■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート
コシナ Carl Zeiss C Biogon T* 2,8/35 ZM 主な仕様
●焦点距離:35mm
●最短撮影距離:0.7m
●レンズ構成:5群7枚
●最小絞り:F22
●フィルターサイズ:43mm
●大きさ・重さ:φ52×29.8mm・200g
●付属品:-
「往年の名玉シリーズ・リバイバル」です。
…という注釈が公式ページにある通り、本レンズはContax時代=と言っても戦前の西暦1936年まで遡ることになりますが=レンジファインダー機のZEISS IKON製のContaxⅡと兄弟機であるContaxⅢに対応するレンズとして登場した「Carl Zeiss Jena BIOGON 3.5cm f2.8」へのラブレターというかオマージュというか…まあ、そんなもんです。
BIOGON 3.5cm f2.8のレンズ設計者はゾナーと同じくベルテレで…みたいな話はコチラではお呼びてないかと思いますので、気になる方はご自身で調べてみてください。
ともあれ胸ポケットに収まるくらいにコンパクトなサイズが特徴です。と言っても重さは約200gなので胸ポケットの種類を選びますが、普通のジャケットのポケットであれば良い感じに収まるサイズである、ということは確かです。
ZM(ツアイス)レンズなので絞りリングのステップは1/3段です。操作感はアルミっぽい硬質な、という感触を楽しめます。金属鏡筒って材質によって感触が違うのも楽しいと思うのだけど、どうでしょう?
レンズの質感は素晴らしく、触れていたい感高め。カラバリはブラックと今回のシルバーの2色展開。実に悩ましいですが、既にZMレンズを持っている場合は色分けすることでレンズ選びの際の視認性を上げるもよし。敢えての同色とすることでの偶然性を重視するもよし、で正解はありません。残念ながらどちらも大変に見目麗しいので、情熱に任せて選びましょう。
近接性は例によって70cmとスパルタンなので、ヘリコイドアダプターと組み合わせるのがよろしいかと思います。
中心部のキレは開放からお見事! んでも「夏」を感じたら絞りましょう。
息を呑むって言えば良いのかな?
PCでのチェック時に思わず身を乗り出してしまいました。撮影距離や絞り値を問わず素晴らしい描写力は旧年中に紹介したディスタゴンと通じるものがありますが、周辺部については先日紹介したディスタゴンの方が全然上。周辺部がキリッと写ってなきゃヤダって人は、肚を括ってディスタゴンにしましょう。
中央部はドキッとするくらいにキレが良く、開放絞りからガシガシ使えます、というか使いました。夏の光、と言っても近年だと5月末くらいから夏っぽさありますので、GW開けくらいからのピーカンの日では1段絞った方がスッキリするけれど、それ以外の季節や天気なら開放絞りを楽しみたくなります。
なので「そろそろ絞るか?」と思ったら夏到来かと…。
若干フザけた内容になってますが、語れば語るほど野暮だな、というガチ目の写り。絵作りや光線状態との組み合わせによってはかなりコントラストが立ったように見えるので、ハードボイルドなモノクロや日陰シーンなどとの相性が良さそうです。
繰り出し量6mmのヘリコイドアダプターで最大繰り出しにすると、レンズ先端から約17cm程度まで接近することが出来ました。これであれば、かなり自由度の高い撮影を楽しめそうです。
これが「肌が合う」ってやつなんだろうね。
ディスタゴンに触れた時には「私の人生の35mmレンズのゴールはディスタゴンだな」と密かに決意しましたが、本レンズに触れていると”燻し銀”感にヤラれて「本当の相棒はCビオゴンだったか。気付くのが遅くなってすまぬ」と真実の愛に目覚めた想いがしました。
筆者のインプレでは度々触れていますが、35mm画角が苦手です。
学生時代から克服出来ず、上手く扱えないモドカシサに途方に暮れることが良くあります。
なので、インプレ時には脳内シミュレーションを繰り返し、過去に比較的上手く行ったパターンを反芻することで、やっとの思いで作例を撮る、という危ない橋を渡っています。
ま、苦手意識が無いからと言って扱うのが上手い訳ではないけど、ウキウキハッピーでそのレンズを楽しんでいるような表現をしたいじゃない? 苦悩に満ちた写真見せられても欲しくならんでしょ。
んで、Cビオゴン君は不思議とスンナリ向き合えているような気がしました。
他にもそういったレンズが無かった訳では無いのだけど、そうした苦手意識が比較的少ない製品(35mmレンズ)であっても、気分によっては「なんか今日は違うな」という躓きか
ら苦手意識が爆発するお決まりのコンボに夜な夜な枕を湿らせていたものです。
このビオゴン君は5月末の撮了から季節を跨ぎ、仕事の合間であっても「今日はそこまで時間無いけど持っていこうかな」という気持ちにもなりました。
不思議と気が合うというか、このレンズの守備範囲がとても掴み易く感じて、足や視線が自然とその範囲内を捉えて動けているような。
これが肌が合うってやつなんだろうね。
スペック的には華が無いというか、取り立てて注目するところのないレンズではありますが、実際に使ってみると不思議と魅了されるものがあります。