当初「ミラーレスは一眼レフより軽い」と言われましたが、プロ用は耐久性や防塵防滴性を求めるため重量が増えていきました。現状はペンタプリズム、ミラー周り、薄くなったボディの金属を合 計しても300gほどの軽量化に留まります。

マグネシウム鏡筒+光学系の小型軽量化がトレンド

つまり、最終的にカメラを軽くするためには、ボディではなくてレンズなのです。
とくに これまで大きく重いのが当たり前と思われていた大口径望遠レンズの軽量化が注目を集めています。いま頂点に立っているのはソニー FE 400mm F2.8 GMOSSです。「手持ちでも使える重量を目指した」といい、35mmフルサイズセンサー搭載デジタルカメラ用の 400mm F2.8レンズで世界最軽量という 2895g(三脚座込み)を実現しました。

画像1: マグネシウム鏡筒+光学系の小型軽量化がトレンド

鏡筒のマグネシウムも従来よりも比重の軽いものを採用していると予想される。

画像2: マグネシウム鏡筒+光学系の小型軽量化がトレンド

2枚目以降のレンズを後方に配置して口径を小さく薄くする工夫が見られる。

ソニー FE 400mm F2.8 GM OSS

画像: www.sony.jp
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●レンズ構成:17群23枚●最短撮影距 離:2.7m●最大撮影倍率:0.16倍●絞り羽根枚数 : 11枚●最小絞り: f / 22 ●手ブレ補正効果:約4段分●サイズ:約158.1× 359mm●質量:約2895g■ 実勢価格: 57万6800円

タムロン 100-400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(A035)

100-400mmを17枚で構成したタムロン

ソニーでもキヤノンでも400mm F2.8は160万円もするとあって、誰にでも手に入れられるわけではありません。そこで身近な価格で軽量化の工夫をしたレンズを見つけました。 タムロン100- 400mm F/4.5-6.3 Di VC USD(ModelA035)です。

通常20~21枚で構成される100-400mmを、わずか17枚で構成しました。レンズの枚数を減らすと軽くなるだけでなくヌケが良くなるのです。

さらにマウント付近の鏡筒部にマグネシウム合金製の部材を採 用することでクラス最軽量の1115gを実現しています。 通常のカメラバッグにも容易に収納できる大きさと手ブレ補正機能VCで、快適な手持ち撮影可能な望遠ズームになりました。

画像: 100-400mmを17枚で構成したタムロン

▲軽々でも写りは本格派。手ブレ補正効果4段 。 eBANDコーティングの採用で逆光に強い。
■ニコン D850 絞りF8 2.5秒 マイナス1.3露 出補正 ISO100

www.tamron.jp

▲モデルのまきちゃんでも軽々。このクラスの望遠 ズームとは思えない1115g(ニコン用)を実現。

●レンズ構成:11群17枚●最短撮影距離:1.5m ●最大撮影倍率:0.27倍●絞り羽根枚数:9枚●最小絞り:f/32-45●手ブレ補正効果:約4段分● サイズ:約86.2×196.5mm●質量:約1115g■実勢価格:7万5790円 *ニコン用

ニコン AF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VR

古くて新しい位相フレネル

そしてここにきて再び注目を集めているのが、ニコンの A F - S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRです。通常は質量3000gを上回る500mm単焦点レンズで、約1460gと大幅な軽量化を達成しました。秘密はPFレンズという光学系にあります。

位相フレネルレンズは、通常のレンズと異なって波長の短い青が遠くに、波長の長い赤が近くに結像するため、通常のレンズと貼り合わせると色収差を打ち消し合えるという仕組みです。ただし、画面の内外に強い光源があるとリング状の色付きのフレアーが出ることがあります。

ニコンではこのフレアーが写真レンズに相応しくないと考え長年発売せずにいました。がデジタル時代になり、RAW現像時にフレアーを簡単に除去できるようになって発売に踏み切りました。

画像: 古くて新しい位相フレネル

▲瞳AFを搭載していないニコンZ 7ですが、ニコンAF-S NIKKOR 500mm f/5.6E PF ED VRでの連続撮影では、すべてのコマがバッチリ瞳にピントが合っていました。

■ニコン Z 7 絞りF5.6 1/1600秒 ISO800 *マウントアダプターFTZ使用

画像: www.nikon-image.com
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▲マウントアダプターFTZ を介してZ 7に装着したところ。驚きのコンパクトさだ。

●レンズ構成:11群19枚●最短撮影距離:3.0m●最大撮影倍率:0.18倍●絞 り羽根枚数:9枚●最小絞り:f/32●手ブレ補正効果:4段分●サイズ:約106 ×237mm●質量:約1460g■実勢価格:49万1400円

キヤノン EF70-300mm F4.5-5.6 DO IS USM

キヤノンのDOレンズに期待したい!

一方キヤノンは位相フレネルのことをDO と名付け、2001年にEF400mm F4 DO IS USM、2004年にEF70-300mmF4.5-5.6 DO IS USM、2014 年にEF400mm F4 DO IS II USM を発売しています。

キヤノンにとってもDOのフレアーは悩みの種ですが、さまざまな工夫をして対応しています。 劇的にレンズを小型軽量化できるDOですが、注目したいのはEF70-300mm F4.5- 5.6 DO IS USMです。このレンズ自体はけっこうボリュームがあって、それほどDOの恩恵にあずかった感じはしないのですが、DOをズームに採用するというチャレンジは高く評価できます。

今後はDOを採用したズームレンズが登場し、さらなる小型軽量化が進んでいくと予想されます。現場からは以上です。

画像: キヤノンのDOレンズに期待したい!

▲フレアーのせいか描写は軟らかでポートレートには最適だ。ボケもとても美しい。
■キヤノンEOS 5D MarkIV 絞りF5 1/125秒 マイナス0.3露出補正 ISO250

画像: cweb.canon.jp
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●レンズ構成:12群18枚●最短撮影距離:1.4m ●最大撮影倍率:0.19倍●絞り羽根枚数:6枚●最小絞り:f/32-38●手ブレ補正効果:約3段分● サイズ:約82.4×99.9mm●質量:約720g■販売終了品

撮影・解説:阿部秀之

ヨーロッパの風景やスナップ、ポートレート、コマーシャルなど幅広いジャンルを撮影する。87年よりカメラグランプリ選考委員。

モデル:水穂まき

この記事は月刊カメラマン2018年11月号掲載時のものです。

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