すでに、ライカL、ソニーE、フジX、マイクロフォーサーズ、キヤノンEF-Mマウントが存在するAPS-Cサイズ対応単焦点レンズのZマウント版。高性能であることのみならず、小型&軽量に仕立て上げることも重要なテーマに掲げている「Contemporary」ラインに属する三兄弟だ。このシグマレンズのラインアップに、いよいよZマウントが加わったということで、ニコンユーザーには嬉しい選択肢の拡充だといえるだろう。■撮影共通データ ニコン Z 50 WB:オート ピクチャーコントロール:オート

16mm F1.4 DC DN | Contemporary 主な仕様(Zマウント)

画像: 16mm F1.4 DC DN | Contemporary 主な仕様(Zマウント)

●焦点距離:35mm判換算24mm相当
●最短撮影距離:0.25m
●最大撮影倍率:1:9.9
●レンズ構成:13群16枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ72.2mm × 94.3mm ・420g
●付属品:フード
■実勢価格:7万7000円

三兄弟にて「令和のサイズ感」を見た!

画像: F1.4の開放F値でも、風景的な写真がここまでシャープに撮れることに驚いた。ダテではなくオールマイティな実用性を備えた開放F値F1.4である点は、高く評価すべきだろう。■絞り優先AE(F1.4 1/2500秒) マイナス1.0露出補正 ISO100

F1.4の開放F値でも、風景的な写真がここまでシャープに撮れることに驚いた。ダテではなくオールマイティな実用性を備えた開放F値F1.4である点は、高く評価すべきだろう。■絞り優先AE(F1.4 1/2500秒) マイナス1.0露出補正 ISO100

3本並べて見てみると、昭和生まれのフィルム世代には「常識的サイズ感」みたいなモノがバグりそうになる大きさバランスのブラザースではある。35mm版換算84mm相当となる「56mm F1.4 DC DN」が一番コンパクトで、同24mm相当の「16mm F1.4 DC DN」がひときわ長い外装を持つからだ。
 
何を今さら…的な、ガチガチに錆びついた感覚であることは重々自認も、「24mm(相当の16mm)がいちばん長くて重いのか…」というのが率直な第一印象。ちなみに、各々の重さは16mmが420g、30mmが285g、56mmは295gで、実際には「重い」わけではなく、開放F値F1.4のレンズとしては驚くほどに小さく軽い。

そこのところは誤解しないで欲しいのだが、カメラバッグの奥底にこの3本が放り込まれていたとしても、16mmだけは手探りで確実に引っ張り出せることは間違いない、そんな差はあるということである。

画像: 絞ると硬さが前に出てくるレンズなので、好みによっては絞り開け開けで迫るが吉。比較的近接にピントを置いたときの背景ボケも、ご覧の通り素直なもの。超広角レンズは絞ってナンボってな古い感覚はこの際、捨てちまいやしょう。 ■絞り優先AE(F1.4 1/500秒) プラス0.7露出補正 ISO100

絞ると硬さが前に出てくるレンズなので、好みによっては絞り開け開けで迫るが吉。比較的近接にピントを置いたときの背景ボケも、ご覧の通り素直なもの。超広角レンズは絞ってナンボってな古い感覚はこの際、捨てちまいやしょう。
■絞り優先AE(F1.4 1/500秒) プラス0.7露出補正 ISO100

今回の試用で使用したボディは自前のZ 50。というワケで、とりわけこの「16mm F1.4 DC DN」とのコンビではレンズヘビーなホールディングバランスになるのではないかと少々、危惧していた。しかし、実際に使ってみるとボディが軽量であることも相まってか、ド真ん中の重心点に真っ直ぐ適度な重さがかかる感じ=想定外ともいえる「手のひらへの収まりの良さ」=が得られて目からウロコがポロリ。
ただし、これはEVFを用いて撮影している時のハナシ。よってZ30と組み合わせる時には異なる印象を抱くやもや。

開放から高性能=黙々と仕事をこなす、デキたヤツ。

画像: 絞りF11まで絞って撮ってみたけれど、ここまで絞る旨味はほとんどない。なぜなら、この段階ですでに回折ボケが感じられるようになるからだ(回折補正はオン)。ガッチガチなシャープさを優先するなら、絞りF8まででカタをつけるようにした方がよさそうだ。 ■絞り優先AE(F11 1/40秒) マイナス0.7露出補正 ISO100

絞りF11まで絞って撮ってみたけれど、ここまで絞る旨味はほとんどない。なぜなら、この段階ですでに回折ボケが感じられるようになるからだ(回折補正はオン)。ガッチガチなシャープさを優先するなら、絞りF8まででカタをつけるようにした方がよさそうだ。
■絞り優先AE(F11 1/40秒) マイナス0.7露出補正 ISO100

開放時からF1.4の大口径レンズとは思えないほどパッキリした描写を見せるレンズだ。f2まで絞ると、パッキリ具合が目に見えて向上するのが面白い。ハイコントラストな中心部と比較した場合、開放時の周辺部にはわずかなユルさを感じることもあるが、F1.4であることを考えれば上出来以上のデキの良さ。

さらに、周辺光量も豊かであり、ボディのヴィネットコントロールを切ってもそれほど劇的な雰囲気は作れないところが、かえってつまらなかったりもして…。いや、こりゃゼイタクな不満ってヤツなのだが、要するにそれだけ描写に関しては心配無用であるということ。描写性能至上主義であれば、即買いしても後悔はしないだろう。

30mm F1.4 DC DN Contemporary 主な仕様(Zマウント)

画像: 30mm F1.4 DC DN Contemporary 主な仕様(Zマウント)

●焦点距離:35mm判換算45mm
●最短撮影距離:0.3m
●最大撮影倍率:1:7
●レンズ構成:7群9枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:52mm
●大きさ・重さ:φ70×75.3mm・285g
●付属品:フード
■実勢価格:6万500円

三兄弟でも最軽量。ちょいと細長ではありますが。

画像: ボケの安定性が印象を左右しそうな場面でも、安心して「F1.4開放のボケ」を堪能できる優秀なレンズである点は16mmと同様。ちなみに、ラインアップの中では他の2本よりも若干お安い希望小売価格となっております。 ■絞り優先AE(F1.4 1/4000秒) ISO100

ボケの安定性が印象を左右しそうな場面でも、安心して「F1.4開放のボケ」を堪能できる優秀なレンズである点は16mmと同様。ちなみに、ラインアップの中では他の2本よりも若干お安い希望小売価格となっております。
■絞り優先AE(F1.4 1/4000秒) ISO100 

ボディ装着時に56mmとの重さの違いがハッキリ認識できてビックリだったのが「30mm F1.4 DC DN」。スペックで見る限り、両者にはわずかに10gの違いしかないのだが、手にするとハッキリ「コッチの方が軽い」ことが分かるのだ。

Z 50装着時の見た目バランスでいうと、30mmの外観は個人的にはまだ「細長」に過ぎると感じつつも、中庸な(だからこそジツは使いこなしが難しい35mm版換算45mm相当の)画角と軽快なハンドリングのコンビネーションはなかなかに痛快。

近距離撮影時の大ボケから中距離撮影時のちょいボケまで、ボケに一切の破綻を見せないところは、さすがはミラーレス機に特化した現代っ子単焦点レンズである。

なぜかここでGR Ⅲxの魅力を再確認。

画像: 30mmという実焦点距離の持つ万能感。それに華を添える「開放F1.4の明るさ」。どうです、この整いまくっているボケたちの共演! 30mmのほぼほぼ最短撮影距離(約30cm)で撮っているとは思えない仕上がりだ。 ■絞り優先AE(F1.4 1/1000秒) プラス0.7露出補正 ISO250

30mmという実焦点距離の持つ万能感。それに華を添える「開放F1.4の明るさ」。どうです、この整いまくっているボケたちの共演! 30mmのほぼほぼ最短撮影距離(約30cm)で撮っているとは思えない仕上がりだ。
■絞り優先AE(F1.4 1/1000秒) プラス0.7露出補正 ISO250

16mmよりもエッジの立たない描写になることが多く、それゆえなのか開放F1.4時の画質も、さらに均質性が高い印象だ。最高レベルのシャープさを得たいのなら、F2からF8の間で絞りを選択するがよさそうだ。

一方、Contemporaryラインならではのオールマイティさにおいて、三兄弟の中ではこのレンズが最も優れているように感じたのは、広角的にも望遠的にも使える「35mm版換算45mm相当の画角」の利点が人知れず作用しているからだろう。

実焦点距離30mmとクロップ画角45mm相当のミラクルな関係性には、26.1mmレンズを搭載するリコー「GR Ⅲx(40mm相当)」の魔力に通じるものを感じたりもしたのだが…なるほど、GR ⅢよりもGR Ⅲxの方が使っていて圧倒的に楽しいのは、そういうコトだったのね!(本題とは無関係な気づき)

画像: この三兄弟すべてに共通の弱点は「常に最大限の注意を払っていないと容易に手ブレに襲われてしまう」ところにある。これは、ZのAPS-Cモデルに手ブレ補正の装備がないことが思いっきり足を引っ張っている部分で、レンズに責任はないといえばその通り。でも、泣きを見るのは撮影者自身である。 ■絞り優先AE(F11 1/640秒) マイナス2.0露出補正 ISO8000

この三兄弟すべてに共通の弱点は「常に最大限の注意を払っていないと容易に手ブレに襲われてしまう」ところにある。これは、ZのAPS-Cモデルに手ブレ補正の装備がないことが思いっきり足を引っ張っている部分で、レンズに責任はないといえばその通り。でも、泣きを見るのは撮影者自身である。
■絞り優先AE(F11 1/640秒) マイナス2.0露出補正 ISO8000

56mm F1.4 DC DN | Contemporary 主な仕様(Zマウント)

画像: 56mm F1.4 DC DN | Contemporary 主な仕様(Zマウント)

●焦点距離:35mm判換算84mm相当
●最短撮影距離:0.5m
●最大撮影倍率:1:7.4
●レンズ構成:6群10枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:55mm
●大きさ・重さ:φ70×61.5mm・295g
●付属品:フード
■実勢価格:6万9300円

Z 50とのバランス=佇まいは、この三男坊がイチバン!

画像: 若い頃から苦手だった中望遠単焦点レンズなのに、今回一番カット数が多かったのはこの56mm。何かに取り憑かれたみたいだったけど、サイズ感がドンピシャで使っていて気持ち良かったのも事実だ。 ■絞り優先AE(F1.4 1/2000秒) ISO180

若い頃から苦手だった中望遠単焦点レンズなのに、今回一番カット数が多かったのはこの56mm。何かに取り憑かれたみたいだったけど、サイズ感がドンピシャで使っていて気持ち良かったのも事実だ。
■絞り優先AE(F1.4 1/2000秒) ISO180

そして、もっともコンパクトな「56mm F1.4 DC DN」は、三兄弟の三男坊(単に登場順)。フードを含めたスタイル(外観デザイン)とサイズ感がZ 50にドンピシャなのがイイ感じだ。個人的な好みに左右される部分ではあるが、三兄弟の中では、この56mmとZ 50の組み合わせが(見た目には)イチバン美しい思うのである。

画像: 最短撮影距離は50cmと、焦点距離なりの仕様(画角を考えれば寄りの実力は十分)ではあるのだけど、今回は他の兄弟と一緒に使ったせいで「56mm、意外に寄れないんだよなぁ」と思い続けることに。「16mmの25cm」の方がレンズの全長を含め「ドンと接近して撮れる」印象に勝っていただけの話なのだが…。 ■絞り優先AE(F1.4 1/200秒) マイナス1.0露出補正 ISO100 フラッシュ使用

最短撮影距離は50cmと、焦点距離なりの仕様(画角を考えれば寄りの実力は十分)ではあるのだけど、今回は他の兄弟と一緒に使ったせいで「56mm、意外に寄れないんだよなぁ」と思い続けることに。「16mmの25cm」の方がレンズの全長を含め「ドンと接近して撮れる」印象に勝っていただけの話なのだが…。
■絞り優先AE(F1.4 1/200秒) マイナス1.0露出補正 ISO100 フラッシュ使用

F1.4時に、パッキリしている中にも、ごくごくわずかにソフトな味わいを残す描写(それでもF1.4開放であることを考えれば十分以上にシャープ)、F2まで絞れば精細感がいきなりグンと向上するのは、他の兄弟たちと共通の傾向。

ただ、絞っても硬さを感じさせないところは、このレンズならではの味わいだ。開放時の被写界深度が浅くピント面が"薄い"ことに加え、自然にボケを意識した撮り方をすることが多くなることもあり、他の2本よりも優しい雰囲気の仕上がりになることが多いようにも感じられている。

ボケの美しさが問答無用に楽しい!

画像: 他マウントの同レンズとの比較では、16mmと56mmが1万5000円ほど、30mmが8000円ほど高い価格設定になっている。Zマウントには、目に見えないコストがかかるということなのだろうけれど、それでもZユーザーには純正以外の選択肢が増えることは喜ばしい現実。今後の展開にも期待したい。 ■絞り優先AE(F1.4 1/800秒) マイナス0.7露出補正 ISO100

他マウントの同レンズとの比較では、16mmと56mmが1万5000円ほど、30mmが8000円ほど高い価格設定になっている。Zマウントには、目に見えないコストがかかるということなのだろうけれど、それでもZユーザーには純正以外の選択肢が増えることは喜ばしい現実。今後の展開にも期待したい。
■絞り優先AE(F1.4 1/800秒) マイナス0.7露出補正 ISO100

ただ、それってレンズ自身の特性というより、撮り手が「そういう写真を撮るようレンズに操られている」からであるような気が…。中望遠単焦点レンズに対する苦手意識がワタシの中に根強くあるのは、そういう「レンズの尻に敷かれる」ような感覚があるからなのかも? 

とかナンとか言いながら、今回もっとも撮影枚数が多くなっていたのはこのレンズだったし、キレイなボケがジツに心地よくもあり…って、うわっ、やっぱりレンズに主導権を握られている! 撮りたい気持ちとレンズの吸引力のせめぎ合いを苦もなく楽しめそうなアナタには、いの一番に手を出すべきレンズであるといえそうだ。
 

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