シグマ 28-105mmF2.8 DG DN | Art Eマウント 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算28-105mm
●最短撮影距離:0.4m
●最大撮影倍率:1:3.1(焦点距離105mm時)
●レンズ構成:13群18枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:12枚
●フィルターサイズ:82mm
●大きさ・重さ:φ87.8×159.9mm・990g
●付属品:ケース・フード
●マウント:Lマウント/ソニーEマウント
依然としてビルドクォリティ高し。シグマのAFはトヨタのベンチマーク??
似たスペックのレンズとしては、キヤノンからRF24-105mmF2.8 L IS USM Zという弩級の一本があるが、こちらはシネ用途を強く意識した仕様・価格のため「本レンズのライバルか?」というとRFマウント版が現状用意されないことも含めてキャラクターは異なる、というのが筆者の見解だ。
本レンズのアピールポイントは何と言っても1kgを切る重さ990g(←Eマウント / Lマウントは995g)とサイズ感、そしてズーム全域での最短撮影距離40cmだろう。
重さ約1kgのレンズということで身構えていたが、実際に持ってみると重量バランスが良いせいか「あれ?本当に1キロあるの??」という感触だった。
製品としての質感は高く、鏡筒の結晶塗装風仕上げといいArtラインというよりもSportsラインのヘビーデューティーな雰囲気がある。が、フード脱着時にこの鏡筒仕上げのせいか、少しゴリゴリとした感触が伝わるのは少しだけ気になった。
ズームリングの操作トルクは一定で心地良い。ズームロックはワイド端でのみロックできる仕様。できれば任意の位置で機能させたい。試しにハンドキャリーを想定してロック無しで振り回してみたが、鏡筒は多少伸縮した。
ズーム前後での重量バランスの変化は非常に小さく感じられた。HLAによるAFは静粛かつ迅速で非常に快適。ここで白状しておくと、最近の筆者の感覚としてシグマのHLAのレスポンスをAFの快適性の基準として捉えている。
AF時にレンズ内部で重量物が動いているような感覚も無い。
近接性の高さについてはズームマクロ的な使い方も期待できそうだ。
最短40cm…実はかなり「控えめな公表値」のような気がしますが。
組み合わせたのはα7CR(付属のグリップエクステンション装着)。合計で約1.6kgなのだが、例によって手持ちで4時間ウロウロした感触としては「本当にそんなに重量あるの?」。アンチ重量級レンズ派を自称する筆者ではあるけれど、これなら悪くない。
撮影開始20分程度は歪曲補正ナシで撮っていたが、ここは補正アリが断然オススメ。
描写性は基本的に高いが、「周辺部までカッチリ」が好きなユーザーであれば1段絞っておきたいところではある。
特に中央部ではズーム位置や撮影距離問わず開放絞りからかなりのシャープネスで気持ち良い。注意点としてワイド側かつ至近域で被写体を周辺部に持ってくると若干無理させている感はあるが、そういうヤンチャを許容する撮影能力が付与されていることはとても嬉しく思う。
ちなみにテレ端時の最短撮影距離40cmはレンズ先端から約18cm、フード先端からだと約14cm程度のワーキングディスタンスなのだけれど、撮影していて「もうちょっと寄れてる気がする」と思って測定してみた。すると、筆者の環境(TAJIMA・コンベックスで手計測)ではさらに3cm弱ほど寄る事ができていたので、余裕のあるスペック表記なのではないだろうか?
ボケ味は、特にワイド側ではArtを冠するにしてはちょっとウルサイかな? という気がしなくもない。しかし取り回しが大変に快適であるし、背景を整理すれば解決することなので些事だろう。
それよりも気になったのは、特定条件でフレア・ゴーストがそれなりにドチャッと生じたこと。
が、色々とチェックしてみたところ、どうやらピンポイントで弱い条件を突いてしまったようなので、基本的にはクリアで頑張った逆光耐性があると言って良さそうではあるけれど、念の為報告しておく。
リリースではフレア、ゴーストに配慮した設計であることとナノポーラスコーティングなどのアピールがされていたので、サイズと重量の目標設定が相当厳しい上に28-105mmのズームレンジで画質バランスを追求することが困難を極めたというか、担当者の胃に穴を蝕むような開発だったのかな? と思ったりもした。
だってこのサイズでこの描写ですよ! 開発陣は言いたいことが山ほどあるのでは?
試用を通じて、非常に高い実力をよくこのサイズにまとめ上げることができたものだ、と感心させられた。実際に触れてみるまでは「どうせお仕事レンズでしょう」と邪推していたけれど、その予想は誤りで、数値よりも遥かに軽快に扱うことができ、お仕事だけでなく趣味の普段使いとしてもイケそうだと感じたことは驚きだった。
Lマウントで言えばLUMIX S PRO24-70mmF2.8は約935gもあることを思えば、かなり攻めたスペックを実現していると分かるし、同様にキヤノンRF24-105mmF2.8 L IS USM Zについても約1,330g(しかも三脚座を除いた重さ!)なので、本レンズの製品化をどんなチャレンジの果てに達成したのか? に思いを馳せるだけでもグッと来るものがある。
シグマ公式ページを眺めていると「加工難度の高いφ66.4mmのFLDレンズを搭載」とアピールされていた。これは以前レビューした500mmF5.6 DG DN OS | Sportsでも同様に触れられていたが、特殊低分散ガラスは通常の光学ガラスと比べてかなり柔らかく、高精度で加工するのは非常に難しいという話をよく耳にする。
加工が難しいということは生産現場泣かせであり、製造コストにも影響があることは間違いない。
控えめとは言え、商品ページで言及せずには居られないほどのドラマがあったからこその”匂わせ”だろう。そして「企業努力」という言葉でまとめてしまうのが憚られるほどの努力と工夫によって(公式オンラインショップでは約28万円と高価ではあるけれども)お手頃に感じられる価格を実現しているのだろうと思われる。