はじめに
「こういう写真が必ずコンテストに通る」という正解はありませんが、写真に込めたメッセージがうまく表現できなければ、それを第三者に伝えることはできません。コンテストに限らず自分が写真を通して何を伝えたいのか、写真に込めたメッセージをより明確にするために、ここでは幾つかのポイントをご紹介します。
構図は足し算であり引き算
構図とは主役である被写体を一番引き立てる切り取り方を言います。突然のシャッターチャンスなどはゆっくりと構図を考えている余裕はありませんが、じっくりと向き合える場合は被写体だけでなく、被写体を取り巻く周りにも目を向けてみましょう。被写体をより引き立てるものをどう入れるか、反対にメインより注意を引いてしまうものはどうするか、といったことを意識してみましょう。
【例】「飛沫」
まるで修行僧のような女子高生が豪快に水を浴びた瞬間を捉えています。飛沫の飛び散った瞬間、どこか男らしさすら感じさせる少女の佇まいなど、非常に力強さのある作品です。ただ、モノトーンな色味の世界観の中で少女の前にある青いラインの存在が若干きになりました。また、上から降り注ぐ水の存在を際立たせるために少女の上の空間をもう少し広くフレーミングすると、滝のように流れ落ちる水の軌跡がより強調されたかもしれません。
タイトルも作品の大事な一部
コンテストという場において、タイトルは見る側に撮影者の意図を伝えるのに重要な役割を果たします。そういう意味では写真に写っている情報をただ説明するだけではもったいないですし、言葉で語りすぎては写真で伝える意味がありません。かといってひねりすぎて写真の内容からかけ離れたものになっては本末転倒です。タイトルも含めてひとつの作品が完成するのだという意識を持ってください。
撮影位置を工夫しよう タイトル「光の散歩道と」
惜しくも入選になりませんでしたが、スマートフォンのカメラ機能を使い、ひとつの景色をピントを合わせたものと玉ボケになったふたつの世界で捉えようとしています。アイデアは素晴らしいですが、スマホの画面に映っているメインのイルミネーションとの距離が遠いせいか、周囲の暗さの方に目がいってしまい、タイトルにある「光の散歩道」というには少し寂しい印象を受けてしまいました。タイトルを生かすならもう少しイルミネーションに近付いて撮るなど、撮影位置を工夫するといいかもしれません。
目線を変えてみてみると違いが出ます タイトル「つなひき」
二頭の牛が向かい合った鼻先にある柵を綱引きの綱に見立てた発想が面白い作品です。ただ、少し見下ろすような位置から撮られているため、牛と柵に距離があるのが分かってしまいます。また、牛が綱引きをするなら口に咥えるだろうなと思うと、もう少し目線を下げて真正面から捉えると、柵との距離も感じなくなると共に柵が牛の口元にくることでより引っ張り合っている雰囲気を出せるかもしれません。
主題を中心に切り取りましょう タイトル「見つめる」
くっきりと浮かび上がった影の存在感が強く、メインの被写体である少女の存在感が少し弱い印象を受けました。口元を影で隠すことで目に注目させたかったのかもしれませんが、少女と距離があることで目元よりも顔にかかる影の方に視線が向いてしまいました。少女を取り巻くシチュエーションとしては面白いですが、タイトルにある通り見つめる彼女が主役であるならもう少し違った切り取り方に挑戦してみても良かったかもしれません。
フレーミングの意識を持ちましょう
妖艶な花魁姿の女性のポートレートです。江戸情緒を感じさせる背景と花魁姿という古風なシユエーションでありながらメイクや髪型などに見られる現代的な雰囲気が絶妙にマッチしていると思います。キセルを持つ手の所作も美しいのですが、残念なのはキセルの先端が切れていることです。花魁の持つ小物として最もアクセントになるアイテムだからこそ、フレーミングする時に周辺までもあと一歩意識を向けてほしかったです。
様々な角度から観察することで違う構図になります
地面を鷲掴みにし、太く長く伸びる樹木の命の源とも言える根に焦点を当てた作品です。作者の意図はモチーフやタイトルからも十分理解できるのですが、中央部分が根っこではなく地面の占める割合が多いためか、切り取り方としては少し弱い印象を受けました。もっとアングルを低くし根に肉薄するなど、違った角度から観察してみても良かったかもしれません。
テーマとなる素材をきちんと写しこみましょう
夕暮れに染まる漁港を歩く一匹の猫。綺麗なグラデーションの空に伸びた電灯のアクセントもとてもいい一枚です。ただ、せっかくの猫の存在感が黒く落ちた背景に溶け込んでしまっているのが残念です。空の再現性を重視した末の露出の選択だったのかもしれませんが、もう少しだけ猫の輪郭が見えていたら、この暮れる情景の中を歩く猫の存在がより生きた作品になったのではないかと思います。
金森玲奈先生略歴
1979年東京都生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。在学中より都会の片隅に生きる猫の姿を撮影してきた。東京芸術大学付属写真センター勤務等を経て2011年よりフリーランスとして活動を開始。近年は身の回りの何気ない瞬間や国内外の旅先の風景、けがと障害がきっかけで引き取った二匹の飼い猫との日々を撮り続けている。
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さあ、どんどん応募してみよう!
雑誌のフォトコンテスト以外でも様々なフォトコンテストが開催されています。そうした中、月刊「カメラマン」が長年協賛している「総合写真展」が6月25日まで作品を募集しています。
同展は、作品が入選以上に選ばれると「東京都美術館」(台東区・上野公園)に展示されるというもので写真の展覧会としては大変規模の大きい公募展です。
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●「第22回総合写真展」ホームページ
http://shashinten.info/