写真のほか、映像、言葉、パフォーマンスなど複数の表現方法を駆使した作品を国内外で発表している勝又公仁彦さんの写真展「わたくしのいもうと My youngest sister」が東京・銀座のIG Photo Galleryにて2月15日(土)まで開催中です。
勝又さんの完全新作の写真と映像、書籍などで構成されるインスタレーションです。

身近な者の死をテーマに作品化するということ

2019年1月、勝又さんは長い間、闘病生活を送っていた末妹の雅代さんを突然亡くされました。

雅代さんは、成人し結婚した後に、下半身の自由が奪われていく身体の進行性の病を発症。命に関わらないものの雅代さんは何度も足の手術を繰り返し、最後はほとんど寝たきりと車椅子での生活を余儀なくされます。しかし雅代さんは、ご自身が障害者であるという意識が薄かったため、どうしても杖で立ち自力で歩きたいと、車椅子に乗ることを極力拒み続けます。
また、雅代さんは、ずいぶん前から統合失調症による通院闘病を続けていて、雅代さんはそのようなご自身の様子を、勝又さんや家族に微塵も感じさせることがなかったそうです。

画像: ▲美術家、写真家の勝又公仁彦さん。「わたくしのいもうと」というタイトルは宮澤賢治の詩から採られているそうです。

▲美術家、写真家の勝又公仁彦さん。「わたくしのいもうと」というタイトルは宮澤賢治の詩から採られているそうです。

雅代さんが亡くなった後、勝又さんは義弟から、遺品の中にあった写真の束を渡され、雅代さんが保管していた家族写真の存在を知ります。

それは、雅代さん自身が写る写真をはじめ、子供の頃の勝又さんや家族が単独で写る写真、勝又さんが雅代さんの結婚式を撮影した写真など、数多くの家族写真でした。そして勝又さんにとって失われ、忘れかけていた過去のイメージでもありながら、見覚えのある写真たちでした。

本展では、雅代さんが保管していた家族写真1枚1枚を、勝又さんが再撮した写真が展示されています。

「写真全体を撮影しているものもあるけれど、写真の断片を撮影しているものも多く、足が写っている写真が多いのは妹の足が悪かったから。妹がなぜ家族写真を保管していたのか、何を考えていたのかはわからない。ただ写真を手元に置いておきたかったのかもしれない」と勝又さんはおっしゃっていました。

勝又さんにとって、雅代さんは、誰よりも近しく、日々連絡を取り合っていた存在であり、雅代さんは、家族の誰よりも明るくユーモアと余裕を持った態度で、勝又さんや家族に接していたそうです。

勝又さんは、雅代さんが保管していた写真を再撮する行為の中で、答えがでることのない、複雑な宿命を背負った雅代さんの、誇り高く天心爛漫に生きた人生と、写真の謎に向き合う日々を送られています。

画像: 本展では、100円ショップで買えるような写真立てに写真を入れて展示。また携帯で撮影したビデオ画像やデジタルフォトフレーム、むきだしになったメディアプレーヤーなどを用いた写真、映像、言葉による展示空間となっています。(画像は会期中も加わっていく予定です。)

本展では、100円ショップで買えるような写真立てに写真を入れて展示。また携帯で撮影したビデオ画像やデジタルフォトフレーム、むきだしになったメディアプレーヤーなどを用いた写真、映像、言葉による展示空間となっています。(画像は会期中も加わっていく予定です。)

画像: 会場には様々な色柄の洋服や化粧品、車椅子など、雅代さんの死後、義弟より勝又さんに送られてきた遺品の一部も展示されています。

会場には様々な色柄の洋服や化粧品、車椅子など、雅代さんの死後、義弟より勝又さんに送られてきた遺品の一部も展示されています。

画像: 勝又さんの私物である本も展示されていて、手にとって閲覧することが可能です。本の中には、その本のページに書かれた内容と関連付けた写真が挟まれています。

勝又さんの私物である本も展示されていて、手にとって閲覧することが可能です。本の中には、その本のページに書かれた内容と関連付けた写真が挟まれています。

画像: この本(『シャガールと木の葉』谷川俊太郎著、岩波書店)の「願い」と題された詩のページには、一面に咲く黄色い花の前で、雅代さんと旦那さんが一緒に写った写真が挟まれていました。

この本(『シャガールと木の葉』谷川俊太郎著、岩波書店)の「願い」と題された詩のページには、一面に咲く黄色い花の前で、雅代さんと旦那さんが一緒に写った写真が挟まれていました。

展覧会情報

IG Photo Gallery企画展
勝又公仁彦写真展「わたくしのいもうと My youngest sister」

会場:IG Photo Gallery
住所:東京都中央区銀座13-17 辰中ビル302 石田法律事務所内               会期:2020年1月10日(金)~2月15日(土)
開館時間:12時~20時
休館日:日曜日・月曜日・木曜日・祝日(2月11日)

2020年1月11日(土)18:00~
タカザワケンジさん(写真評論家、IG Photo Galleryディレクター)と
勝又公仁彦さんとのトークイベントは終了しました。
*録画し後日配信予定とのことです。(日時未定)

「喪失と悲嘆をめぐる参加者による対話セッション」
2020年2月15日(土)15:00~
予約不要、入場無料、入退場自由
セッションの模様は録画公開される可能性があります。

勝又公仁彦(カツマタ クニヒコ)さんプロフィール

美術家、写真家。
静岡県出身。早稲田大学法学部卒業、インターメディウム研究所修了。
大学在学中より文芸、絵画、写真、映像などの作品制作を始める。国内外で様々な職業に従事した後、作品発表を開始。インスタレーションから出発し、現在では写真を中心とした映像メディアで作品を制作。
多様な被写体のもとで「時間」「光」「場所」「空間」「認知」などをサブテーマに、常に写真の構造に触れる作品を展開。日常の中に現象しながらも知覚されることの無かった世界を掬い取ることで、観る者を新たな認識へと誘うとともに、歴史・社会・文明への批評的な暗喩を込めた作品制作を続けている。

【主な展覧会】
「Photography 写る、写す 7 人の現代作家」(大阪府立現代美術センター、2001年)
「風景の余白に:写真」(東京日仏学院、2002年)
「写真の現在2 —サイト— 場所と光景」(東京国立近代美術館、2002年)
「Natura Morta 」(Leica gallery Solms、個展、2006年、ドイツライカ本社)
「Dwelling」(世田谷美術館主催、個展、2008年)
「勝又邦彦展」(森アートセンター六本木ヒルズクラブ、2011年)
「都市の無意識」(東京国立近代美術館、2013年)
「あいちトリエンナーレ2016」
(岡崎康生会場、「トランスディメンション ―イメージの未来形」2016)
「写真都市展 ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」
(21_21 DESIGN SIGHT、2018年)など。

【主な受賞】
「さがみはら写真新人奨励賞」(2001年)
「日本写真協会新人賞」(2005年)

【主な作品集、著書】
「Skyline」(2008年/Yumi Yamaguchi Contemporary Art Lab.)
「cities on the move 2012 Ver.1」(DVD+ブックレット写真集)
(2013年/Media Passage)
「Hotel Windows」(2015年/シャドウタイムズ/Kindle版)
「Right Angle -white next to white-」(2018年/Media Passage)
「Compilation of photo series of Kunihiko Katsumata until 201X」
(2018年/MediaPassage)
「写真 新編 写真・技法と技法と研究」 (はじめて学ぶ芸術の教科書)
(2019年/京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎)

東京国立近代美術館、世田谷美術館、沖縄県立博物館・美術館など国内外の主要なコレクションに作品が収蔵されている。京都造形芸術大学准教授。多摩美術大学非常勤講師。

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