作例と解説は月カメ編集部OGの写真家、水咲奈々です。
カメラ初心者さん、フィルム時代から撮り続けているけど基礎はちょっぴり不安な方、プチ・スランプにはまってしまった方、もっと自由に写真を撮れるようになるために、写真表現のボキャブラリーを増やしましょう!
Lesson 3. 露出補正に正解あり
露出とは簡単に言ってしまうと写真の明るさのことですその露出はレンズの絞り(F値)と、シャッター速度と、ISO感度の3つの要素で決まります。
露出を決める方法は色々ありますが、撮影モードもしくは露出モードをマニュアル(M)以外のP(プログラムオート)、A(絞り優先オート)、S(シャッター速度優先オート)にして撮影すると、カメラが自動的に適正だと思われる明るさに写真を仕上げてくれます。その上で、明るすぎると思ったらマイナスに、暗すぎると思ったらプラスに補正するのが露出補正という機能です。
今回は、この露出補正について勉強しましょう。
女性はふんわりプラス補正
最近のカメラは性能が良くなってきたので、カメラが導き出してくれる露出は見た目に近いちょうど良い明るさになることが多いです。ですが、見た目よりもほんの少しだけ明るくした方が似合う被写体もあります。たとえば女性や小さな子供をアップで撮ったとき。
その場の明るさの通りだと木陰などでは肌がくすんで見えてしまい、持ち味の柔らかさや健康的なイメージが損なわれてしまいます。そんなときは+0.3~1EVくらいの間で調節すると、より活き活きとした表情になります。
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【+0.7EV】見た目よりもほんの少しだけ明るくすることで全体のトーンが明るくなって活き活きとしたイメージになります
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【露出補正なし】露出補正なしだと少々暗くて不健康に見えてしまいました
黒い被写体はシャープにマイナス補正
逆に暗く補正したほうがいい被写体もあります。たとえば黒い毛の動物。撮影時の光の状況にもよりますが、見た目よりも明るく写って黒い毛が締まりのないグレーのような、浅い色に写ってしまうことがあります。黒い物はしっかりと引き締まった黒色になるように写した方がかっこいいので、そういう場合はマイナスに露出補正しましょう。
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【-0.7EV】一番黒い部分が黒つぶれせず、艶やかな黒光りするような明るさ(暗さ)になるまでマイナス補正しましょう
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【露出補正なし】全体のイメージとしては明るくて爽やかなのですが、主役の犬の毛の色は実際よりも白っぽく写っています
露出補正の正解とは?
今日のテーマの露出補正の正解とはなんでしょう? 「カメラが導き出す明るさ」…ではないですよね。前述のように補正をすることも多々あります。「女性の写真は+0.7EV」…いいえ、撮影時の光の状況や被写体の肌色によって変わります。「明るさは好みだから正解はない」…おしい!
写真表現の中でも写真の明るさは大きなウエイトを占める重要な項目です。見た目の明るさに忠実に写し取ることも表現の一つですし、大きくプラスに調節して白昼夢のように仕上げたり、マイナスに調節してシックな大人っぽい色調に仕上げたりと、露出を変えるだけで様々なイメージを描き出すこともできます。
ここで大切なのは、自分の中でどういう写真に仕上げたいかの明確なイメージを持つことです。そのイメージを頭の中に描くことで、明るさ=露出は決まります。撮影時にはそのイメージに向かって少し明るくしたり、逆に暗くしてみたりと、ゴールの見える試行錯誤をすることになるでしょう。
一番やってはいけないのは、RAWで撮影して後から補正すればいいや~と露出を適当に決めてしまうことです。結果的にRAW現像でちょうど良い明るさにできたとしても、それを繰り返していては写真は上手になりません。
写真の露出の正解はありませんが、「自分の撮りたい写真」の露出には正解が存在します。自分の中で正解をイメージして撮影するようにしましょう。また、誰かの正解とあなたの正解が同じとは限りませんよ。
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【+1.0EV】
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【露出補正なし】
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【-1.0EV】
明るめ、暗め、中間…万人共通の正解はありません。撮りたいイメージの明るさがあなたの正解です
正解の露出を見つける3つのポイント!
1. カメラ任せの露出に慣れている人は、カメラが導き出した露出、カメラが導き出した露出から+0.3EV、カメラが導き出した露出から-0.3EVの3枚の写真を撮って見比べることから始めよう!
2. RAWで撮っていても露出は自分のイメージ通りの明るさになるようにしっかりキメよう!
3. 不自然な絵柄を避けるためにやりすぎ露出補正はNG!プラス・マイナス共に0.3~2.0EVの範囲内がオススメ!
水咲奈々 -Nana Misaki-
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東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やイベント、ニコンカレッジやLUMIXフォトスクールの写真教室など、多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。(社)日本写真家協会(JPS)会員。
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