■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
フジフイルム「GFX100 Ⅱ」の主なスペック
●中判 43.8×32.9mm
●約1億2000万画素
●フジフイルム Gマウント
●ISO80~12800(※拡張ISO40/102400)
●約8コマ/秒(CH連写・メカシャッター)
●0.64型OLED EVF 約944万ドット
●3.2型 約236万ドット
●チルトアングル タッチパネル
●CFexpress TypeB/SSD/SDXC(UHS-Ⅱ対応)デュアル
■発売日:2023年9月28日
■実勢価格:127万500円(ボディ)
■大きさ:約152.4×117.4×98.6mm
■重さ:約1030g
フジフイルム「GFX100 Ⅱ」の使用感は? プロカメラマン豊田慶記氏がレビュー
強化された手ブレ補正に好感
44×33mmサイズのラージフォーマットセンサーを採用しつつも、ハンドリングそのものはフルサイズDSLR程度に収められたサイズ感で、実使用は思いのほか軽快。その印象を後押しするのが最高8.0段となったIBISや賢くなったAFとBISHAMON-TEXによる素晴らしい質感のグリップ。そして迅速なレスポンスなど、道具としての進歩だ。
実データでは塗膜の厚みみたいなものまで感じられて「はわぁ…」という感想。めっちゃ写る。レンズも素晴らしく良い。
■GF55mmF1.7 R WR 絞り優先AE(F2.0 1/600秒) ISO160 WB:オート ※フイルムシミュレーション:クラシックネガ
実際に体験して欲しいのだけど、本当にドキッとするほど良く写ります。立体感が独特なのとトーンの美しさは、GFXだけの特別な表現力だと思います。あと手ブレ補正が強力。IBISを持たない50Rじゃ1/40秒は無理なので。
■GF55mmF1.7 R WR 絞り優先AE(F4.5 1/40秒) ISO100 WB:オート ※フイルムシミュレーション:ACROS + Yフィルター
しかしGFX100Sと比べてどうか? と言われると、動悸や目眩がするほどの性能的な進歩はない。ただ、GFX100 Ⅱに触れた後に100Sを使うと世代の差以上にくたびれて感じてしまうのは楽しくないポイントだろう。100Sだって高価(実勢価格76万8900円 ※記事初公開時)なのだ。
比べちゃダメって分かってるのだけど、Xシリーズで同じ様に撮ると少しモヨっとします。GFXは細部までシャキッと写るし、やっぱりキレイだよねぇ…。
■GF55mmF1.7 R WR 絞り優先AE(F4.5 1/500秒) ISO160 WB:オート ※フイルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス
8K対応とAF性能。実際の使用感は?
カメラのAF性能は明らかに良くなったが、レンズによってはカメラのAF性能を活かしきれていない印象があることについては相変わらず。
手ブレ補正の効果も強力。50Rだとドキドキするシャッター速度でもヘッチャラ。ま、50S Ⅱとか100Sでも安心だけれども。100 Ⅱはグリップが上となる縦位置時に、左手をボディ側に添えると(LCDの3軸チルトの縦位置用の開きがちょうど良い感じになる持ち方ね)カメラ左肩の角が手のひらに刺さって痛いです。カメラが重いこともあって個人的にはかなりの萎えポイント。デザイン優先のシワ寄せかな? デザインのためのデザインみたいに感じられて、凄く気になりました。
■GF32-64mmF4.0 R LM WR 絞り優先AE(F4.0 1/180秒) ISO320 WB:オート ※フイルムシミュレーション:ProNeg.Std
8K記録対応がアピールされているが、実際に8K記録を選択すると35mm判よりも小さくクロップされてしまう。となると他の選択肢を選んだ方が合理的。GFXのイメージサークルをカバーするDCI 4KやCine 5.8K記録ではフイルムシミュレーションを活かしたGFXならではの、まるで写真が動き出したかのような特別な世界を表現できるだろう。
1億画素に「抜群にシャープ」みたいな期待をする人も居ると思いますが、実際にはヌルっとしたリアルな表現が特徴です。空気まで写し撮っているかのような不思議なリアリティはGFX100系だけのもの。
■GF55mmF1.7 R WR 絞り優先AE(F1.7 1/550秒) ISO160 WB:オート ※フイルムシミュレーション:REALA ACE
8K対応やAF性能についてのメーカーのアピールはドラスティックだが、実際には現場の要望を反映させ質実剛健な進歩を果たしたカメラ、というのがフェアな評価だろう。基本的にとても良いカメラだが、入手性が低いことはとても大きな減点となってしまう…。
ClassicクロームをETERNAブリーチバイパスっぽく見せる設定でパチリ。何撮っても「わぉ!」ってなるのがGFXの怖いところ。その「わぉ!」が第三者にも伝わると良いのだけれども、写真は難しいですね。
■GF32-64mmF4.0 R LM WR 絞り優先AE(F4.0 1/180秒) マイナス1.3露出補正 ISO400 WB:オート ※フイルムシミュレーション:Classicクローム
フジフイルム「GFX100 Ⅱ」の⚪︎と×
⚪︎
・道具としての質感が上がったこと
・レスポンスが良くなった
・申し分のない画質
・CFexpressTypeB対応
・強力なIBIS(手ブレ補正)
×
・売ってない...
・8Kはオマケ
Photo & Text:豊田慶記
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