サイトロンジャパンが取り扱うKamLanブランドレンズに、新たにKL 70mm F1.1が追加された。ちなみにKamLanは台湾のMachang Opticalのレンズブランドだ。本レンズはCP+2023で参考出品されていたものとなり、登場を期待していたレンズのひとつ。対応マウントはキヤノンEF-M、ソニーE、フジフィルムX、マイクロフォ-サーズ。イメージサークルはAPS-Cフォーマット対応となる。

KamLan KL 70mm F1.1  主な仕様

●焦点距離:35mm判換算105mm相当
●最短撮影距離:0.8m
●最大撮影倍率:-
●レンズ構成:7群9枚
●最小絞り:F11
●絞り羽枚数:-
●フィルターサイズ:77mm
●大きさ・重さ:φ80×96mm・776g
●付属品:フード

加工精度は高いものの、強烈なボディサイズ…。

画像: 絞り開放で至近端のシーン。シビアに見ても至近端から10cm未満でごく僅かに滲む程度で、花びらの輪郭がキレイに再現されていることからも分かるとおり、素晴らしい光学性能です。ごく僅かな球面収差もF1.4くらいまで絞ればキリリと写るので、F1.1〜1.4の間が楽しい。接写性は「あと一歩!」という感が。あとピントリングのローレットパターンがもう少し指掛かりが良いタイプだともっと良いのに…。 ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1 1/6400秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

絞り開放で至近端のシーン。シビアに見ても至近端から10cm未満でごく僅かに滲む程度で、花びらの輪郭がキレイに再現されていることからも分かるとおり、素晴らしい光学性能です。ごく僅かな球面収差もF1.4くらいまで絞ればキリリと写るので、F1.1〜1.4の間が楽しい。接写性は「あと一歩!」という感が。あとピントリングのローレットパターンがもう少し指掛かりが良いタイプだともっと良いのに…。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1 1/6400秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

ソニーEマウントとフジXマウント版ではフルサイズ換算で約105mm相当画角、EF-Mでは1.6倍となるでの約112mm相当に、マイクロフォ-サーズでは約140mm相当の画角となる。

このレンズはフルマニュアルのレンズとなり、ボディとの通信には対応していないのでExifにレンズ情報と絞り情報が残らない。またボディによっては「レンズ無しレリーズを許可」の設定にする必要がある。

金属製のねじ込みフードは逆付けも可能だ。一度装着してしまえばおそらくは正位置で付けっぱなしになるかと推測されるが、着脱性は高く、ブラインド操作でも難なく装着でき、装着状態でブランドロゴがちょうど良いところに収まるなど加工精度の高さを感じさせる。

画像: キレ良く撮りたかったので、操作量的には少し絞った感じとなるF1.4〜2.0の間に。硬めに調整した画作りとのマッチングも良い感じ。105mm相当画角が久々ということもあり扱いに難しさがありましたが、描写が良いから頑張れました。この感じ、分かるかな? ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.4~2の間 1/105秒) マイナス0.3露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

キレ良く撮りたかったので、操作量的には少し絞った感じとなるF1.4〜2.0の間に。硬めに調整した画作りとのマッチングも良い感じ。105mm相当画角が久々ということもあり扱いに難しさがありましたが、描写が良いから頑張れました。この感じ、分かるかな?
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.4~2の間 1/105秒) マイナス0.3露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

レンズの質感は高く、絞りリングとピントリングのトルクも適切だが、手に汗握る夏場の屋外ではピントリングがやや滑りやすいようにも感じられた。
さらに室温では快適に感じたピントリングが、日中屋外ではややスレ感のある操作感で、微妙なピント合わせがやり難く感じるシーンが何度かあった。

絞りリングはクリックレスタイプなので動画との親和性が高そうだ。ローレットパターンは使い分けられているが、明確というほどの差異でもない。が、レンズが大柄なのでブラインド操作でもウッカリ操作はしにくいように感じられた。

ボディサイズはナカナカに強烈。フード装着状態で全長約13cmあり、鏡筒の最大径は約8cm。重さはフード込で約800gとAPS-Cフォーマットのレンズとして、という前置きを取り払ってもデカくて重い。
ピントリングの回転方向はXFレンズと同じだが、絞りリングは回転方向が逆となる。
外観の特徴として、前玉にフレアカッターと思しき遮光板が装着されている。

“Xマウント激戦区”に投入して大丈夫かいな?

画像: フリンジやらフレアやらを見たかったシーン。フレアが出てるので、PRO Neg.Stdじゃないみたいな表現になってますな。開放絞りでもこんなに写るんだ、という驚きとハイライトの滲みの少なさにはビックリ。前玉のフレアカッターと思しきマスク形状(丸ボケの上下が少しパッツン)がちょっとだけ光源ボケに出ちゃうので、電球を写し込むとかのシーンだと少し気になるかも? ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F11 1/80秒) プラス2.7露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PRO Neg.Std

フリンジやらフレアやらを見たかったシーン。フレアが出てるので、PRO Neg.Stdじゃないみたいな表現になってますな。開放絞りでもこんなに写るんだ、という驚きとハイライトの滲みの少なさにはビックリ。前玉のフレアカッターと思しきマスク形状(丸ボケの上下が少しパッツン)がちょっとだけ光源ボケに出ちゃうので、電球を写し込むとかのシーンだと少し気になるかも?
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F11 1/80秒) プラス2.7露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PRO Neg.Std

今回はフジXマウントでX-T5と組み合わせてテストしてみた。
いきなりネガティブですが、撮影前には「フジの中望遠レンズには、賛否はあれど明るさではXF50mmF1.0があるし、描写番長のXF90mmF2みたいな超銘玉もある。それに加えてコシナも今後中望遠レンズを投入してくる可能性も大。そんな状況でKamLanはどうやって魅力を訴求してくるのだろう?」みたいな事を考えたりもしました。

というのも、現状でEF-Mはほぼ息をしていないし、MFするには厳しいところがあると経験上考えています。かと言ってマイクロフォーサーズ機で本レンズを使うには少々デカい。もちろん、選択肢としては唯一無二のスペックなので存在意義は大きいのですが…。

それらを踏まえてみると、実質的にXかEマウント用であろう、というところに考察が着地するわけです。そのうえ、「某(それがし)、NOKTON50mmF1 Z-mountの興奮がまだ醒めやら胸の内。しかもつい最近ULTRON27mmF2を手に入れたばかり。如何にKamLanとてフォクトレンダーの牙城を崩すことは難しかろうて」みたいな、作例写真家にあるまじき心持ちでいたわけです。

実際に使ってみると、思わず二度見してしまう存在感のあるサイズではあるけれども、価格からは想像もできないくらいのハイレベルな描写力と、写真が楽しくなるような表現をしてくれることに、歪んだ感情が霧散しました。

そのポテンシャルや恐るべし! フレアもイー感じです。

画像: 趣味に走ってみましたが、こういう表現との相性も良いね。最新レンズだとキレ過ぎて擦れちゃうけど、良い感じに湿度が感じられます。 ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1~1.4の間 1/2000秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

趣味に走ってみましたが、こういう表現との相性も良いね。最新レンズだとキレ過ぎて擦れちゃうけど、良い感じに湿度が感じられます。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1~1.4の間 1/2000秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

描写を説明すると「柔らかさと繊細なシャープネスを兼ね備えた…」といった聞き飽きた陳腐なセリフになってしまうのが筆者の力不足ではますが、とにかくベラボーに素晴らしいです。
整形していない素の良さがある、みたいな事を述べれば問題になりそうな昨今ではありますが、なんというか、「良いレンズってこうだよね」な感あり。

いわゆる“絞りの効く”レンズではありますが、基本性能が高いので開放絞りからでも普通以上にシャープな描写を楽しめますし、近接時でも「ポヤポヤだな」とはなりません。
収差類も軽微で、歪曲は基本ほぼゼロで至近側でのみ僅かに樽型でした。

良い感じに薄いヴェールをまとったような柔らかさのあるフレアが開放近辺では割と簡単に出ますが、これは筆者的にはむしろご褒美となります。
写りに妙な癖は全くなく、至って素直。強い光の下では少しホワっとしますが、日陰で少し絞ればキリリ具合はナカナカのもの。
扱いの難しさがあるとすれば、105mm画角で開放F1.1のレンズをMFするのはそれなりにシンドいところ。

画像: 歪曲は、強いて言えば樽型。無視できるレベルだと思います。縦横線のボケの感じをチェックしていますが、基本的に目立たずキレイにボケてるね。金網や石畳を背景に写し込む際にウルサクならないぞ、という予想が付きますね。シグマの初代50mmF1.4 Artはこういうシーンで少しウルサイ、といえば極々一部の人には「あー、あれね」みたいなのがあると思います。 ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1 1/800秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:クラシックネガ

歪曲は、強いて言えば樽型。無視できるレベルだと思います。縦横線のボケの感じをチェックしていますが、基本的に目立たずキレイにボケてるね。金網や石畳を背景に写し込む際にウルサクならないぞ、という予想が付きますね。シグマの初代50mmF1.4 Artはこういうシーンで少しウルサイ、といえば極々一部の人には「あー、あれね」みたいなのがあると思います。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1 1/800秒) マイナス1.0露出補正 WB:オート ※フィルムシミュレーション:クラシックネガ

近い画角でこれより良い大口径レンズとなると、パッと思いつくところはボケマスターことシグマの105mmF1.4 Artか、FマウントだけどニコンのAF-S NIKKOR 105mm f/1.4E EDあたりが候補となりそう(そもそもの競合が少ないってのは分かっていますよ)です。

無論、それらのレンズの方がクリアさやシャープネスで2枚ぐらいは上手ですが、お値段からすれば当然です。むしろ良くなきゃ困りますが、例えば筆者の大好きだったDC Nikkor105mm f/2 Dよりは間違いなく良いぞ、というレベルにはあります。

Xシリーズユーザーの観点で言えば、クラシッククロームなどで硬く撮っても楽しいし、ETERNAなどで柔らかく撮ってもキモチイイ。もちろんプロビアで普通に撮っても良い感じです。ってことで絵作りを選ばない柔軟性があるように思っています。

“よんまんえん”で幸せが買えますyo!!!!

まとめとしては、サイトロンジャパンの公式ページに記載してある製品特徴を鵜呑みにしてエイヤ! と購入しても、一切裏切られることのないレンズでありました。

あと10cm寄れればもっと素晴らしいし、もう少し軽ければ言うこと無いけれど、この描写は体験するだけの価値があると思います。
表現が難しいですが、模範的なクラシックレンズの銘玉みたいな感じ。癖がなく手軽に楽しめる素直な高性能レンズだけど味わいもある逸品が4万円! 一般的な感覚では4万円というとちょっと高価、沼の住人には誤差みたいな金額でしょう。

画像: “よんまんえん”で幸せが買えますyo!!!!

ちなみにX-T5との組み合わせではMFしやすかったですが、X-Pro2との組み合わせだとコツや慣れが必要そうに感じました。あとはボディ内手ブレ補正機構はあった方が良いね。換算とは言え105mm相当画角なので、ブレにはそれなりにシビアです。

と、ここで冷静さを取り戻しましたよ。

画像: キレが良いのにバキバキしてないところが良いねぇ…。お値段からすると光学性能が良すぎますので、どこかがこの光学系そのままでOEMかODMになるのか分からないけれど、通信対応にバージョンアップさせてくれれば、注目を集めそうな予感のあるレンズだとは思うのよね。 ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1~1.4の間 1/1100秒) WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

キレが良いのにバキバキしてないところが良いねぇ…。お値段からすると光学性能が良すぎますので、どこかがこの光学系そのままでOEMかODMになるのか分からないけれど、通信対応にバージョンアップさせてくれれば、注目を集めそうな予感のあるレンズだとは思うのよね。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F1.1~1.4の間 1/1100秒) WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

最後に、SAMYANGのAF75mm F1.8が本レンズにプラス2万5千円程度で手に入ることも無視できません。ただ、まだ触れてないので何ともは言えないのが歯痒いところです。
公開されている作例やレビューの画像を見る限りはサムヤンの方が現代的な写りで、本レンズの方が柔らかな印象ではありますので、写りだけで言えば筆者の好み的には間違いなくKamLanです。しかし、サムヤンは重さが本レンズの約1/3しかないという現実を無視することはできません。

味わい深いKamLan vs 常用性のサムヤン、実に悩ましいと言いたいところではありますが、普段使いするなら機材はコンパクトな方がエライと考えている筆者的には「仮に自分が買うならサムヤンだろうな」という気持ちがあることは正直に記しておきます。デカい重いだとね、気合入れないと持ち歩かないからね。ここは製品企画の難しいところだよね。

最後の最後でカムランを下げるような物言いとなりましが、描写はお世辞抜きでスコブル良いです。解像至上主義者だと物足りないところがあるとは思いますが、トヨタ的には大変に素敵な描写が見事だと思いました。

画像: と、ここで冷静さを取り戻しましたよ。

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