OMデジタルソリューションズ社から、マイクロフォーサーズ用の大口径・超望遠ズームレンズ=M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO が発表された。35mm判の画角換算で100-400mm、そして開放F2.8通しという、とてつもないスペックの白レンズ。しかし、コンパクトかつ意外に軽く、取り回しやすく仕上がっている。2025年9月27日発売予定で想定売価は税込み46万円前後で受注生産とのこと。

■金城正道氏プロフィール
沖縄県出身。元レンズメーカー広報&元月カメ編集部員。現在は千葉県市川市在住の写真家、および「間違いだらけシリーズ」の論客として活躍。得意メーカーはOMDS、タムロン、フジとかその辺。

神レンズ=40-150mmF2.8 PROを超えちまった!?

フードを取り外したところ。フードにはフィルター操作窓がある。

記者発表時の第一印象は、F2.8通しの大口径&超望遠レンズ…の「超おも・超デカ」のイメージからは程遠い「コンパクトさ・軽さ」だ。重量バランスが良く、カメラを付けて持った時には見た目以上に軽く感じられる。そして、兄貴分と言える150-400mm F4.5と双璧を成す白レンズ…OMシステムのフラッグシップレンズにふさわしい品位の仕上げと手触りだ。

光学的なスペックからは「大三元の望遠ズームと一緒」とも言ってしまえるが、画角はフルサイズ用の半分だ。解像の許容度や手ブレ補正の難易度を鑑みるに、条件は大変に厳しいはず。それをクリアしている「100-400mm F2.8相当のレンズ」として見れば驚異的なサイズだ。

カメラに付けた際の前後の重量バランスが良く、軽く感じられる。

価格的にも、ここ数年来の世界的なインフレ基調と円安傾向を考えれば決して高価で法外な値段とは言えず、納得の行く妥当な値付けではないかと思う(お安くはないんだけどね)。改めて、望遠域でのマイクロフォーサーズのシステムの優位性を感じさせてくれる。

実際の操作性や描写については、レビュー用の機体が入手でき次第、この「Webカメラマン」上でレポートする予定だが、ここでは記者発表時のメーカーによるレクチャー、プレスレリース、展示用デモ機や開発者への質疑応答などから得られた情報で構成した第一報としてお伝えしたい。

フラッグシップそろい踏み。150-400mm F4.5よりもコンパクト。

1.4倍と2倍のテレコンバーターでの性能を保証しており、多彩に活用できる。

主な特徴

・レンズ単体で35mm判換算100-400mm相当の画角でF2.8通し、2倍テレコン使用時には200-800mm F5.6相当
・超望遠・大口径ズームにして、小型軽量・重量バランスの優れた取り回しやすさ
・PROシリーズならではの高解像性能
・遮熱塗装を施した白レンズ
・5軸シンクロ手ぶれ補正に対応し、補正効果は最大7.0段
・全長変化のないインナーズーム・インナーフォーカス式
・IP53対応の防塵・防滴、-10℃の耐低温設計
・蝶番式で扱いやすいアルカスイス対応の着脱式三脚座
・コンピューテーショナルフォトグラフィーの「深度合成撮影」に対応
・レンズフードには、円偏光や可変NDなど指で回転操作の必要なフィルターのための操作窓を設けている

各種操作スイッチはまとめられていて、操作性も良い。

光学的特徴

13群21枚、ED・スーパーED(低分散)、EDA(低分散非球面)HR・E-HR(高屈折率)などの特種ガラスをふんだんに使用し、PROシリーズにふさわしい高解像を達成しているという。特に絞りの直後に位置するレンズに、EDガラスに非常に大きい非球面形状をモールドした製造の難しいEDA(低分散非球面)レンズを採用し、効果的に球面収差補正を行っているという。また、全重量の約20%を占めるという大口径レンズの前玉群をできるだけ軽くし、前後の重量バランスを最適化しているという。

近接撮影にも特筆すべき能力を持ち、35mm判相当に換算するとマクロ倍率0.5(1:2)相当、2倍テレコンバーター使用時には等倍(1:1)相当の、マクロレンズ並みの像倍率が得られるとしている。

レンズコーティングには、新たに開発した「ZERO(Zuiko Extra low Reflection Optical)コーティングⅡ」を施し、逆光下でもクリアでヌケの良い描写が得られるとしている。前玉には汚れや水滴を弾くフッ素系のコーティングを施し、様々な環境でレンズ面をクリアに保つことができるとしている。

アルカスイス互換の三脚座。形状は、改良された100-400mm F5.0-6.3 Ⅱのと同等とのこと。

機構的特徴

カメラのボディー内手ブレ補正と協調して動作する5軸シンクロ手ブレ補正に対応し、望遠端200mm(35mm判換算で400mmの画角)で、世界最高レベル(2025年9月現在)の補正効果、最大7.0段を達成しているという。

フォーカシングのアクチュエーターにステッピングモーターを採用することで、高速かつ高精度なレスポンスを得ており、最大50コマ/秒のAF追従連写に対応しているという。

鏡筒外側は単なる白色塗装ではなく、高い効率で赤外線を反射する遮熱性の特殊塗装を施し、炎天下での鏡筒内部の温度上昇を抑える工夫がされているという。

記者発表の会場に展示されたカットモデル。いかに金属部を少なくし軽量化しているかよくわかる。非球面レンズの位置にも注目。

その他の特徴

・1.4倍と2倍のテレコンバーターに対応!!!
・縦・横の各カメラポジションのいずれの姿勢でも押しやすい配置とした4つのL-Fnボタン(割り当て可能な機能は1種類のみ)
・フォーカスリミットスイッチ、AF/MF切り替えスイッチ、プリセットフォーカス機能を装備
・指当たりが良く上質な操作感を実現するゴム製のズーム・フォーカスリング
・フード先端にゴム素材を採用し傷つきにくい配慮

低分散ガラスに非球面加工が施されたEDAレンズ。レンズ面に映る照明の形から高い強度の非球面形状がわかる。

M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO 主な仕様

●焦点距離:50-200mm
●35mm判換算:100-400mm
●開放F値:F2.8(最小絞り:F22)
●全長:225.8mm
●最大径:φ91.4mm
●重量:1075g(本体のみ・三脚座なし)・1250g(本体のみ・三脚座含む)※いずれもフード含まず
●手ぶれ補正性能:7.0段(200mm・5軸シンクロ手振れ補正時)
●絞り羽根枚数:9枚(円形絞り)
●最短撮影距離:0.78m(ズーム全域)
●最大撮影倍率:50mm時=0.08倍(35mm判換算で0.16倍相当)・200mm時=0.25倍(35mm判換算で0.5倍相当)
●最近接撮影範囲:50mm時=213.6×160.5mm・200mm時=69.1×51.9mm
●同梱品:フード、フロント・リヤキャップ、レンズケース
●発売予定日:2025年9月27日 ※受注生産
●価格:オープン価格・想定売価46万円前後(税込み)

精密に加工された金属製のカム筒。高い解像性能を支える最も重要なパーツ。