Xシリーズといえば一応「マウント情報は公開してまっせ」のスタンスを採っていますが、不思議とサードパーティの参入がありませんでした。特にタムロンとシグマ(アルファベット順ね)の両巨塔は沈黙を続けていました。しかし、そんな暗黒時代にもついに光が差し込んだのです!!
待望のタムロン=フジXマウント!!!!
多少大袈裟に表現したけど、個人的な気持ちは上記の通り。いやーめでたいね!
あとはシグマ参入を待つばかりです。
ってことで今回はタムロンが得意とする超高倍率ズームレンズの最新版でしかもXマウント版。超高倍率ズームレンズといえば、富士フイルムが手を付けてなかったジャンルでもあります。
例によって、詳しいことは製品ページ(この記事のいっちばん最後にリンクあり)を確認して下さい。
本レンズのサイズ感はXF70-300mmと大体同じ。最大径が約76mm、全長約126mm、重さ620gというスリーサイズ。比較的コンパクトに仕上がっていると評価できますが、絶対的ちょっぴり太めのこのレンズ。X-H1やX-T4などのワリとしっかりしたボディとの組み合わせはかなりバランスが良い印象がありますが、X-E4やX-S10、X-T30系との組み合わせだとややレンズヘビーな感じになります。
ついでに言えば、机などに置いた際にレンズ鏡筒の方がボディ底面よりも先にヒットするタイプです。たとえば使用する三脚座のサイズにも注意しないと、場合によっては干渉してしまう可能性があります。すこしワガママボディですが、光学的に頑張っているとも受け取れるので期待は高まるばかり。フードやレンズキャップの着脱性も良く、というかXFレンズより着脱しやすい説すらありますし、悪名高きニコンのZレンズと比べるとそれこそ天と地ほどの差があります。ニコンはタムロンからよく学ぶように。絶対だぞ。
残念ながらパーフェクトではない仕上がり…。
テサードパーティでXマウントに通信対応しているレンズはいくつかありますが、コシナを除けば基本的に挙動はイマイチ。なので、タムロンレンズとXシリーズの相性はどうなの??というのが気になるところです、が…結果は、残念ながらギリギリ不合格かな。理由は
1:LV画像に歪曲収差補正が反映されない。
2:動画記録では歪曲収差補正が適用され…るけど、ワイド端で効果が小さい。
3:X-H1との組み合わせだと時々勝手に絞り優先オートに切り替わってしまう。
4:19mm近辺で歪曲収差補正が過剰補正となる。の4点。
1:については、撮影画像には歪曲補正が適用されますが、LV画像は焦点距離と撮影距離によってはギュンギュンに樽型や糸巻き型の歪曲が見えるでござる。一眼レフ時代を彷彿とさせるLV表示に一瞬胸が熱くなりましたが、ご機嫌は麗しくはございますまい。ミラーレス機だと歪曲って補正されて当たり前みたいなところがあるし、純正レンズやソニー版だと綺麗に補正されているから、やっぱり気になっちゃうよね。
2:について。動画記録だと歪曲補正が効いてはいるんだけど、ズームレンジが超広いので補正効果のバランスをとるために一部のズーム位置では補正効果が弱くなっちゃうみたい。
ズーム位置によっては気にならないし、動画だと上下が少しトリミングされるので実用上で問題となるシーンがあるか?と言われれば微妙なところ。
動画で歪曲を「味わい」として楽しめる人なら問題ないけどね、まぁ正直そんな奇人はレアケースだと思います。
3:について。この症状はViltroxやトキナーのatx-m Xの3本を使うと我がX-H1ではしばしばお目にかかる現象。純正同士の組み合わせだと発症しませんが、サードパーティ製のレンズと組み合わせた際に我がX-H1特有の症状かも…の可能性はあります。
Pモードで撮影していると突然f/40とかf/11とかに設定されたり、絞りが_ _って表示になったりするので地味に困ります。Viltroxなどと違って測光タイミングとAF絞りのタイミングが上手く同期しなくてAE/AWBにガツンと影響しちゃうみたいな、そういう噴飯物のバグではないので可愛いらしいワガママみたいなものです。
4:について、19-30mmくらいの間で撮影画像を見てみると補正過剰で糸巻き型の歪曲が出てしまいます。被写体によっては気になるかな。
描写性能は「素晴らしい!」の一語に尽きますな。
描写はどうなの?というと、実に良好です。特にテレ端とか信じられないくらい解像します。写真だけ見てると、とてもじゃないけど超高倍率ズームで撮影したとは思えない。この原稿を記述しながらチェックしてますが、まだ超高倍率ズームと信じられてません。あとフィルムシミュレーションというか、フジの絵作りとのマッチングも良いような気がします。
光学的な話で厳しい事を言えば、例えば紅葉とかを空ヌキで撮るとワイド側での周辺部は厳しい。でもね、そういうマクロな部分に文句言うような人はそもそも高倍率ズーム使っちゃダメだよ。
逆光耐性は丁度良い感じ。十分に強力だけど、抑えきれない時でも良い具合にフレア・ゴーストが出るので、逆光らしい表現が可能です。
例えばZ18-140mmはメチャクチャ逆光に強いんだけど、オーバーフローした時は目立つカタチでフレア・ゴーストが出るし、あまり美しくないです。フレアの影響が少ない分、目立つ感じ。
寄れる作例を今回あまり撮ってないのだけど、メチャクチャ寄れるってのは非常にGoodです。ワイド端でレンズ先端から5mmまで寄れるので、枠のゴツいフィルター付けてると場合によっては影響がありそう。テレ端でも1mを切るところまで寄れるので本当に使い勝手が良い。この瞬間がタムロンだね!
AFは速度精度ともに優秀。一応指摘をすれば、ズーム操作をしながらAFを繰り返すような使い方をする人だと、X-T2世代のエンジンとセンサーのカメラではAFがちょっと気になる事はありました。というのもズーム倍率が大きい&バリフォーカルレンズなので、ズームするとピンぼけ→AFサーチ というのがワンセットなんです。
こういう動作をした時に最新世代のX-T4とかだとピントの検出力が高いのでピンぼけからでもスコスコAFしてくれますが、X-H1などのように一世代前のカメラだと大ボケのままAFが固まってしまうことがあります。もっともこれは超高倍率ズームレンズ全般に当て嵌まる弱点みたいな部分なので目くじらを立てるほどの事でも無いけど、理解せずに使っちゃうと気になるんじゃないかな。
なんだかんだでファームアップに期待大!
ってことで、期待のXシリーズ x タムロンの組み合わせ。
描写性能的には大満足の太鼓判&使い勝手も上々。「寄れない」が常識だった超高倍率ズームはもう既に過去のものだね。
豊田的に不満だったのは歪曲補正と通信に関わる部分だけ。希望的観測をするなら、レンズのファームアップなどで改善されるのでは?と思っています。
てな具合で、如何でしたか?
サードパーティ日照りのフジにもタムロンが参戦してくれて、あとはシグマの参加を待つばかり。これからフジはさらに面白くなりそうだよね。
フジの思想というか基準だとこうした製品をリリースするのがちょっと難しい(性能追求するとサイズや価格でNG、バランスを取ると画質がギリギリとか、純正レンズとしてある程度の期間販売することを考えると製品ライフを通して稼いでくれる製品になるかどうかが不透明など)けど、あったら絶対に便利、みたいなところをタムロンとかシグマが上手く突いてくると、フジの門戸がもっと開かれると思うし、APS-C機の選択肢がグッと広がると思うので、本レンズの登場を非常に心待ちにしていました。
多少のアラはあったけど、実力はホンモノなので是非一度体験してほしい1本でした。このレンズがあれば、あらゆる画角を1本で体験出来るので、例えば自分の好きな画角を見つけて単焦点レンズを選んでみるなどの楽しみ方があるし、この上なく効率的にレンズの画角による表現の違いを学ぶことが出来ます。ビギナーから達人まで、幅広く楽しめるのが超高倍率ズームの魅力だと思ってるからね、豊田は。