パナソニック LUMIX S 100mm F2.8 MACRO 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算100mm
●最短撮影距離:0.204m
●最大撮影倍率:1.0倍
●レンズ構成:11群13枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ73.6×82mm・約298g
●付属品:フード
新型モーターの採用で、「パネェ」軽量化を達成!
「Lマウント版の100マクロか、ふーん」と軽く捉えてしまいそうだが、このレンズのキモはそのサイズ。鏡筒サイズがLUMIX SのF1.8単焦点レンズシリーズ(18mm/24mm/35mm/50mm/85mmの5本)と同一となる最大径73.6mmx全長82mmを達成しているのだ。
しかも筆者の知る限りでは、フルサイズ用の100mmクラスのマクロとして最軽量となる単体で約298gという、驚きの軽さを実現している。スペックを確認せずに試用開始し「すごく軽い」とは思っていたが、ある程度撮影が進んでから仕様書を確認した際に、二度見してしまった。もちろん等倍撮影が可能となる。
注目点のひとつとして新型のAFアクチュエータ「デュアルフェイズリニアモータ」の採用が挙げられる。従来のリニアモータと比べてユニット単体で約50g以上の軽量化と、サイズを約半分に抑えることに成功とのことなので、このサイズを実現した影の立役者だろう。
「ピント位置変動によるフォーカスブリージングを抑制した設計」という昨今のトレンドを当然のように取り入れており、動画対応のアピールも忘れていない。
ルミックスF1.8シリーズの「流れ」を完全継承?
第一印象はとにかく軽い。50mmマクロくらいのサイズ感しかないのに100mm画角なので、撮影中のイメージに乖離が少しあり、「フルサイズのカメラを扱っている感じじゃない」みたいな奇妙な感じがした。
ちなみに、現行Lマウントの100ミリクラスのマクロレンズと言えば、シグマの105mmマクロ(Artライン)がある。こちらは全長133.6mm、715gとほぼ倍のサイズとなっているので、本レンズがどれほどの事を実現しているのか、察することができるだろう。
手持ちの35mmF1.8と交互に触れてみてたが、外観・質感・使用感はF1.8単焦点シリーズと全くの同等。重心のバランスもほぼ揃っているように感じられたので、ジンバル使用時にも調整は最低限で済みそうだ。
条件が良い場合のAF速度は迅速かつ高レスポンス。マクロレンズと思えないほどの速さだが、実写時はソコソコといったところ。これはボディ側のAF性能に依るところが大きそうだ。
S5Ⅱでは特にAF-C開始時に対象がゴチャゴチャしているとAFスタートさせてから実際にレンズが駆動するまでにスキャンしているのか「空白の時間」が生じるので、特にスナップシーンでは適宜AF-Sに切り替えてからAF-Cさせるなどの工夫は必要だと感た。
「条件に左右されず淡々と仕事をこなす」デキるヤツ。
描写の傾向も、これまたF1.8単焦点シリーズと良く似ていた。
F1.8単焦点レンズシリーズと混ぜて使用しても同じイメージで画角だけが違う体験がとても面白い。個性を極力排した描写は業務向きでもあるが、だからといって表現力がない訳ではなく、フォトスタイルによってシステム全体でLUMIXらしさのある表現を訴求出来ている。
素晴らしい描写の100mmクラスマクロレンズが次から次へと登場している昨今の動向を踏まえると、誤解を恐れずに言えば「とても良く写るが感動する程ではない」という印象は否めない。が、このサイズでこの描写力と思えば、驚異を超えてもはや狂気の領域にある。コンセプトがハッキリしていて大変に素晴らしいと思います。
直接比較したワケではないけれど、描写力そのもので言えばシグマの105mmマクロArtの方が上。こちらは画像チェック時にニヤニヤが止まらなくなるが、本レンズは「マクロレンズらしく、よく写っている」くらいの感想だ。とは言え、開放絞りから十分にシャープで、意地悪なシーンでも色ズレは無く、逆光にも強い。ボケ味についても素直で扱い易く、なんの不満もない。
本レンズは平均的な100マクロと比べてスペック上の最短撮影距離が少し短い。例えばシグマの105mmマクロでは0.295mだが、本レンズは0.204mであり9cm違う。よって既に100mmクラスのマクロに慣れているユーザーであれば、その取り回しの違いはやや気になりそうだが、このレンズ単体で使う場合には全く問題なさそうだ。
「クセ者揃いの100マクロ界」に対するパナの回答は快答だった!
総じて、軽量コンパクトによる機動力の高さが印象的なレンズだった。フルサイズ機を使っている感覚が無く、撮影が軽快でとても楽しかった。
作例はないが、手持ちのS5と組み合わせでも満足度の高い使用感が得られた。S5はコントラストAFなのでAF-Cで撮影しているとレンズのAFモーターが頑張っている様子が手に伝わるが、AFレスポンスそのものはS5の方が良いように感じられた。
このあたりは、AFシステムの得手不得手もあるので、一概にどちらが優れていると言うものでもないのだけれど、S5ⅡのAF性能がもう少し進化すれば…と感じたシーンは少なくなかった。
本レンズの魅力は、こうした必要十分以上の描写性をこのサイズに詰め込んだことだろう。マクロレンズをこういった方向性で訴求してくるとは想像したこともなかったので本当に驚かされるし、Lマウント内でしっかりと棲み分けが出来ているように見え、仮にシグマレンズを持っていたとしても共存可能な点は新しい。
スタジオワークや風の無いシーンではシグマレンズが魅力的だが、フィールドワークやスナップでは本レンズの軽快さが光る。また描写の雰囲気が揃っているので、システムで統一したイメージを安定的に作成したい場合に、本レンズは合理的な選択肢となる。
LUMIXというシステムの特色がハッキリしていて、非常に良いね。欲しいです。