作例共通データ:OMシステムOM-1 Mark Ⅱ 絞り優先AE(F2.8) WB:オート
■金城正道氏プロフィール
沖縄県出身。元レンズメーカー広報&元月カメ編集部員。現在は千葉県市川市在住の写真家、および最近は「間違いだらけシリーズ」の論客として活躍。最近の得意メーカーはOMデジタルソリューションズ、タムロンとかその辺。仕事先によってはキヤノンもソニーも使う。フィルムカメラもいまだによく使う。(公社)日本写真家協会会員
OM SYSTEM「M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO」の主な仕様
●焦点距離・F値:50-200mm・F2.8
●レンズ構成:13群21枚(EDAレンズ1枚、スーパーEDレンズ2枚、EDレンズ1枚、HRレンズ2枚、E-HRレンズ3枚)
●画角:24-6.2°
●マウント:マイクロフォーサーズマウント
●最小絞り:F22
●最短撮影距離:0.78m(全域)
●フィルター径:φ77mm
●大きさ:91.4×225.8mm
●重さ:1075g(1250g 三脚座含む)
●付属品:フード/ケース
望遠系の王様、OMシステムの真骨頂
撮影距離およそ3メートル。動物園にしてはけっこう近い距離で撮れたが、ピント面も相当に薄い。その合焦部のキレ、そこからなだらかにボケてゆくサマは、すばらしい!
■200mm(400mm相当)1/400秒 ISO1600い
OMシステムはマイクロフォーサーズ規格を採用しており、イメージセンサーの面積は35mm判フルサイズの約半分だ。そのため、同じ画角がフルサイズの半分の焦点距離で済む。これは望遠レンズにとっては大きなメリットだ。よって本機の50-200mmという焦点距離は、フルサイズ換算で100-400mmとなる。
フルサイズ400mmと同等の画角が200mmで得られるわけで、当然ながら非常にコンパクト。加えて開放F値はワイド端の50mmもテレ端200mmもF2.8通しとなっており、いわゆる「ヨンニッパ」と比べると、その大きさと重量で圧倒的に優位となる。
画角でいうとフルサイズ換算360mm。しかし撮影した焦点距離は180mmなので、焦点深度はフルサイズの画角換算の焦点距離より若干深く、被写体の目的の部分を奥行きまでシャープに捉えることができた。背景のボケも溶け過ぎず適当に輪郭が出ていて、とてもきれい。
■180mm(360mm相当)1/1600秒 プラス1.0露出補正 ISO200
開放F値は「焦点距離に対する口径の比」のことで、望遠レンズの前玉の大きさ(≒有効口径)は、ざっくり言うと「焦点距離÷開放F値」という単純な計算式で決まってしまう。つまり、同じ口径比では焦点距離が長くなればなるほど口径は大きくなってしまう。400mm F2.8だと単純計算で約14.3センチ+αもの前玉径が必要なのだ。
しかし同じ画角のマイクロフォーサーズ200mm F2.8であれば約7.1cm+αの前玉径で済む。一般に望遠レンズの前群には色収差を消すために凸レンズと凹レンズの組み合わせが入るが、特に凹レンズは外周ほどガラス量が多くブ厚くなるため、レンズ径が大きくなればなるほど、ハンパないほどに玉が重くなってくる。つまり斯様に前玉の小径化はレンズ全体の軽量化・重量バランスの最適化に大変効いてくるということ。その意味でマイクロフォーサーズのOMシステムは、望遠系のレンズに多大なメリットをもたらすのだ。
M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROの特徴と評価
テレ端200mmで最短撮影距離付近で撮影。合焦部はあくまでシャープ。その余韻をもってアウトフォーカス部へと流れる様子はとてもズームレンズとは思えないほどの滑らかさで、夢のような美しいボケへとつながる。
■200mm(400mm相当)1/2000秒 プラス0.3露出補正 ISO1600
画角変化を見るため、前のカットからそのまま50mmにズームバックした図。200mm時とは絵柄の印象はだいぶ異なってくる。本機は4倍ズームであり、フルサイズの大三元大口径望遠ズーム70-200㎜の3倍足らずのズームレンジよりも、実は使えるレンジはけっこう広い。
■50mm(100mm相当)1/2000秒 プラス0.3露出補正 ISO1600
本機はF2.8通しの大口径&高品位なPROシリーズの、しかも遮熱塗装まで奢られた「白」レンズだ。筆者は、本機を発売直後の11月とこの7月の二度にわたって試用しているが、やはりその評価は「すばらしい!」のひと言に尽きる。OMシステムの小型化のメリットを最大限に享受できるだけでなく、開放F値の明るさと、その焦点距離から得られるボケ味の美しさもあり、画角と描写のバランスが取れた、非常に使いやすく、さらに楽しく心地よいレンズだ。
スペックだけからは、「他社の大三元望遠ズームと同じじゃん?」という印象を受けるかもしれない。が、前述のとおり、画角は35mm判フルサイズの100-400mm相当になる。このサイズで、大口径「超」望遠ズームなのだ。2倍テレコンバーターを付けると800mm相当の開放F5.6となり、鳥屋さん御用達の巨大な「ハチゴロー」に伍するレンズにも化けるということ。
学童野球チームの練習中のスナップ。試合と異なり選手に近寄れる状況だったので、200mmでもこれだけのダイナミックな絵が撮れた。さすが大口径レンズだけに、背景(芝)がきれいにボケてくれた。
■200mm(400mm相当)1/5000秒 プラス0.3露出補正 ISO800芝の
テレコンバーターはマスターレンズの「アラ」をも拡大してしまうので、ちょっと厳しい性能のレンズに付けてしまうと途端に画質が落ちてしまうのだが、本機には「まだまだ余裕がある」ことが実感できる(注:ムックの「カメラマン」リターンズ#17の「激論」においては、「MC-20(2倍)では少し差が出る」と言っている論者もいるが…気になる方はぜひ誌面をお読みいただきたい)。筆者は本機にMC-20を装着した上に、カメラの2Xデジタルテレコンを併用して1600mm相当を手持ちでテレマクロ撮影したが、筆者的には「十分に使える画像」が得られたと断言しよう。
動物園のフライングケージ内での「シロトキ」のアップ。背景の木漏れ日の玉ボケが、口径食の影響で周辺部ほど歪んでいるが、程度は良好といえる。この程度であれば、本作例のように玉ボケを画面中心部に寄せたり、少し絞って形状を整えたりなどのテクニックでカバーが可能だ。
■200mm(400mm相当)1/200秒 ISO400
ルリシジミの一種を200mmの最短撮影距離付近で狙った。細かく解像している合焦部の鱗粉の描写が素晴らしい。このレンズは本当にテレマクロ撮影に向いていると思う。手ブレ補正機構の優秀性、AFの追従性、解像性能、その総合力が小さな生き物の一瞬の姿を微細に捉えてくれる。
■200mm(400mm相当)絞りF4 1/2500秒 プラス0.3露出補正 ISO0600
テレコンバーターMC-14(1.4倍)だと、75-280mm相当という、これもまた中々使いやすい焦点域のレンズに化ける。開放F値は一段暗いF4となるが、AFの追従性や画質劣化はほとんど感じられなかった。むしろ、画面の中心部を切り取る形になるため、画面周辺の口径食によるボケ形状の変形が緩和されて良くなるほどだ。これはぜひセットで買う価値があると思う。
実際、本機の描写は繊細でヌケもすばらしく良く、ボケ描写は非常に美しい。PROシリーズの誇る高い解像性能、俊敏なAFレスポンス、高い手ブレ補正効果とファインダー像の高い安定性、意外に軽く振り回せるサイズと重量、テレコンバーターが余裕で使える拡張性等々で、「こいつ使える…」と唸らせてくれた。
AFと手ブレ補正…本機のポテンシャルはカメラを超えている!?
ワイド側でボケ味が途端に荒れだす硬い描写のレンズもあるが、本機ではそのようなことはない。コントラスト性能も良く、ハイライトやシャドウ部の階調描写に余裕が感じられる。
■50mm(100mm相当) 1/4000秒 プラス0.3露出補正 ISO0600
筆者の常用カメラはOM-1 Mark Ⅱで、サブにE-M1Xも使うが、このレンズの写りの繊細さやAFのレスポンスに関しては、OM-1 Mark Ⅱの方が明らかに良かった。それだけ、このレンズのポテンシャルが高いからだ。
画質やAF性能だけでなく、手持ち撮影時の手ブレ補正効果最大7.0段(公式)も、カメラボディとの協調で得られる。OM-1 Mark ⅡとE-M1Xの間には5年の差、世代にして1.5~2世代ほどの実力差があるが、これまで筆者が使った中では、両ボディ間で目をみはるほどの差を正直感じないレンズも多い。しかし本機はそうではなかった。
明暗比の大きな被写体。カメラ出しのJPEG画像をそのまま掲載した。作品化する場合には印象を強めるため全体のコントラストやシャドウ部にフィニッシュを入れたくなる画像だが、素材画像としてはハイライト部、シャドウ部共に質感や階調がしっかりと現れており、コントラスト性能に優れたレンズであることがうかがえる。
■50mm(100mm相当) 1/800秒 ISO0600
そのワンランク上への向上の度合いと、前述したテレコンバーター使用時の余裕の描写性能から言えるのは、今後、OM-1 Mark Ⅱの後継機がさらに進化した場合でも、本機はその進化に見合ったレスポンスを叩き出してくれそうだ、ということだ。将来そのような超性能なボディが登場してくると、本機の限界性能も塗り替えられてゆくのかもしれない。
フルサイズのセットと比較すれば…大バーゲンプライスじゃね?
これは挑戦的なカット。テレ側いっぱいの200mm(換算400mm)に2倍テレコンバーターMC-20を装着し400mm(換算800mm)、さらにカメラ側のデジタルテレコンで2倍に拡大して800mm相当(換算1600mm)で手持ち撮影している。ピクセル等倍まで拡大するとさすがに甘さが目立つが、それでも数メートルも離れた昆虫の姿をこれほどに捉えることができるのは「凄い」のひと言。
■200mm+2倍テレコン+2倍デジタルズーム(1600mm相当) 絞りF2.8(合成F5.6) 1/160秒 マイナス0.3露出補正 ISO800
本機は実売価格40万円超えと高価で、多くのユーザーにとっておいそれと買える価格ではないことは確かだ。正直、筆者は本機のマイナスポイントというとそれぐらいしか思いつかない。しかし、本機においては先々もその価格に見合う価値はきっとあるはずだと筆者は確信させられた。
そして、本機に比べればOMシステムのカメラボディは「バーゲン価格」とも言えるので、他メーカーのフルサイズ機を使用している方々も、本機とテレコンバーターと併せて、マイクロフォーサーズのカメラボディも一台買い増しするのも「アリ」じゃない?…と思わされるほどの魅力を感じるレンズだ。
こちらもテレマクロ撮影。この時はテレコンバーターを持ち合わせていなかったため、カメラ側の2倍デジタルテレコン機能(デジタルズーム)を使用。吸蜜にきたクマバチだが、花に止まったかと思うとほぼ一瞬で飛び去ってしまった。体毛までリアルに写っている。
■200mm+2倍デジタルズーム(800mm相当) 絞りF2.8 1/1600秒 プラス0.3露出補正 ISO200