あれから1年、最終回も瞳AF関系を取りあげます。
追撃するニコンとキヤノンがソニーの瞳AFに対抗!?
ソニー α9の瞳AFの出来栄えは群を抜く素晴らしいもので、カメラグランプリ大賞を受賞したのも納得できます。この一人勝ちの状態が続くソニーに待ったをかけるべくニコンとキヤノンのフルサイズミラーレスが相次いで登場しました。さて、両機はどこまでソニーに迫っているのでしょうか。
ニコンのZシリーズが登場したときに、瞳AFが搭載されていないことがネットで大きな話題になりました。「超がっかりだよ、ニコン」「ミラーレスは瞳AFを搭載しているのが当然なのに!」という意見もありました。でもZ 7 は瞳AFは搭載していませんが、顔認識AFを採用しています。ニコンはコンデジに初めて顔認識AFを搭載したメーカーで、顔認識AFの性能には定評があるのです。
一方でキヤノンはEOS Rで瞳AFを搭載しました。まさにソニーと一騎打ちの様相です。
では、さっそく3機種の撮り比べをしてみましょう。テストシーンは、長い下りエスカレーターの下でカメラを構えて、モデルの水穂まきちゃ んが降りてくるのを待ちます。AFが顔認識したらシャッターボタンを押し続けて、どこまで ピントを合わせ続けることができるかを判定します。AFはソニーとニコンはコンティニュアスAF(AF-C)、キヤノンは同様の意味を 持つAIサーボAFに設定しました。
各3回ずつ行ってもっとも優秀な結果を選びます。撮影時のISO感度は3200にしました。
ソニー α7R III
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●有効画素数:約4240万画素●連続撮影速 度:約10コマ/ 秒 ● 液晶サイズ:3.0 型 ●ファインダー:0 . 5 型 / 約369万ドット● 常用 I S O 感度:100 ~ 32000 ●動画 : 4 K / 30 P ●手ブレ補正:5 . 5段分 ●サイズ:約126.9×95.6×73.7mm●質量:約 657g■実勢価格:34万9950円:
顔認識AFが途中から瞳認識AFに変わり、追い続けた!
まずは王者ソニーのα7R IIIです。顔認識 AFが働いたのは3機種でもっとも早く、かなり遠くからでも人物の顔を認識しました。モ デルが近づいてくると瞳AFが働き始め、安定して瞳にピントが合います。ちょうど上半身が写るところまで瞳AFは働きました。
ただ、この結果はα9に比べるとちょっと弱いように感じます。1月号でα9を試したときは、もっと近くまで追えた印象です。
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▲さすがはソニー、かなり遠くても顔認識が働いた。
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▲顔認識は途中から瞳認識に変わって、上半身ぐらいになるまで追い続けた。
ただし、途中でピントが外れるコマもあって経験的にα9には敵わない感じがする。
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▲ソニーα7R IIIは瞳AFが優秀なので、その反動でしょうか。横顔のピントはあまりシャープとはいえな いです。ちょっと意外でした。後方を向くとAFは人物をとらえられなくなりました。
ニコン Z 7
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●有効画素数:約4575万画素●連続撮影速度: 約9コマ/秒●液晶サイズ:3.2型
●ファインダー:0.5 型 / 約369 万ドット ● 常 用 I S O 感 度:64 ~25600 ● 動画:4K/30P●手ブレ補正:5.5段分●サイズ: 約134 ×100.5 × 67. 5 mm ● 質量: 約675 g ■ 実勢価格:43万7400円
近距離まで顔認識AFで目にピントが来た!
続いてニコン Z 7です。顔認識がスタートするまでの間はソニーα7R IIIに敵いませんが、至近にはとても強いです。もっとも近距離まで顔認識AFが働いたのはニコンZ 7でした。バストアップくらいまで追っています。
瞳AFはなくても顔認識AFで目にバッチリピントはきています。またISO3200で撮影した中でもっともノイズが少なかったのもZ7でした。
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▲ソニーα7R IIIよりもやや遅れて顔認識がスタート。しかし一度被写体を認識すると喰いついて離れません。最終的には瞳AFはなくても、もっとも近距離までピントを合わせ続けることができました。
ニコンZ 7には瞳認識AFは搭載されていま せんが、顔認識AFは驚くべき性能です。上半身の状態も見ていて振り返っている、反り返っている動きがわかるのです。
そのため後ろ向きでも後頭部にAFが合います。これを後頭部AFと命名しました。ソニーとキヤノンは横向きの人物でピントをチェックしました。
▲ 後頭部が写ったフォトを拡大したもの。髪の毛がとてもシャープに再現されている。
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▲Z 7の再生画面設定でAFがどこに合っているかを表示させた。ニコンZ 7は横顔でも後頭部でもAFが機能する。
キヤノン EOS R
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●有効画素数:約3030万画素●連続撮影速度: 約8コマ/ 秒 ● 液晶サイズ :3 .15型 ●ファインダ ー: 0.5型/約369万ドット●常用ISO感度:100~ 40000●動画 : 4 K / 3 0 P ●手ブレ補正: - ●サイズ: 約135.8×98.3×84.4mm●質量:約660g■実勢価格:25万6500円
「ワンショット」で瞳AFが合焦する瞬間を!
最後にキヤノンEOS Rです。最初の1本目と2本目は、まったくの空振りでピントを合わせることができませんでした。なぜだろうと思ってカメラを確認すると瞳AFが機能していません。
調べてみると、EOS Rの瞳AFは[ワンショットAF][顔+追 尾優先AF][瞳AF:する]の時に機能するとのこと。つまり被写体を追い続けるサーボの時は瞳AFにならないのです。これは意外でした。
しかし瞳AFを使わないのは惜しまれるので、ワンショットで瞳AFが合焦したら、すかさずシャッターボタンを押すことにしました。 結果はまずますといったところでしょう。
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▲キヤノンの瞳AFは人物が動かない状態。いわゆるポートレート撮影ではバッチリ使える。
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▲顔認識は3機種の中では遅い方です。もっと近寄れるかと思ったのですが意外にもAF で追従できるのはここまででした。
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▲瞳AFは機能しにくい状況ですが、横向きのモデルの目にもバッチリ合っています。ですが、後ろ を向くとAFは合ったり合わなかったり。
まとめ「秒進分歩」の技術革新!
大昔は技術の進歩は日進月歩といわれていました。それが秒進分歩といわれるようになり、デジタルでは昨日のホントは今日はウソといわれるほど技術革新が行われます。こういった劇的な変化を解説しようとトライしたのが「知らなきゃソンだぞー!」でした。
また会いましょう。現場からは以上です。
撮影・解説:阿部秀之
ヨーロッパの風景やスナップ、ポートレート、コマーシャルなど幅広いジャンルを撮影する。87年よりカメラグランプリ選考委員。
モデル:水穂まき
この記事は月刊カメラマン2018年12月号掲載時のものです。