ソニー α7R Ⅵは過去モデルからどう進化したのか
AIとSpeedを掛け合わせ、描写力と機動力を新次元に高めた
ソニーα7シリーズの中で高画素モデルとしてだけではなく、手の届くハイエンドモデルとしてその地位を築いてきたα7Rシリーズ。その第6世代が4年振りに登場した。
従来機から最大の変更点となるのは、有効約67MPとなる新開発の積層型CMOSセンサー「Exmor RS」と、処理性能を向上させただけでなくAIプロセッシングユニットを内包しワンチップ化した「BIONZ XR2」(α7 Vに初搭載)の採用だ。XR2といえば、エクステンデッドRAWの大幅に進化したNRなども、ソニーの新純正ソフトImaging Edge Desktopで楽しめる。
背面液晶は従来機と同じ3.2型の約210万ドットモニター。可動タイプの4軸マルチアングルだ。
AFの被写体検出性能も順当に向上。認識対象リストに明確な差はないが、新たに「オート」が加わり、よりフレンドリーな仕様となっている。画面内に複数の対象が混在していない場合であれば扱いやすそうだ。
先代のα7R Vの搭載する約61MPの裏面照射型CMOSセンサーから、画素スペック自体は微増な印象だが、積層型とすることで高速性を獲得。画素数増加や積層化といえば、これまでは高感度画質を代表として画質面で懸念点があったけれど、本機の場合、常用最高ISO感度は従来機と同じISO32000となり、少なくともスペック上のビハインドはない。
EVFは新旧で覗き比べをした感触では「新型の方が少しキレイ」ではあったが、違和感を覚えるほどの表示クオリティの差はなく、AF枠がヌルヌル緻密に追従するといった部分での差の方が大きく感じられた。
スピードが速くなれば、同じ時間内に演算回数を増やせるし、画素数の増加は同一面積におけるノイズと被写体の分離をより高精度にできる、といったメリットもある。なので画素数の増加や高速センサー採用について、以前ほど画質に対して神経質にならなくても良さそうだ。
積層センサーの長所のひとつに、ブラックアウトフリーの連続撮影が挙げられる。大雑把に言えば露光中でもAF測距と演算が途切れないので、より高い精度でのAF撮影が期待できる。が、大容量のデータを沢山撮れるというのはストレージを圧迫することと同義、その点は注意しておきたい。
新型はサムレストの張り出しが僅かに大きくなり、筆者の手にはグリップ時の安定感が増した様に感じられた。正面の変更はタリーランプおよびマウント指標の追加、さらにスピーカーの位置が微妙に変わっている。グリップを含めたボディはもう大型化しても良いのでは?
また、高速性を活かし、約1.2倍クロップとなるが、8K30p(α7R Vでは同8K24p)記録に対応。フルフレームでは4K120pまでの記録に対応するなど、スピードと演算力の効果が出ている。これに伴い放熱構造を最適化。8K30p記録時に最長で約120分(室温25℃時)を可能とする。放熱構造もスゴイが、おそらくBIONZ XR2が効率的な設計となっており、そもそもの発熱も少ないのだろう。
「家族に黙って買い替えてもバレない」レベルの外観の見分けのつかなさ。バッグに新旧モデルを入れてもすぐには判別できないと思う。重量は新型バッテリーが大きくなったのに、14gほどしか重くなっていない。
ちなみに、α1 IIより高画素だけれども、スピードはα1 IIが圧倒しているので、α1 IIじゃなければ対応できないシーンはあるし、同様にα9 IIIとも守備範囲が異なっているので、画素数だけでそのポテンシャルを評価することは出来ない。
暗い場所でもボタンを点灯させられるイルミネーターを新装備。明るさ設定も可能だ。
上位モデルが尖っているので、例えば無印はベーシックの領域を大きく広げ、Rシリーズは「高速×高解像」のバランスを最大化させる方向に、といった感じに、α7シリーズはそれぞれの守備範囲を広げる方向で性能向上させているのだろう。
バッテリーが大容量タイプ(左)になって、省電力設計と共に、長持ちするようになった。
ソニー α7R Ⅵの基本スペック
| イメージセンサー | 35mmフルサイズ |
|---|---|
| 有効画素数 | 約6680万画素 |
| マウント | ソニーEマウント |
| 常用ISO感度 | ISO100〜32000(拡張ISO50/102400) |
| 連続撮影 | 約10コマ/秒(メカ)/約30コマ/秒(電子) |
| ファインダー | 0.64型OLED EVF 943万7184ドット |
| 液晶モニター | 3.2型 209万5104ドット 4軸マルチアングル タッチパネル |
| 記録メディア | CFexpress(Type A)/SDXC(UHS-II対応)デュアル |
| 発売日 | 2026年6月5日 |
| 価格 | 74万300円(ボディ) |
| 大きさ | 約132.7×96.9×72.8mm |
| 重さ | 約713g |
ソニー α7R ⅥのEVFや背面液晶の進化は?
高画素「R」シリーズに高速性とさらなる飛び道具を盛り込んだ
外観は従来機からほぼ据え置きで、α7 Vとの差もパッと見では分からないレベル。個人的には無事に70万円を超えたことを祝して、α1 IIやα9 IIIと同じ握りやすいグリップのボディにして欲しかった。細部には従来型から小変更が施されているが、全体的な印象は従来機と同等だ。
EVFについてはドット数は944万ドットで引き継ぎだが、輝度は従来比で約3倍に。またHDR表示やDCI-P3相当の広色域表示にも対応するなどアップグレードされている。スチルで恩恵があるのは輝度くらいといえば否定は出来ないが、動画ユーザーには嬉しいところかもしれない。
エクステンデッドRAW処理の効果は絶大。作例では光量のある有利な条件ということもあって、処理画像はISO25600とは思えない画質を実現している。筆者の感覚的には、5〜6段分の効果があるように思う。撮影枚数が増えるデメリットはあるが、それでも高画素機の可能性を広げる機能だと歓迎したい。一方で、PC処理はナカナカに重い。ボディ側で同じ処理ができると良いのだけれど、そういった需要は無いのだろうか?
背面液晶は従来機から踏襲となる3.2型の約210万ドットモニター。可動タイプの同じ4軸マルチアングルだ。LUMIX S1 IIシリーズも同様の機構を持っているが、操作のしやすさや撮影時や移動中のバタつきの少なさなど、使用感でソニーが明確に優れている。
駆け足での紹介となったが、「高画素×高速化」を従来機と同じサイズ感に詰め込んでいるところは、とてもソニーらしい部分。被写体認識の強化とプリ撮影機能、そしてエクステンデッドRAWの可能性も含め、高画素「R」シリーズの可能性を大きく広げた点にとてもワクワクさせられた。
ソニー α7R Ⅵとα7R Ⅴを比較撮影
操作レスポンスやAWB、瞳認識AFなどの向上も
短時間ではあるが、従来機のα7R Vと比較試用することが出来たので使用感の報告をしたい。α7 Vの時にはα7 IVとのEVF表示クオリティの差やレスポンスの向上に驚かされたが、そのつもりで触れてみると、本機の場合はそこまで大きな差は感じられなかった。とはいえ、比べてみるとα7R VIは僅かではあるけれどレスポンスの良さを実感できた。
AWB傾向とAFレスポンスは若干光線が違うので完全にイコールコンディションではないが、作例のシーンだとα7R Vの方が印象が良かった。条件次第でまだまだ得手不得手はありそうだ。ちなみに背面モニターでチェックした際には「さすが新型!」と思ったけれど…。ともあれ、AF性能はフツーのシーンでもワンテンポ速く検出から合焦までイケるので、印象が良い。従来機がミスしやすいシーンも軽くチェックしたが、安定して歩留まりが向上した印象だ。
EVFは従来機も十分に良かったので「違う!」とはならなかったが、LCD表示の再現性は従来機よりも少し実データに近くなったようだ。というのも、日陰ポートレートシーンでは、撮影中に背面液晶の表現から「新旧でAWBの傾向が結構違うな」と思ったのだけれど、実データではそこまで大きな差はなく、従来機よりも実データに近い表現をしているように感じた。
瞳AFは、横顔や髪の毛が目に掛かったり、手で片目を隠したり、ウインクしたり、といったポージングの流れを意に介さない精度で検出・追従してくれるので、撮影がとにかく楽。BIONZ XR2はスゴイ! 従来機も悪くなかったけれど、本機の方が安心感がある。それは表示からも感じられ、よりヌルヌルで細かく動作していた。写真はキャプチャしながら検証している様子です。
最も大きな差と感じたのは、被写体認識の性能向上とAEの傾向違い。ポートレートシーンの瞳検出はα7R Vでも十分以上にハイレベルだったが、検出精度と速度は露骨に向上しているし、検出枠の表示も滑らかに動く。またAFポイント(エリア)の明度や輝度がAEに影響する貢献度がさらに強まった一方で、明るい被写体を暗い背景の前に配置するようなシーンでは、ちゃんと全体のバランスから判断しているような振る舞いもあり、直感的なAE制御に感じられ個人的には扱いやすくなった。
頭部を日傘の影に入れても新型だけ平気で瞳検出して来たのでビックリ。御覧の通り、シーンによってはAE傾向が違っていてAFポイントの貢献度が上がっているので、AEで撮る場合はいきなり実戦投入せず、ちゃんと傾向をチェックしてみてほしい。
印象的だったのは、バッテリー消費がかなり少なく、メカシャッターで300ショットずつ撮影した段階で8%しか減っていなかった。新旧で画像処理エンジンの差と新型バッテリー採用という違いがあるので、これについては本機の結果のみとする。
大幅なスペック向上よりも細部の煮詰めによる扱いやすさが光る
他にも触れたいところはあり、例えばエクステンデッドRAWのNRには可能性を感じられたが、使い勝手が良いとは言えず、PureRAWなどの高感度画質を向上させる手段が他にもあることを踏まえれば、新型のメリットを享受できないユーザーもそれなりにいそうだ、という感想になる。
つまり、ほとんどのシーンでは運用上の工夫でどうとでもなる、というモノだ。もちろん差が出る条件はあるので、そこがメインのシーンとなるかどうか? が買い替えの分水嶺となりそうだ。
α7R Ⅵの◯と×
| ◯ | × |
|---|---|
| 新エンジンのパワーと省エネ | お値段を考慮すると、最低限このくらいは…という感想しかない |
| 使い勝手が良くなっている | PC純正アプリの使用感 |
α7R Ⅵ、α7R Ⅴ、α1 Ⅱのスペック比較
| 項目 | α7R VI | α7R V | α1 II |
|---|---|---|---|
| 有効画素数 | 約6680万画素 | 約6100万画素 | 約5010万画素 |
| 映像エンジン | BIONZ XR2 | BIONZ XR | BIONZ XR |
| 撮像素子 | Exmor RS CMOSセンサー 積層型 | Exmor R CMOSセンサー 裏面照射型 | Exmor RS CMOSセンサー 積層型 |
| 常用ISO感度 | 100〜32000(拡張50/102400) | 100〜32000(拡張50/102400) | 100〜32000(拡張50/102400) |
| 被写体認識対象 | オート/人物/動物/鳥/昆虫/車/列車/飛行機 | 人物/動物/鳥/昆虫/車/列車/飛行機 | オート/人物/動物/鳥/昆虫/車/列車/飛行機 |
| AF測距点数 | 最大759点 | 最大693点 | 最大759点 |
| 最高連続撮影速度 | メカ10コマ/秒、電子30コマ/秒 | Hi+時 10コマ/秒 | メカ10コマ/秒、電子30コマ/秒 |
| プリ撮影 | ○ | — | ○ |
| ピクセルシフトマルチ撮影 | ○ | ○ | ○ |
| コンポジットRAW ノイズ低減用撮影 | ○ | — | ○ |
| 動画性能 | 4K 120p、8K 30p | 4K 60p、8K 24p | 4K 120p、8K 30p |
| シャッター速度範囲 | 1/8000〜30秒 | 1/8000〜30秒 | 1/32000〜30秒 |
| ファインダー | 高輝度・高色域 約944万ドット 0.9倍 Quad XGA EVF 最高120fps | 高輝度・高色域 約944万ドット 0.9倍 Quad XGA EVF 最高120fps | 高輝度・高色域 約944万ドット 0.9倍 Quad XGA EVF 最高120fps/Hi+240fps |
| 最大手ブレ補正効果 | 中央8.5段/周辺7.0段(CIPA2024規格) | 中央8.0段(CIPA規格) | 中央8.5段/周辺7.0段(CIPA2024規格) |
| 記録媒体 | SD/CFexpress 2.0 Type A マルチスロット×2 | SD/CFexpress 2.0 Type A マルチスロット×2 | SD/CFexpress Type A マルチスロット×2 |
| 大きさ(W×H×D) | 約132.7×96.9×72.8mm | 約131.3×96.9×72.3mm | 約136.1×96.9×72.8mm |
| 重さ(電池・カード含む) | 約713g | 約723g | 約743g |
| 実勢価格(税込) | 74万300円 | 53万3500円 | 99万円 |