そのサイズよりも使い勝手を重視すべし
いや、巧いね。とてもお上手。ゼツミョーなスペック設定であります。
M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mmF4.0 PROは、はやりの(?)沈胴構造を採用したウルトラワイドズームレンズ。小型軽量であることはもちろん、それ以上にものすごく"寄れる"ことが生み出す使い勝手の良さにすっかり惚れ込んでしまいました。
大先輩であらせられるM.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mmF2.8 PROとの比較では、実はそれほど大きなサイズ差はなかったりする。
特に、フードを正位置で装着した状態での沈胴時サイズや、オペレート時(繰り出しているとき)のシルエットはコチラの方が大きいぐらいで、「より小さくて軽いから7-14mmPROよりもコッチ」という選び方は、実はあまり正しくないのではないかと感じた次第。
もちろん、携帯時のサイズはグンと小さくまとめられるけれど、そもそも小さなマイクロフォーサーズのレンズ群である。このレンズに関しては、サイズよりも他の魅力を知ることが重要なのだ。
そのひとつに挙げられるのが、35mm版換算50mm相当までカバーしている長焦点側の焦点距離。ここが28mm相当どまりなのと50mm相当まで伸びているのでは、撮れるものが全然違ってくる。
つまり、日常の使い勝手と汎用性に関しては、8-25mmPROの方が圧倒的に優れるということ。一方、ワイド端1mmの差は、室内などの閉鎖空間では明確な違いとなって撮影者を悩ませることになるだろう。でも、それ以外のシチュエーションでは、いってみりゃ撮り方次第。8-25mmPROの「何よりも標準ズームの代わりにもなり得る高い汎用性を優先する」スタンスは十分にアリだと思う。
最短23cm。寄れる超ワイドにして常用OK!
実は、プラスアルファの焦点距離域で使い勝手を底上げする手法は、オリンパスには一本筋の通っているものであるともいえ、例えば元祖PROレンズの一本であるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mmF2.8 PRO。長焦点側が70mm相当ではなく80mm相当(35mm版換算24-80mm相当)であるところが普通の標準ズームよりも一枚上手の使い勝手の良さを生むと登場(2013年)当時から高い評価を獲得。
2020年に発売されたM.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mmF4.0 PRO(24-90mm相当)に至っては、明確な小型化と"標準"の域を飛び出しそうな焦点距離レンジを両立するなど、攻めの姿勢はいつの時代にも健在であり続けているのだ。つまり、ここで8-25mmPROが「8-18mm」など「普通はそうだよね」の焦点距離域に収まらなかったのは、強固なこだわりが生んだ必然の流れってことなのである。たぶん。
全域で0.23mの最短撮影距離は、対象が前ダマに触れるのではないかと思うぐらいに寄れる、レンズフードが邪魔になるほどのスペック。その際の描写やボケにも気になる崩れを見せないところは、さすがは最新設計だ。
そして、7-14mmPROがデメキンスタイルなのに対し、コチラはフィルター装着も可能な「普通の前ダマ形状」なのも日常の使い勝手を力強く支えてくれる部分。もちろん、PROレンズならではの防塵、防滴、耐低温(摂氏マイナス10度)も備えているということで、想像以上に「いつでも、どこでも、普通に、便利に」使える超広角ズームレンズに仕上げられている。これぞ"万能"の一本。ホントにいいところを突いてます。