ先に浮かんでくるような描写に「なんでコレがアポランター銘じゃないの?」という疑念が生じるくらいの光学性能にまずビックリ。並のF2.8の気分でピント合わせをすると、レンズからの厳しいご指導を賜ることがあります。
それくらいにピント位置はギンギンのキレッキレで薄く見えました。この辺がどうにもアポランターっぽい。
LUMIX S5のEVFでも「切れ味」は分かるので、もっと良いEVFを持つカメラと組み合わせるとスキップしちゃうかもね。フォーカスリングの感触も良いので「ピントを追い込む」って感じが楽しい。敢えてのちょい前ピンとかね。
とまあ、撮りながらニヤニヤできるレンズです。そして背面モニターを眺めて感嘆、ニヤニヤが抑えきれないまま、また撮る。そんな幸せのループ。
十分アポを実感できるも、それでも「アポランターにあらず」?
周辺まで目を凝らして観察すれば「アポランターよりは少し滲むね」という感はあるけれど、このサイズ感からすると出来過ぎなくらいには周辺までしっかりとした描写に「アポが効いてますね」という気持ちになってきます。
ボケは背景写り込みの形状に依らず、癖なく自然なボケ味。切れ味と自然なボケ味の組み合わせのせいか、浮き出る立体感というか、中判カメラを使ってる時みたいな被写体の見付け方というか撮り方にだんだんシフトしてしまいました。
大きなフォーマットで撮ると、壁みたいな平面でも立体感が凄く出るのよ。伝わるかなぁ…。別に平面撮れってワケではなく、奥行き感の見せ方とかプリント時のサイズ感とかそういった部分のイメージが「より明瞭な状態で撮れる」と表現すると良いかな?
近接性は、スパルタンという表現では生温い、とは言いませんが90cm。数字だけで判断するとビックリスペックだけど、寄れない単焦点中望遠レンズもまだまだ多いので、業界標準といったところ。最近の望遠ズームが寄れ過ぎる(ありがとうございます)のだと思います。
例によって繰り出し量6mmのヘリコイドアダプターで最大繰り出しにすると、レンズ先端から約55cm程度まで接近することが出来ました。
「ゾナータイプは近接時描写が…」みたいな話も聞くけれど、個人的にはそこまで描写が悪化するようには見えませんでした。
逆光耐性については、光線状態によってはふわりと軽く光のヴェールを掛けることができる、といった感じ。フレアのコントロールが容易なところも素敵です。
スコパーにウルトロン…嬉しい選択肢というか、やっぱり狂気ですね。
APO-ULTRON 90mmF2を発表するという暴挙がなければ、「良いぞ、迷ってるなら買え」って無邪気にオススメできるのだけれど…出ちゃったからね。
コレまでのコシナの罪状からすると、性格がちょっと違うハズです。というのも、コシナは道楽の道をさらに楽しくする工夫というか、手練手管に長けた企画者によってあの手この手で似たようなスペックの違うレンズをブチ込んで来ています。
公式作例を見る限り、アポウルトロンの方が少し柔らかめに見えます。ということは、都市景みたいなのを狙いたいなら、このアポスコパーの方が勝手が良いかも知れない。サイズ的にも約90g軽量だしね…みたいな理由を付けて、好きな方を選んでください。