フォクトレンダー APO-LANTHAR 50mm F3.5 VM TypeⅡ 主な仕様
●焦点距離:50mm
●最短撮影距離:0.35m (0.7mクリック有)
●最大撮影倍率:1:3.5
●レンズ構成:6群8枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:39mm
●大きさ・重さ:φ52.0×45.0mm・250g(シルバー)/175g(ブラック)
●付属品:フード
※撮影共通データ■パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL MⅡ 絞り優先AE WB:オート
50mm単焦点で開放F3.5? それでいてアポランター??
「アポランターって何?」という正常な人に向け、アポランター銘に軽く触れておきます。
まず光の3つの原色を構成するR・G・Bの各色の軸上色収差を限りなくゼロに近付けるアポクロマート設計であることの証として「APO」が冠されています。ココについてはAPO-SKOPARやAPO-ULTRONなども同様です。
そして、さらに解像力やコントラスト再現性についても厳しい基準を設け、究極を追求したレンズに冠されるのがAPO-LANTHAR銘となる。「アポランター伝説」云々については各自検索して下さいな。
コシナの"コシナらしさ"を実感できる部分として「同じ光学設計ながら外観デザインの異なる2つのタイプに、それぞれのカラーバリエーションが存在」がある。
TypeⅠの特徴としては、沈胴式っぽいデザインを採用していたことで記憶に残っている人も多いかも知れない。ブラックとクロームのツートンカラーで真鍮素材を用いた245gのモデルと、マットブラックペイントのアルミ素材を用いた軽量な150gのモデルが用意されている。
TypeⅡはクラシカルだが一般的な外観デザイン。TypeⅠ同様に真鍮素材のシルバーカラー(250g)と、アルミ素材のブラック(175g)があり、今回テストしたのはTypeⅡのシルバーカラー(真鍮モデル)です。
TypeⅠとⅡには最短撮影距離に違いがあり、TypeⅠは0.45m、TypeⅡは0.35mと10cmの差がある。この差を大きいと感じるか小さいと感じるか。筆者にとってはかなり大きく感じられた。
コシナのVMレンズ選びでは、真鍮orアルミという素材と質感、重さの違いとカラーリングで悩まされるが、今回は更にデザインor最短撮影距離、という難題も突き付けられる事になったというわけ。
例によってピント合わせは「真剣勝負」です。
細身ながらもズシリとした重量感に「我は真鍮である」という感じがして気分が良い。いつもは「少しでも軽くあれ」と心から願うのに不思議なものである。
TypeⅠとⅡのどちらも、距離計連動範囲の分岐点となる0.7mでヘリコイドにはクリック感が設けられているが、このクリック感がシットリとしていて実に心地良い。
ピントリングの操作トルクは、例えばCOLOR-SKOPARやULTRONなどと比べて重めの設定。「慎重にピントを合わせるべし」と教えてくれているようだ。
質感はいつものコシナ。コシナ経験者であれば「理解した」となるだろう。やはり加工精度の高い金属鏡筒からでしか得られない栄養素がある、と確信する瞬間でもある。
過去にテストしたアポランターでは、ピントのシビアさというか、ピーキーな使い心地なので作例撮影には本当に神経を使った。
なので、NOKTONとかULTRONなどアポランターじゃないレンズの方が肩の力を抜いて撮影に挑めるので好み、と考えていたことを先に白状しておきます。
ちなみに「ピーキー」の理由は、ピントピークが尖っていてピントが合って見える範囲が小さいことにあり、例えばアポランター50mmF2ではZ 50mm F/1.2Sくらいの気持ちでピントコントロールをしていたので、F3.5の開放口径ではどうなるか? という部分が本レンズに対する一番の興味だった。
結論から言えば「F3.5のアポランターであれば緊張感とリラックスのバランスが良いのかも?」だった。
どこぞの「光学性能徹底追及、ゆえに巨大になりましたー」系とは違います。
描写は開放絞りからギンギン。しかも絞り込んでも解像感に変化はほぼナシ。とてもこのサイズのレンズから紡がれるとは思えないほどの美しい描写に「え? 本当にコンパクトサイズのお前がコレを??」という気持ちと「さすがはアポランターだな」が同居する。
使い心地については、アポランター50mmF2よりはずっとフレンドリーに感じたけれど、だからといって「F3.5だから」とヌルい気持ちで挑めば結果にちゃんと反映される。性能が売りのF2.0クラスのAFレンズを使っているよりも若干シビアな気持ちで扱うのがちょうどよさそうだ。
ただ、それでもPCでチェックすると「あ……来てない」というカットがいくつもあった。
例によってヘリコイドアダプターによって6mm繰り出しての撮影もやっているが、この条件でも近接時の解像劣化は感じられず、マクロレンズのような結像性能に驚かされた。
難しい(自身の技術を正直に反映する)レンズなので、ちゃんとキマった時の達成感は大きく、描写の良さがその感動をさらに大きくしてくれるように感じられた。
同じ50mmのカラースコパー50mmF2.2と悩んでいる場合、肩肘張らない撮影が好みであればカラースコパーがオススメ。小さい軽いがステキだし写りも良い。が、ちょっと緊張感があったほうが楽しいのであればアポランターがオススメです。
とかナントカ言いつつ「プラナー50mmF2最高だな」とか「ゾナー50mmF1.5の写りは腰が痺れるほど良い」みたいな感情も筆者は持っていて(カメラマンリターンズ最新号にて!)、もう後戻りできないところまで来てしまったみたいです。
最後に。製品のリリースノートをチェックしていて痺れたので紹介します。
”究極の性能という技術者の夢は時として独善に陥り、レンズのサイズや重量が増えることで撮影者の喜びとつながらない場合もあります。フォクトレンダーのレンズは、妥協のない光学性能を達成しながら、ハンドリングにも優れているべきであると私たちは考えます。”良いね!