キヤノン RF10-20mmF4L IS STM 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算10-20mm相当
●最短撮影距離:0.25m
●最大撮影倍率:0.12倍
●レンズ構成:12群16枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:-(後部差し込み式)
●大きさ・重さ:φ83.7×112mm・約570g
●付属品:ケース
あの“EF11-24mm F4L USM”の、8年の時を経た到達点?
スペックをパッと見た時には「APS−C用かな?」とついつい思ってしまうが、10mm時には水平画角で約121度、対角で約130度というトンデモナイ画角。
にも関わらず、全長112mm、最大径約84mm、重量約570g。スペックから考えれば、このサイズ感は驚異に値する。
コンセプトの違いもあるので無邪気に比べてしまうことは良くないが、EF11-24mmは全長約130mm、最大径約110m、重量1.1キロ超の堂々たる体躯であった…これだけでも、もう十分。8年分の技術の進歩を感じ、興奮を禁じえない。おまけに10㎜スタートである。
新しい機能としては、広角レンズで目立ちやすい周辺部のブレをより効果的に補正する周辺協調制御に対応したこと。原稿執筆時点では、これに対応するカメラはEOS R5のみとなる。
ワンショットAFでの対応が無難かも
AFモーターはキヤノン自慢のUSMではなく、リードスクリュータイプのSTMを採用しているが、AFは快適な速度で動作する辺りにさすがキヤノンと思わせるものがある。
使用上の注意としてはサーボAFとトラッキングを駆使して撮影する場合には、超ワイドレンズという特性が影響しているのか、特に12mmよりもワイド時ではピントがバラつくぞ、という印象があった。
15mmよりもテレ側ではそうした印象はなかったが、適宜ワンショットAFに切り替えるなどの工夫を撮影時にした方が良いかも知れない。
実際に手にしてみてもスペック通りそこまで重くない。兎にも角にも画角が広いので、フレーミング時にアレヤコレヤと試してみたくなるが、巨大ではないのでワリと無茶な体制での撮影ができるというのも良いところだろう。
「物件撮影」用途では、必須レンズ間違いなし?
コンパクトな鏡筒に10mmスタートのズームレンズ、という要素からして「無理してんじゃないの?」と予想していたが、写りは上々。
正直な意見として、ギンギンにシャープな超高性能レンズという印象はないものの、周辺部の色ズレも目立たない見事な描写力だ。
逆光にも強く、明暗比の大きなシーンであってもフレアが出ることもなかった。歪曲はしっかり(ボディ内で)補正されるのでほぼ歪まない。これぞお仕事レンズの真打ち登場の感がある。特に「物件撮影用途」ではキヤノンの独壇場となりそうだ。
気になったのは、現状では補正データの対応が間に合っていないソフトでRAWデータを展開した場合に、ワイド端ではそこそこケラれがあることが見えてしまうこと。
これは逆に言えば「フルサイズ対応の10mm画角レンズをこのサイズで実現できた秘密」を垣間見た気もするが…。
とはいえそこは天下のLレンズなので、見せない工夫をして欲しかったという気持ちはある。だって30万超のレンズなんだもん、ワガママのひとつでも言いたい気持ちは当然あると思います。一応ですが、電子補正含めて企画・設計されているレンズだと思うので、そういうアラ探しのような作例は見せません。無粋ってもんよ。
強烈な個性に負けない使いこなし、できる?
「夕景撮ったら絶対に気持ちイイだろう」と思って狙い撃ちしてみましたが、案の定、バツグンに楽しかったね。こういった表現は今まではできなかったことなので、想像力を刺激してくれるレンズの登場は心から歓迎しています。実質的に「プライスレス」なのですから。
つまりは、必要だと思ったら買うしかないってこと。既にバックオーダーを抱えているとのことなので、それだけ必要としていた人が多い待ち望まれたレンズってことなのでしょう。
試用を終えての感想は、「楽しさと難しさが同じ勢いでやってくる強烈なレンズ」というものでした。
視覚を超えた画角で、少しでも角度を付けて撮影すると強烈なパースを楽しめるし、視覚効果的にも画角の広さ的にもこれまでにない表現が可能なのでトンデモナク楽しいレンズです。
と同時に、構図の設定が非常に難しい。想像よりも広い範囲が写るので、注意していても足や指などが写り込みやすい。さらに、安直に完結してしまうとワンパターンに陥りやすくなるとも考えられます。
従来のワイドレンズの難しさはもちろん、加えて明確な特徴を持つだけに、どこまで使いこなせるか? 37万円のレンズの出番が「一過性」だとしたら、あまりに悲しいので。